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M&A(譲渡)

業者に騙される前に知っておきたいM&A仲介のビジネスモデル

    M&A 仲介

    M&A仲介の人と話をすると、よく彼らのビジネスモデルを指して「仕入の商売」という言葉が出てきます。

    意味合いとしては、「M&A仲介ビジネスの成功要素は、如何に『ラクして売れる売り物』を見つけることができるかだ」ということです。

    極端な話、「優良な売り案件」さえ確保できれば、どんなに仲介能力が低くても稼ぐことは容易です。もちろん仕切り能力やマッチング能力が高いほうがよりよいですが、「仕入」の重要性に比べればそこまで重要な話ではないということです。

    この構造は中小企業M&A業界に身を置いていれば常識ですが、そうでない方には意外かもしれません。そこで今回は、仲介ビジネスが「仕入の商売」と呼ばれる理由と、その結果として彼らがどのような経営努力をしているかをご紹介しましょう。

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    M&A仲介のビジネスモデルが「仕入の商売」と呼ばれる理由

    まず、M&A仲介のビジネスモデルが、なぜ「仕入の商売」と呼ばれるほどに「仕入」偏重なのかをご説明しましょう。

    儲かっている優良企業には簡単に買い手が付く

    近年、他社を買収することは一定規模以上の会社にとって当たり前の選択肢であり、自社の成長のために多くの優良企業が同業者や周辺業種を買収しようとしています。

    ただし、同業者や周辺業種であれば何でも買いたいわけではありません。当然、買収投資を利益で回収でき、自社グループの発展に寄与する会社を買いたいのです。

    そのような会社は必ずしも多くないので、「売り」が発生したら多くの買い手企業が「ぜひ欲しい」と名乗りを上げます。あっという間に争奪戦が巻き起こり、トントン拍子で話が進んでいきます。

    多くの買い手企業が「ぜひ欲しい」と思っているのは、今儲かっている会社です。実績として儲かっている会社はしっかり利益を上げてくれる確率が高いので、安心して買えるからです。

    このように、儲かっている優良企業であれば、買い手探しに苦労することはありません。業界の大手数社にコンタクトするだけで、簡単に買い手候補は掴まります。

    一方、売れない会社は頑張ってもなかなか売れない

    優良企業に買い手が簡単に集まる一方で、全然儲かっておらず特筆すべき特徴もない会社の場合は、なかなか買い手は見つかりません。

    仲介業者の口八丁で買い手をその気にさせることができることもありますが、そんなマヌケな買い手が見つかることはレアケース。マトモな買い手はきちんと対象会社を分析してから買収判断をしますので、「商品」そのものに魅力がなければ、誰も買ってくれないのです。

    このように、売れるか否かを決める最重要要因は、当然ながら対象会社そのものです。

    ただし、最近は業者に騙されるマヌケな買い手として、サラリーマン個人が業者に狙われているようです。詳しくは「サラリーマン個人のM&Aなんて99%失敗すると思うシンプルな理由」をご覧ください。

    買い手がその気なら、仕切り能力がなくてもなんとかなる

    なお、M&Aプロセスを仕切ることも仲介業者の重要な仕事ですが、買い手の購買意欲が高ければ、仕切り能力は最悪なくても問題ありません。

    なぜなら、買い手は何度もM&Aを実施してきた熟練者です。買いたいという気持ちが強ければ、仲介業者の能力不足をフォローし、代わりに案件を仕切ってくれるからです。

    もっとも、完全な利害対立者である買い手に仕切られて、初心者である売り手が好条件でM&Aができるかといったら、それはあり得ないでしょう。ただ、仲介業者としてはM&Aが「成立」してくれればそれでいいので、何の問題もないということです。

    着手金や情報提供料、月額報酬を設定している仲介業者もありますが、その報酬の大半はM&A成立時に発生する「成功報酬」で構成されています。詳しくは「レーマン方式って何?M&A仲介アドバイザーの報酬手数料を徹底解説」をご覧ください。

    優良企業を「独占業務委託契約」で囲い込め!

    上述のように、M&Aが「成立するかしないか?」は、「その会社に魅力があるかどうか?」に大きく依存します。そのため、すぐに売れる優良企業を如何に囲い込むかが経営上重要な要素になります。

    この囲い込みの手段として、「独占業務委託契約(専任アドバイザリー契約)」を結ぶことになります。この契約で「独占」されるのは業者ではなく、売り手です。売り手は1社と独占契約を結んでしまうと、独占期間中は別のルートでM&Aをすることができません

    成功報酬で成り立っているM&A仲介ビジネスは、交渉が煮詰まってきた段階で他の安い業者に乗り換えられては商売にならないため、独占契約を結ぶこと自体は仕方のないことです。ただ、その独占期間が妙に長い場合、単なる囲い込み以外の何物でもないと考えたほうがいいでしょう。

    専任アドバイザリー契約の内容や功罪については「M&Aの専任アドバイザリー契約の功罪と契約解除に持ち込んだ3事例」にて解説しています。一方的に契約を解除した事例もご紹介しています。

    売り手が仲介を決めたら、買い手は従うしかない

    この独占契約の存在は、売り手だけではなく買い手も束縛します。

    つまり、独占契約が存在する限り、その仲介業者以外のルートで対象会社を買うことはできません。買い手に残された選択肢は、最初から「その業者と契約する」か「対象会社の買収を諦める」かの2つしかないのです。

    結局のところ、どんなに仲介業者の報酬、能力、誠実さに不満があったとしても、購買意欲が高い買い手は売り手が選んだ業者と契約するしかありません。これが、能力が低く不誠実な業者が儲かっているカラクリです。

    「仕入」を確保するM&A仲介業者の経営努力

    以上がM&A仲介のビジネスモデルが「仕入の商売」と呼ばれている理由ですが、では仲介業者はどのように「仕入」を行っているのでしょうか。

    すべての業者が同じことを考えているわけではないですが、彼らの標準的な志向と実際に行われている施策は、相談する側として必ず知っておきましょう。

    M&A仲介の基本戦略:下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる大作戦

    まず、M&A仲介のもっとも合理的・効率的な経営方針として、「とにかく売り案件を掻き集め、売れない場合はすぐ諦める」ということが挙げられます。

    まずは売り案件を掻き集める

    彼らは「儲かっている会社」と独占契約を結びたいのですが、実際にはそんなに大量に出回るものではなく、そればかり狙っては経営が成り立ちません。また、一部の「非常に儲かっている会社」だけが売れるわけではなく、「ぼちぼち儲かっている会社」や「儲かってないけどキラリと光る強みのある会社」もまた、売れる会社です。

    実際のところ、余程安定的に利益が出ている場合を除き、売れるか売れないかの判断は実際に市場に出してみないとわかりません。そこで、まずは大量の売り案件を囲い込み、最小限のコストで市場の反応を調べてみる(いわばテストマーケティング)ことが、成立件数を増やすうえでのポイントになります。

    市場の反応が良ければ本格的にコストをかける

    テストマーケティングの結果、買い手候補の反応が上々であれば、いよいよコストを使って全力で案件の「成立」を目指します。

    売り手さんに気を付けていただきたいのは、彼らが目指しているのはあくまでM&Aの「成立」であって、「成功」ではないということです。

    売り手にとってのM&Aの「成功」は、満足のいく相手に満足のいく価格で売れることであり、それが実現できないM&Aの「成立」は、二度と取り返しのつかない「失敗」です。「成立」を目指す仲介屋は売り手と買い手を口車に乗せてきますので、安易な譲歩は絶対にしないことです。

    M&Aの「成立」と「成功」の違いについては、「M&Aで一生後悔したくないなら追い求めるべき、たった2つの成功軸」をご覧ください。

    市場の反応が悪ければ、早々に諦める

    テストマーケティングの結果、よい反応が返ってくれば、仲介業者は本気を出してくれますが、それでは反応が芳しくない場合はどうなるでしょうか?

    仲介屋のビジネスモデル上、もっとも合理的な答えは、「もう放っておく」です。

    M&A仲介は努力するほど赤字になるビジネスです。独占契約期間が残り何年あろうと関係ありません。社内データベースの片隅に仕舞い込むだけで、売り手クライアントに対して戦略の練り直しを提案したり、別の角度で買い手を探すようなことはしません。努力すれば売れるケースもゼロではありませんが、多くは徒労に終わるので、何もしないのが一番です。

    なおこの状態になったとき、売り手が望めば契約解除に応じてくれることもありますが、少なくとも仲介屋から契約解除を提案することはほぼありません。確率は低いとはいえ、買いたいというニーズが舞い込む可能性はゼロではないので、コストさえ掛けなければ放ったらかしておくことが合理的です。

    もちろん、売り手クライアントに対しては放ったらかしているなどとは言わず、「探しています」とは答えます。ただ、スタートから半年以上経った案件は、実際にはもう何もしていません。

    実録!M&A仲介業者が本当にやっている「仕入の努力」

    下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる大作戦は、数撃てるだけの弾がないと成り立ちません。つまり、大量の売り案件を囲い込んでいく腕が求められます。

    具体的に、彼らがどのような「仕入の努力」を行っているか、その特徴的なものをご紹介しましょう。

    仕入の努力1.片っ端からコンタクト

    基本中の基本として、電話帳の上から順に電話したり、手書きのお手紙を書いたり、スーツを着て飛び込み挨拶に廻ったりします。

    こういうことは結構な学歴・職歴の人が真面目にやっています。まぁ証券会社出身の方も多いので、特に抵抗はないのかもしれません。

    仕入の努力2.「御社の売却額を無料でお見積り!」

    仲介業者の広告で非常に多いのが、この「いくらで売れるか教えてあげますよ!」というものです。

    M&A検討中はこういうサービスに関心があると思いますが、まず、マトモな予測なんて出てきません。テキトーに決めて回答しているだけです。

    ある会社では、見積りのために決算書を送ってもらっても、「この会社は売れないな」と思ったら返事もしてくれません。(余談ですが、一度諦められたら一切連絡が付かなくなる業者は結構います)

    売却額の見積りサービスについては、「M&Aでは無意味な『簡易企業価値算定』を仲介業者が行う3つの思惑」にてより詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

    仕入の努力3.事業承継の無料セミナー

    事業承継にお悩みの中小企業経営者向けに、「勉強会」を開いてあげるというサービスです。

    まぁ、実際には「事業承継」の話なんてほとんどしません。彼らが「勉強」してほしいことは「事業承継にはM&Aが最高だ」という偏った認識だけですから。

    参加すると、後で大量のダイレクトメールが届くのがネックですが、彼らの「胡散臭さ」を感じ取るには結構いい機会です。

    仕入の努力4.金融機関や顧問税理士への紹介手数料(バックマージン)

    中小企業経営者が事業承継やM&Aの検討をする際、よく相談相手に挙がるのが金融機関と顧問税理士です。聡明な仲介業者がここにワナを張っていないはずがありません。

    言うまでもなく、金融機関や税理士が仲介業者を紹介した場合、ウラで「紹介手数料」がキックバックされる仕組みになっています

    このようなバックマージンの問題点として、「相談を受けた金融機関や税理士が、ただ単に紹介手数料率が高いだけの無能な業者を紹介してしまう」という現実があります。この点には重々注意しましょう。私も税理士だから言いますが、M&A仲介業界のレベル低下の要因として、低モラルな税理士の存在は大きいと思います。

    M&Aの紹介手数料(バックマージン)について詳しくは、「オススメなんてカネ次第?!M&Aのウラで動く【紹介手数料】の話」をご覧ください。

    仕入の努力5.「嘘も方便」

    M&Aに関与していると、情報管理が厳しいため、嘘をつく機会は少なくありません。そのためM&A屋は「嘘も方便」という言葉が好きです。

    彼らが「仕入」の場面において、どのようにこの「方便」を使うかは、さすがにブログでの公開は控えたいと思います。詐欺まがいの方便を使って強引に契約を取り付ける仲介業者もいますので、要注意です(一応言っておきますが、小規模業者も大手業者も大差ありません)。

    結局M&Aの世界も、ヤマ師ペテン師が跋扈する世界です。不動産や生命保険、金融商品は法律で説明義務が厳格に規定されていますが、M&Aはそれすらありません。結局、リテラシーのない初心者が騙されますので、M&Aを検討される方は本当に気を付けていただきたいと思います。

    なお、騙されるのは、「騙されるかも」と慎重な人ではなく、「俺はきっと騙されない」と勝手に思い込んでいる人です。くれぐれも、油断なく。

    おわりに

    今回は、M&A仲介のビジネスモデルが「仕入の商売」と呼ばれる理由とその実態についてご説明しました。

    M&Aの「成立」は対象会社の現状によるところが大きいですが、「成功」には優秀なアドバイザーが欠かせません。くれぐれも、単にセールストークがうまいだけの業者に掴まらないよう、慎重に相手を見極めましょう。

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    事実、中小企業M&Aは初心者vs熟練者の構図になりやすく、情報弱者である売り手が一方的に損をしたり、業者に押し流されるように話が進んでいったりしがちです。


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