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M&A(買収)

基本が大事!買い手が陥る買収M&Aの【2大失敗要因】と防止策5選

    M&Aの失敗要因と対策

    買収のM&Aを成功させるのは、決して簡単なことではありません。
    買い手にとって、M&Aは成立すればそれで成功ではなく、その後事業が見込んだとおり伸び、そして投資を上回る利益を出して初めて成功です。

    経営企画などの仕事に携わっている方であれば、「M&Aの成功率は3割程度」とか「M&Aの3分の2は失敗に終わる」という言葉を聞いたことがあるかと思います。大金をつぎ込んで、思い通りに行くのは3回に1回程度というのでは、M&Aは割に合わない投資案ではないかと思うでしょう。

    しかし、私は企業の内外から多くのM&Aを見ている中で、M&Aの失敗の多くはM&Aというものに対する無理解が引き起こすものであり、しっかりと基本を抑えておけばそう失敗するものではないという結論に至っています。

    実は、「失敗」とされたM&Aの大半は、たった2つの要因によるものです。そして、それはごく基本的なことでもあります。その2つとは、具体的には、

    • プライシングの失敗(高値づかみ)
    • PMIの失敗(買収後の混乱・停滞)

    です。

    つまり、上記2大失敗要因を如何に回避するかということが、買収M&A成功の近道となります。

    今回は、買い手にとってのM&Aの2大失敗要因の内容・原因と、それを防ぐ対応策についてご説明していきましょう。

    偶然にも、売り手にとってのM&Aの失敗も、その大半が2つの要因によるものです。詳しくは「事例頻発!売り手が陥るM&Aの【2大失敗要因】と5つの防止策」にて解説しています。

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    買い手の2大M&A失敗要因の内容と原因

    前述のとおり、買い手にとっての2大M&A失敗要因とは、以下の2つです。

    • プライシングの失敗(高値づかみ)
    • PMIの失敗(買収後の混乱・停滞)

    具体的に内容と原因を確認していきましょう。

    失敗要因1.「プライシングの失敗」とその原因

    まずは「プライシングの失敗」、つまり「高値づかみ」について確認しましょう。

    「プライシングの失敗」の具体例

    プライシングとは、値決めのこと。つまり、本来の投資価値を超えて、高い価格で買収してしまったという失敗です。

    プライシングに失敗すると、オーガニックグロース(自力成長)とは桁違いの損失が発生します。最悪、買い手企業そのものの経営が傾くこともあります。
    また、上場会社であれば「のれんの減損」という問題が発生し、株価の下落や役員の責任問題に発展しかねません。

    「プライシングの失敗」の発生原因

    では、なぜ多くの買い手企業がプライシングに失敗してしまうのでしょうか? その原因は以下のようなものです。

    発生原因1.M&A戦略が曖昧

    M&A戦略とは、「どのような特徴を持つ会社をいくらまでの価格で買収するか」といった大方針のことです。

    このM&A戦略が曖昧で、「とりあえず良い会社があれば適正価格で買いたい!」という発想しかないのであれば、M&Aは100%失敗します。そもそもM&Aアドバイザーから良い案件を紹介してもらうことすら困難です。

    M&A戦略が曖昧だと、「とりあえず落札できる価格」しか入札のしようがなく、しっかりシナジー効果を織り込んでくる競合他社に比べて、根拠薄弱な高値を出してしまうことになります。それでは投資回収もままならないのは当たり前です。

    発生原因2.M&Aの自己目的化

    社内にM&A担当者がいる場合、M&Aを成立させないと仕事で成果を出した気にならないため、なんとなく無理にでもM&Aを成立させる方法に動きがちです。そのM&A案件が経営トップ肝いりのディールである場合はなおさらです。

    また、M&Aは買い手にとっても相当なエネルギーと費用を費やすものであるため、明確な目的がないと、だんだんM&Aを成立させることそのものが目的になってしまいます。

    さらにM&Aアドバイザーは最初から成立を目指していますので、自己意識をしっかり持っておかないと自然とその方向に進んでしまいます。

    このように買うことが自己目的化してしまうと、その後の本当の目的である投資回収・事業発展といった目的が薄れてしまい、本来エネルギーを費やすべき価格交渉が甘くなってしまいます。

    発生原因3.買収後の損益見込の甘さ

    M&A価格は、「今後、シナジー効果も含めてどの程度の利益を上げていくか?」という、買い手の主観的な見積りによって値決めされます。当然、甘い損益見込みを立ててしまうと、それだけ高値づかみのリスクが高まります。

    上述のM&Aの自己目的化が発生していると、いろいろと都合の良い前提条件を考え出して、バラ色の事業計画を立ててしまいがちです。買収後に現場責任者が「誰だよ、こんな無茶な計画作ったの」と白けることも多く、そのようなM&Aはたいてい失敗します。

    発生原因4.デューデリジェンス不足

    上記のような、「M&Aの自己目的化」や「損益見込の甘さ」が生じたとき、その目を覚ますのがデューデリジェンスの役割です。しかし、デューデリジェンスを単なる「法令順守確認」「会計処理チェック」程度の業務だと思っていると、事態を修正するどころか悪化させます。

    デューデリジェンスは、本来それまでに買い手が期待していた買収の前提が、その期待通りであることを確認し、期待通りではなければ修正するという手続です。これはM&Aの最重要プロセスと言っても過言ではなく、デューデリジェンスで手を抜けばM&Aは失敗します。

    デューデリジェンスを行わないケースは論外ですが、弁護士や公認会計士に丸投げして報告を聞くだけ、という姿勢でも、M&Aはほぼ例外なく失敗します。

    発生原因5.企業価値評価(バリュエーション)を過信する

    なお、たまに公認会計士に依頼した企業価値評価(バリュエーション)の結果をそのまま受け入れて入札をする会社がありますが、間違いなく失敗する原因となっています。

    企業価値評価は「理論上適正な価格」を算定するものであり、いくらで買えばよいか教えてくれるものではありません。仮に適正な価格で買ったところで、貴社がそれを回収できなければ、それは高値づかみに過ぎません

    「適正な価格で買えばそれだけで儲かる」と思っているのであれば、そもそもM&Aというものを誤解しています。

    失敗要因2.「PMIの失敗」とその原因

    次に、買い手の2大失敗要因のもう1つである「PMIの失敗」について理解していきましょう。

    PMIの失敗の具体例

    PMIとは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、企業買収後にM&A対象会社が円滑にグループ企業として合流するための取り組みのことです。「企業統合プロセス」と言い換えてもいいかもしれません。

    M&A対象会社は、買収が完了すればすぐに企業グループの一員となって、シナジー効果も含めた期待通りの業績をあげてくれるわけではありません。そのような状況を作るためには、買い手企業が主体的に行動して、PMIに取り組む必要があります。

    PMIに失敗してしまうと、業績向上どころか以下のような問題を発生させます。

    例1.プロパー社員・従業員の大量退職

    自分の勤めている会社が突然他社に買収されると、社員・従業員には大きな動揺が走ります。慣れ親しんだ社内慣行を突然捨て、新親会社のルールに合わせなければならないため、そのストレスも無視できません。何より、自分の雇用や将来に対して、強烈な不安感を覚えます。

    このようなプロパー社員さんの気持ちを軽視してPMIを進めた挙句、大量退職を招いてしまうケースは後を絶ちません。

    例2.取引先との関係悪化

    突然のM&A発表で動揺するのは社内だけではありません。取引先にもかなりの驚きをもたらします。

    得意先、仕入先、大家さんなどの外部取引先は、今後の取引が継続されるのか、新しい親会社は信用できる会社なのかなど、多くの不安と不信を抱えます。ここで対応を間違えてしまうと、望まないタイミングでの取引停止や取引条件の悪化、さらには買い手企業グループ全体の信用問題に発展します。

    例3.買い手企業側での混乱

    M&Aで大騒ぎになるのは、M&A対象会社だけではありません。買い手企業側でも、限られた人員をPMI作業に引き抜かれるため、大きな負担になります。

    M&Aプロセスはどうしても、本当の現場感を知らない少数のメンバーで秘密裏に進められますので、買い手企業内でも寝耳に水という人が少なくありません。その結果、M&A検討メンバーが決めていた事業計画の無理が露呈し、現場担当者のモチベーションが下がるという現象もよく見られます。

    「PMIの失敗」の発生原因

    では、このようなPMIの失敗はなぜ起きてしまうのでしょうか。その原因について、以下で確認していきましょう。

    発生原因1.PMIの準備不足

    上述した社内外の関係者の動揺は、M&Aの事実を公表した瞬間から発生します。したがって、それまでに彼らの動揺や不安感を抑える施策を打たなければいけません。

    つまり、M&Aが公表されてからPMIを始めたのでは、遅すぎます。M&Aのクロージング日まで遠慮してM&A対象会社に行かない買い手企業もありますが、わずか数日の待機時間によってPMIのハードルは数段階上がります。

    発生原因2.デューデリジェンス不足

    上記のようなPMIの遅れを防止し、PMIの初動を迅速に実施するためには、M&A公表前=M&A最終契約の締結前から対象会社の実態を熟知し、PMIにおける課題を抽出している必要があります。

    では、いつそれをやるか。それはデューデリジェンスのタイミングに他なりません。

    デューデリジェンスは、PMIの事前準備という意味合いもあります。M&A対象会社の組織や人員、取引先関係などを調査し、「自社のグループ会社となったときに問題になることは何か?」「最初に手を打つべきことは何か?」を把握しておくべきです。

    すなわち、形式的なデューデリジェンスしかしていない場合は初動に時間がかかり、PMIの難易度をいたずらに引き上げる結果に終わります。

    発生原因3.PMIチームの人員不足

    PMIが始まると、各部署から担当者を選出し、組織としてスムーズにPMIができるよう、PMIプロジェクトチームを発足することになります。また、数人は現場に派遣され、対象会社とPMIチームの連絡役として動きます。

    このPMIチームに選出された人員の能力は、そのままPMIの成否に直結します。各部署エース級の人員が出せればいいのですが、人手不足の昨今、どこかで妥協する必要もあるでしょう。しかし、妥協すればするほど、PMIの失敗リスクが高まっていきます。

    発生原因4.社内の巻き込み不足

    PMIは、PMIチームが中心となって成功に向けて進んでいきますが、PMIチームに参加していない人も含めた全社レベルの協力が不可欠です。PMIは時に、ごく小規模なM&A対象会社のために大組織が一丸となって動く必要があり、どう全社レベルの意識を喚起するかが課題となります。

    一番最悪なのが、現場に派遣された担当者が孤立することです。現場担当者は板挟みの孤独な闘いを強いられます。PMIチームや全社が協力を惜しまない姿勢を出さなければ、彼らまで一緒に退職してしまうというミイラ取り現象となってしまいます。

    2大失敗要因を回避するための対応策

    では、上記のような失敗を回避するために、買い手企業はどのように対応すべきでしょうか。以下で具体的な対応策をご紹介します。

    対応策1.M&A戦略とプライシング基準を明確にする

    M&A戦略を明確にすることは、M&Aで企業を成長させるための第一歩です。

    また、M&A戦略に合わせて、「このような会社が売りに出たら、のれんは想定営業利益の3倍を上限にする」「このような特徴がある場合は5倍まで許容する」といったプライシング基準を明確にしておきましょう。これによって、買えなくなる会社はあるでしょうが、無制限に支出が膨らんで回収不能になるのであれば、買えないほうがずっとマシです。

    一般にどのようなプライシング基準が採用されているか気になる方は、「DCFなんて嘘?M&Aの入札で買主が本当に使う3つの株式値決め法」を参考にしてみてください。

    なお、こういった「M&A戦略」や「プライシング基準」は中長期的な経営判断そのものであり、経営トップ以外には決めることができません。トップマネジメントの責務としてぜひご決断いただきたいと思います。

    対応策2.本質的なデューデリジェンスを徹底する

    M&Aに失敗しない最大の対策は、デューデリジェンスをしっかりと行うことです。デューデリジェンスによってM&A価格を回収できるかをより精緻に確認できますし、PMIを行う上で重点となる課題も見えてきます。

    このときのデューデリジェンスは、表面的なものでは意味がありません。社外の専門家に丸投げして、社内人員は誰も現場に行っていない場合は早急に改めるべきです。自社を熟知した社員が現場に足を運び、自らインタビューをしないと、自社と対象会社の相違点を抽出することができません。

    また、法務や財務のデューデリジェンスを委託する外部専門家は、M&Aや経営というものをきちんと理解している人でなければ務まりません。単なる顧問弁護士や顧問税理士では、表面的な問題点は見つけても本質的な部分に気付いてくれません。

    M&Aを成功させるためのデューデリジェンスの方法については、「買収M&A成功のカナメ!デューデリジェンスのタスク5選とコツ7選」で詳しく解説しています。

    対応策3.M&A公表前から秘密裏にPMIの準備を行う

    M&Aにおいて秘密保持は鉄則ですが、M&Aプロセスの進展に従って徐々に検討メンバーを増やしていき、デューデリジェンスのころには現場実務と組織全体を熟知した部長級の検討チームにしておきましょう。

    その上で、各部署の知見を持ち寄り、M&A発表後速やかに指導するPMIチームの体制や大まかなPMIスケジュールを決めておきます。

    PMIの本番はM&A公表後ですが、公表前にどこまで段取りを整えられるかによって、成功率は大幅に変わります。

    対応策4.可能な限り充実したPMIチームを作る

    PMIチームには、各部署可能な限り、実務を熟知し、リーダー、サブリーダーとなるエース級の人材を揃えたいところです。

    さらに現場派遣チームは、最低でも、ビジネスの現場全般を統括するビジネスサイドの担当者と、人事や経理などの管理部門全般を統括するコーポレートサイドの担当者が必要です。なかなか難しいかもしれませんが、できればその上に、役員か執行役員を社長として半常駐させたいところです。

    PMI成功の最大のカギとなる現場担当者には、幅広い知識や調整能力などかなりの能力が求められますが、一番重要なのはやる気です。自分は期待されているから派遣されたんだと思ってもらえるよう、全社ベースで盛り立ててあげましょう。

    対応策5.経営トップがPMI重視を打ち出す

    このようなPMIの全社的雰囲気を作る方法として、経営トップがM&Aの意義を語り、M&A対象会社が円滑にグループの一員になれるよう全社が協力することを呼びかけることが有効です。

    とにかく、M&Aはほとんどの買い手企業社員にとっても寝耳に水であり、特に命令が飛んでこない限りは動いてくれないものと思いましょう。全社が自律的に協力してくれる雰囲気を作るのは、トップマネジメントの重要な責務です。

    もしこれをご覧のあなたがPMIの担当者で、なかなかトップがお膳立てしてくれないと感じているのであれば、可能な限り役職の高い人に、全社に協力を呼びかけるよう頼んでみましょう。それだけで、PMIは劇的に前に進んでくれます。

    M&Aは基本が大事!

    今回は、買い手にとってのM&Aの2大失敗要因である「プライシングの失敗」と「PMIの失敗」について、その内容と原因、失敗を回避するための対応策についてご説明しました。

    一読してみて、「これは当たり前のことだな」と感じたかもしれません。そのとおりで、M&Aはときどき難しい概念が登場するものの、全体を見渡せば当たり前のことの連続です。

    M&Aの3分の2は失敗と言いますが、他社を買えるほど大きく成長した会社がそんなに失敗するはずがありません。結局、M&Aという慣れないイベントに戸惑い、基本を忘れているだけです。

    M&Aは決して簡単ではありませんが、当たり前のことを愚直に徹底することで、成功にぐっと近づくことができるのです。

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