fbpx
M&A

M&A価格を高くする「のれん代」とは何か日本一わかりやすく解説!

のれん代をわかりやすく解説

「のれん」とか「のれん代」、あるいは「営業権」という言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、その内容についてきちんと説明できる人はほとんどいません。

多くの方が、真剣にM&Aを考えながら、のれん代というよくわからない概念に振り回されています。そして、必要以上に複雑に捉え、「よくわからないからプロに丸投げしよう」と諦めます。そんな状態でM&Aを「成立」させてしまい、大きな後悔を感じている人も少なくありません。

実は、M&Aという取引の本質を理解できると、「のれん代」はとてもシンプルな概念であることがわかります

そして、のれん代はなるべくシンプルに捉えることが正解であり、難しく考えるほど泥沼にはまっていくことになります

この記事では、

  • のれん代のどこよりもわかりやすい解説
  • のれんの「正体」についてのご紹介
  • (売り手向け)のれん代を高く評価させる3つのコツ
  • (買い手向け)のれん代の会計・税務の概略

を解説していきます。

第1章をご覧いただければ、「なんだ、のれん代ってコレのことか」と感じていただけますし、最後までご覧いただければ、あなたの会社ののれん代を最大化させてより高く売るコツがハッキリと掴めるでしょう。

M&A成功のコツがわかる本 M&A成功のコツがわかる本

図解!のれん代とは「事業が持つ無形財産の値段」のこと

のれん代について平たく表現すると、

M&A対象となる事業に対し、買い手が「高値を出してもいい」と思う理由となる、事業が持っている「無形の財産」の値段

のことです。

事業とは、土地や建物といった目に見える財産だけではなく、組織やノウハウ、物流商流などの「個別に金額を査定できないけど、確かにそこに存在する価値」を持っています。これらの無形の財産に対して、買い手が支払う値段こそ「のれん代」です。

たとえば、

  • 時価1億円の土地と時価1億円の建物

の価値は、2億円ということになります。しかし、

  • 時価1億円の土地と時価1億円の建物、プラスそこで運営されている、年間3億円の営業利益を上げる事業

であれば、たぶん2億円では買えません。年間3億円も利益を上げているのだから、もっと高額になるのが普通です(下図)。

のれん代の解説1

仮に、この事業が10億円で売れたとすれば、土地建物といった有形財産以外に8億円の値段が付いたことになります。この有形財産の価値を超えたM&A価格の分を「のれん代」といいます

のれん代の解説2

のれん代は差額で計算する

なお、のれん代は以下の計算式で示すとおり、差額で計算します。

のれん代 = M&A価格 - 有形財産の純資産(時価)

この計算式を図で表すと以下のとおりです。

のれん代の計算式

後述しますが、のれん代は理論の積み上げで決まるものではないので、結果から逆算した差額で算定することになります。

のれん代は「M&Aでしか入手できない財産への対価」

のれん代は、買い手が自力で入手することが困難だったり、時間がかかったりする財産に対する対価です。

一般的に、のれんの構成要素は、たとえば以下のようなものであると言われています。

  • ブランド、知名度、競争力、信用力
  • 技術、ノウハウ、人材、組織、企業文化、社風
  • 物流商流、取引先との関係
  • 市場シェア、売上規模、顧客リスト、特定市場の独占

これらは買い手企業が自力で1から作ろうとすると、非常に大変で時間もかかります。そのため、「自前で作り上げるより、買ってきた方が早いし確実」ということで、買い手はM&Aに多額のお金を投じることになるのです。

そのため、事業が持つ無形財産が、価値が高く得難いものであるほど、のれん代は高くなります。

のれん代は買い手の主観で決まる

なお、のれん代には合理的な計算式とか、相場といったものは存在しません。

「直近の営業利益の3年分」とか「DCF法などの手法で合理的な価値算定をする」といった説明がなされることがありますが、実際にはそのような値決めが行われているかというと、必ずしもそうとは限りません。事業の無形財産はとても複雑で曖昧ですので、計算式で評価されるようなものではないのです。

上述のとおり、のれんはM&A以外では入手しがたい無形財産ですので、買い手が「どうしても欲しい」「高値でも買う価値がある」と思えば、価格はどんどん上がっていきます。買い手経営者が買う価値があると思えば、どんな価格でも取引は成立します。

つまり、のれん代は買い手の主観で決まります。具体的には、以下のような印象を買い手が持てば、赤字事業であっても非常に高額で売れることがあります。

  • この会社のノウハウをうちの商流と併せれば、利益を倍増できるぞ!
  • 今は赤字でも当社主導で経営改善すれば数年で黒字転換可能だ!
  • この会社を傘下に入れれば、当社は一気に業界トップだ!
  • この事業の将来性は非常に有望。数年後にはビッグビジネスになるだろう!
  • こんな会社が売りに出る機会なんて滅多にない!今を逃すと後悔する!

赤字の横浜DeNAベイスターズに59億円ののれん代が付いた理由

たとえば、プロ野球の横浜DeNAベイスターズは、株式の66.92%を65億円で買収されています。のれん代は実に59億円でした。

買収前の横浜球団は毎年営業赤字を計上していたとのことですから、決算書だけ見れば59億円も値段が付くような会社ではありません。

ただし、決算書には現れない、以下のような買い手の主観的な意識が価格を引き上げたものと思われます。

  • プロ野球チームを持つという企業ステータス
  • 社名の入った野球チームが毎日ニュースになる宣伝効果
  • 自分たちが経営すれば黒字化できるという自信
  • たった12しかない球団が売りに出たという稀少性

これらはいずれも買い手であるDeNA社が主観的に判断したものです。結局のれん代に正解はなく、買い手がリスクを背負って値決めするものですから、このような理論に合わない価格も頻発するのがM&Aなのです。

のれん代を高くしたいなら行うべき売り手の3つのコツ

上述のとおり、のれん代はあくまで買い手の主観で値付けされるものですので、売り手の立ち回りや駆け引き次第で価格は大きく変わります。

もし高く売りたいと思われるなら、以下の3つのことを徹底して実施してください。

  • 自社を高く評価してくれる買い手に戦略的に売り込む
  • 買い手に「欲しくなるような情報」を与える
  • 買い手候補同士を競わせて「争奪戦」を巻き起こす

この3つで価格は確実に上がります。以下、理由も含めて解説していきましょう。

高く評価してくれる買い手に売らなければ意味がない

のれん代は買い手の主観で決まりますので、当然あなたの会社に感じる価値は、それぞれの買い手企業ごとに大きく異なります。

極端な例を挙げると、

  • 隣の県の同業者で、あなたの地域に進出したいと考えている会社
  • 飛行機を使わなければ行くこともできない地域の、全然関係ない事業を営む会社

のどちらが、あなたの会社を買収したいと思うでしょうか? 当然、後者に一生懸命売り込んでもほぼ間違いなく徒労に終わります。

高値で売りたければ、自社の強み・弱みを良く分析し、強みを欲しがり、弱みを気にしない買い手に売ることです。

ショートリストで戦略的に買い手に売り込もう

M&Aで買い手探しに用いられる「売り込み先リスト」のことを「ショートリスト」と言います。これは買収意欲の強い買い手に戦略的に売り込むための重要なマーケティングツールですので、しっかりと作り込みましょう。

具体的なショートリストの作り方や、強み・弱みの分析方法については、「適当に作ると大失敗!ショートリストの意味と正しい作り方5ステップ」という記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

具体的な情報がなければ、買い手は欲しいとは思わない

買い手は貴社のことなんてまったく知りません。前向きに検討させるためには、正確で具体的な情報を開示して「良い会社ですよ!」とアピールしていくことが不可欠です。曖昧な情報では買い手はかえって不安を感じます。

決算書を見せることは当然ですが、それだけでは全然足りません。貴社にどんな強みがあって、買えばどんなメリットがあるのかが腹の底から理解できなければ、買い手は買おうとは思わないものです。

具体的には、「インフォメーションメモランダム(企業概要書)」という冊子を作って、買い手に正確で具体的な情報を開示していきます。仲介会社やFAに作ってもらいましょう。

どのような情報を載せるべきかは、「買い手がどんな情報を求めているか?」によりますが、たとえば以下のような内容を開示していくことになります。

  • 会社の概要や沿革
  • ビジネスモデルと主な取引先
  • 会社の強みとその背景
  • 会社の弱み(何を改善すれば成長を加速できるか?)
  • 役員・社員の人員数や特徴、平均年齢
  • 決算書の情報とその分析

このような情報を整理して開示していくことで、買い手はM&Aを判断しやすくなり、買収金額も自然と上がっていきます。インフォメーションメモランダムについては「会社の値段に3倍差が付くインフォメーションメモランダムの記載内容」という記事で解説していますので、併せてご覧ください。

競争相手がいなければ、買い手は高値を出してくれない

買い手はぜひ「入札」で決めましょう。買い手同士を競わせない限り、良い価格は望めません。

買収意欲が高まった買い手は、割高であっても買いたいと思う一方で、買えるなら少しでも安く買いたいとも思っています。

そのため、1対1の交渉ではあの手この手で「買い叩き」を狙ってきます。中小企業M&Aは初心者である売り手と熟練者である買い手の交渉になりますので、売り手のほうが圧倒的に不利です(下図)。

中小企業M&Aは売り手が不利

このような売り手不利の状況で高値を引き出すためには、「入札」によって複数の買い手を競わせましょう(下図)。

入札であれば売り手は不利にならない

こうすることで、買い手は常に他の競合入札者を意識せざるを得なくなります。「入札負けして買えなくなることは避けたい」と思わせられれば、必ず全力投球の価格提示をしてくれます(下図)。

入札で生じる相互牽制

このような立ち回りによって「争奪戦」を引き起こすことができれば、マグロの初セリのように価格は自然と上がっていきます。M&Aの入札については「価格だけじゃない!M&Aを『入札』で進める3つのメリット」も併せてご覧ください。

複数の買い手候補が集まらない場合でも必ず他社は意識させよう

M&Aでは常に複数の買い手候補が見つかるとは限りません。一生懸命探しても1社しか興味を示さないという場合もあります。

この場合でも、買い手には常に他社を意識させましょう。

他社さんにもまだまだ声を掛けるつもりだけど、できれば早く売りたいから、御社が〇億円で買ってくれるなら他社への声掛けはストップしてもいいですよ。

など、ハッタリでもいいので「渋いことを言ってると他社に獲られてしまう!」という危機感を持たせましょう。

(買い手向け)のれん代の会計税務の6つの常識

最後に、主に買い手向けのご参考としてのれん代の会計・税務を解説します。

と言っても、のれん代の会計・税務は非常に奥深いので、あくまで買い手企業の方が知っておきたい最低限のトピックに絞ってご紹介しましょう。

会計・税務でポイントになるのは以下の6点です。

  • のれん代は連結決算において「のれん」という無形固定資産になる
  • 「のれんの償却」は会計基準によって扱いが異なっている
  • 投資回収できないと「のれんの減損」が発生する
  • のれんがマイナスになった場合は「負ののれん」として利益計上する
  • 個別決算上は滅多に登場しない
  • 税金計算上はM&Aスキームによって2パターンの処理がある

それぞれ見ていきましょう。

1.連結決算で「のれん」という無形固定資産になる

のれん代は、連結決算において「のれん」という無形固定資産勘定で表示されます。つまり、一旦は連結貸借対照表の資産となります。

のれんは無形固定資産に計上する

2.「のれんの償却」は会計基準によって扱いが異なる

連結貸借対照表に載っている「のれん」について、償却(≒減価償却のこと)するかどうかは、採用している会計基準によって異なります。日本の上場企業が選択できる4つの会計基準では、以下のようにルールが分かれています。

会計基準 償却要否
日本基準(J-GAAP)
修正国際基準(JMIS)
20年以下の「のれんの効果」が及ぶ期間で償却する(定額法その他合理的な方法による/販売費及び一般管理費)
国際会計基準(IFRS)
米国会計基準(US-GAAP)
償却しない
 
のれんは償却する
 

実際に20年償却は難しい

よく初めてのM&Aに挑まれる買い手の方から、「のれんは20年で償却すればいいんですよね?」と訊かれることがあるのですが、実際には上場会社で20年償却をしている会社は多くありません。

これは、監査法人から「買ってきたのれんの効果が20年も維持されるってあるの?」というツッコミが入り、色々交渉した結果、もっと短い期間が妥当だと結論付けられることが多いためです。

のれんの償却期間は連結全体の営業利益に大きなインパクトを与えることが多いので、上場会社の方はM&Aの値決め段階から監査法人とディスカッションしておきましょう。

3.十分な利益が出ないと「のれんの減損」となる

M&Aは常にうまく行くとは限りません。買収後に投資額を回収できるだけの利益が出ていないと判断されると、のれんを「減損」することになります。

減損とは、固定資産への投資額が回収できないと判断された際に、回収できない金額を損失計上する会計処理です(特別損失)。

減損処理の図解

のれんの減損については「のれんの減損とは?M&Aが巨額損失を起こす仕組みを基礎から図解!」という記事で詳しく解説していますが、かなり多額になりがちな上に目立ちますので、過去の経営者の責任が問われることもあります。

のれんの減損の記載例

4.のれん代がマイナスになると「負ののれん発生益」

以下のように、買収した有形資産の時価がM&A価格を下回った場合、「無形資産の値段はマイナスだった」と判断され、「負ののれん」と呼ばれます。

負ののれんの図解

負ののれんは、「理論的には本来発生するはずのない異常利益」と考えられており、M&Aがあった期の特別利益として一括利益計上されます。

負ののれんの記載例

理論と現実は違うから、負ののれんが発生する

負ののれんは理論上発生しないはずなので特別利益に計上されていますが、のれん代と同様にM&Aは主観で判断される部分が多いため、実際には発生することがあります。要するに、理論理屈は現実のビジネスをすべてカバーできているわけではないということです。

負ののれんが発生する具体的な理由については、「負ののれんとは何か?M&Aで異常利益が生まれる現実の3つの理由」という記事でご紹介しています。M&Aの本質を知る際に参考になる記事ですので、興味のある方はぜひご覧ください。

5.個別決算では、のれんは滅多に登場しない

のれんは連結決算で発生することの多い勘定科目です。個別決算では滅多に登場しません。

他社の株式を買収した場合、個別決算では買収額が「関係会社株式」という科目で処理され、減価償却されることもありません。

関係会社株式

ただし、買収した子会社との合併や、事業の譲受け(事業譲渡による買収)などをした場合には、例外的に個別決算でも登場することがあります。

個別決算上ののれん

6.税金計算上は2パターンの処理がある

上述のとおり、のれんは個別決算で登場することは稀なため、個別決算を土台とする税金計算にも基本的には登場しないものだと覚えていただいてもよいかと思います。

ただし、特定のスキームでM&Aをした場合に限り、税金計算上も「のれんのようなもの(税務上ののれん/資産調整勘定)」が発生します。具体的には下図のとおりです。

スキーム別の税務上ののれんの有無

各M&Aスキームの内容については「M&Aの種類・手法一覧!売買向きな4スキームのメリットデメリット」をご覧ください。

この税務上ののれんは、会計上ののれんをどのように償却計算しているかに関わらず、必ず5年で月割均等償却(≒定額法)で償却します。

「のれんの節税効果」はM&A価格を跳ね上げる

税務上ののれんが発生すると、かなり巨額な損金(税金計算上の費用)が買い手側にもたらされます。これで節税できる分だけ、より多くのお金をM&Aに投じることが可能になります。

このような「のれんの節税効果」によってM&A価格が1.3~1.5倍に跳ね上がることも珍しくありません。詳しくは「M&A価格が1.5倍にも!驚きの【のれんの節税効果】徹底解説」にて解説しています。少々難しい記事ですが、事業譲渡やタテの会社分割を行う場合は必ずご一読ください。

おわりに

今回は、のれん代の意味と内容の解説、そしてのれん代を最大化させる売り手のM&A戦略についてご紹介していきました。

のれん代はごくシンプルなものであり、シンプルに考えることこそがM&Aの成功につながります。決して難しく考えて自縄自縛に陥らないようにしましょう。

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


記事を読む

コメントを残す

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

事業承継M&Aが失敗する単純な理由とは
初めての売り手が直面するカベと2つの対策
M&Aが失敗する単純な理由
売り手がぶつかるカベと対策
事業承継M&Aのノウハウ
事業承継M&Aのノウハウ