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M&A(譲渡)

M&A価格の単純な決まり方と価格目安を見積るたった1つの方法

M&A価格目安を見積もる方法

「うちの会社を売ったらいくらぐらいになるんだろう」と思う中小企業オーナーさんはかなり多いと思います。実際そのような質問はほとんど必ず訊かれますし、金額次第でM&Aをするか否かを決めたいという気持ちもよくわかります。

ただ、残念ながら、決算書を穴が開くほど読んでみても、あるいは腕のいい公認会計士に算定を依頼しても、本当の株価の目安なんてわかりません。なぜなら、M&Aの価格というものは、買い手の主観で決まるものだからです。現実のM&Aの世界に「適正価格」という概念は存在しません。

それがどういう意味なのか、また、それならどうやって価格の目安を掴めばいいのか、今回はそんなお話をしましょう。これを読んでおけば、少なくともいい加減な業者の算定に騙されることはなくなりますし、精度と限界を知ったうえで価格目安を活用することができるでしょう。

参考にならない「理論上正しい株価算定手法」

会社や事業の価値を算定する方法を企業価値評価といい、以下の3つの方法が代表的です。

  • マーケットアプローチ(株価倍率法)
  • インカムアプローチ(DCF法)
  • コストアプローチ(修正簿価純資産法)

これらは、理論理屈の上では、確かに「適正な株価」を出す方法として適しています。しかし、上記3つの方法の算定結果には倍近い差が出るのが普通ですし、実際のM&Aの現場で、これらの金額規模でM&Aが成立することは決して多くありません。

理論上正しい株価算定手法は、確かに理論上は正しいので、スクイーズアウト(少数株主からの強制買い上げ)やグループ内の組織再編で用いられるものです。しかし理由は後述しますが、中小企業M&Aの実際の現場では「適正価値」なんて机上の空論であり、まったく通用しない方法であると考えるべきでしょう。

たとえばDCF法のロジックは、確かに「理論上適正」ではありますが、単純化された仮説の上に仮説を重ねて出来ているものであり、値決めには到底使えるシロモノではありません。DCF法についてじっくりと知りたい方は「完全版!DCF法の計算手順や欠点を基礎の基礎からわかりやすく図解」をご覧ください。

簡便な方法もすべて「嘘」

ネット上では、もう少し簡便な方法で価格目安を測る手段が見つかります。

  • 純資産の額+営業利益の3年分
  • 経常利益の5年分

などです。

後述のとおり、このような値決めルールを採用している買い手企業はかなり多いです。しかし残念ながら、これも本気にするとかなり大ハズレになるリスクが大です。

たとえば、同じ純資産額、同じ営業利益のA社とB社があったとします。A社はこれから業界全体が伸びる成長産業、B社は代替製品の登場により先行きが不安視されている斜陽産業だった場合、果たして同じ価格が付くでしょうか?現実には、何倍、何十倍も価格差が生まれるはずです。

私も関与した中小企業M&A案件を上記のような計算式に当てはめてみましたが、実際には多くのケースで「大ハズレ」と言える差が生じています。そしてほとんどの場合、実際の成立価格のほうが遥かに大きくなります。

単純な計算式が当てはまることは確かにありますが、それを普遍的なものにしようとするのはあまりに乱暴です。これは、M&A価格が決まる仕組みを知っていれば、当然のことだと納得できるでしょう。

M&Aで価格が決まる仕組み

では、なぜ「理論上適正な株価算定」やその簡易バージョンが通用しないのでしょうか。それは、M&Aで価格が決まる仕組みを知っていれば自明のことです。

買い手は安く、売り手は高くM&Aしたい

当たり前ですが、買い手は少しでも安く買いたいですし、売り手は少しでも高く売りたいと思っています。その判断に、「理論上適正な株価」が入り込む余地はありません

法外な値段であろうが何だろうが、両者が合意すればM&Aは成立するのです。

M&A価格は両者が妥協できる範囲内で決まる

M&A価格は、売り手と買い手が合意できる範囲内で決まります。これを超えた価格帯でM&Aが成立してしまうことは、どちらかがその場の勢いで不合理な選択をしてしまわない限り、起こりません(下図)。

M&A価格の決まり方

上記のようなケースで、公認会計士の大先生が「いやいやこの会社の適正価値は3億円ですよ」と言ったところで、何の意味があるのでしょうか?売り手が4億円以上じゃなきゃ売らないと考えており、買い手は5億円以下なら買う価値があると考えているのだから、3億円で売買が成立することは、本来絶対にありません

もっとも、実際のM&Aの現場では、売り手オーナーがその場の勢いで、後に後悔するほど安い価格で売ってしまうことがよくあります。詳しくは「事例頻発!売り手が陥るM&Aの【2大失敗要因】と4つの防止策」を読んでいただき、同じミスをしないように気を付けましょう。

買い手の相場観は主観で決まる

そして、非常に重要なことは、買い手はいくらまでなら出せるかという判断を主観で行っていることです。

主観で、といっても、その場の勢いで適当な金額を言っているわけではありません。実際には、「将来稼ぐであろう営業利益の〇年分を『のれん』の額にしよう」とか、「営業利益+減価償却費の〇年分を事業の価値と考えよう」など、回収期間計算をベースにした独自の社内基準を設けています。

これら多くの会社が採用している社内の値決め基準については、「DCFなんて嘘?M&Aの入札で買主が本当に使う3つの株式値決め法」で詳しく紹介しています。

では、売り手がこれらの方法をなぞっていけば、買い手の算出する買収上限額を推定できるかと言うと、そんな簡単な話ではありません。

売り手が買収額を推定できない理由1.細かい運用は各社バラバラ

まず、上記のような広く使われている計算ロジック運用にはかなりの部分で主観が入ります。

たとえば、「のれん代は年間利益の〇年分まで」という計算式でM&A価格を決めている買い手企業は多いですが、この「年間利益」が営業利益なのか税引後利益なのかや、何年分の利益を乗せるのかといった、運用の肝になる部分については、会社ごとにまるでバラバラです

たとえば年数は、買い手にリスクを背負う強い覚悟や自信があれば長い期間になりますし、それが弱ければ短い期間になる、ただそれだけのことです。

このような運用における細かい温度差は、まさに買い手企業の経営者のリスク判断になりますので、当然各社バラバラです。投資は自己責任なのだから、画一的なリスク判断なんてあるはずがありません。

売り手が買収額を推定できない理由2.買い手は過去ではなく将来を見ている

さらに、「年間利益」は「M&A後(将来)に買い手の運用で挙げられるであろう利益」になります。M&Aは事業の過去ではなく将来を売買するものですから、これは当然のことです。

つまり年買法において、買い手が「我々が経営すれば利益を倍にできる」と思えば、のれん(営業権)価値は2倍になります

買い手は将来の業績を見てM&A価格を決める

このように、M&A価格には「買い手の将来に対する期待」という極めて主観的な判断が織り込まれるのです。

以下の文章は少々難解ですが、買い手企業のM&A担当者必読と言われる有名な書籍から引用します。

株式の価格と株式の価値は異なります。株式の価格は、いわば個々の取引当事者が株式価値の投影された株式(揺れ動く写像)に対して抱く主観的評価であって、異なる評価基準を持った取引当事者が出会い、合意する特定の株式の交換価値です。こうした交換価値は、取引当事者の組み合わせや取引時期等によって異なるものであり、一義的には決まらないからこそ、取引市場が成立するのです。

四方藤治『企業プロフェッショナルのためのM&Aの技術』より。下線は筆者

M&A価格は主観で決めるのが正しい

ここで、「ちゃんとした会社は主観なんていう曖昧なものではなく、もっと客観的な事実から積み上げて価格を決めているのではないか?」と思う方もいらっしゃるかと思います。しかし、中小企業M&Aの買い手が入札で決まることを踏まえると、決してそうではないことに気付くはずです。

「客観的な適正価値」は買い手企業とのシナジー効果を考慮しないため、建前上は誰が計算しても同じ結果が出ます。したがって、適正価値で入札額を決めてしまうと、みんな同じような水準の入札になる一方、主観的に(高値づかみのリスクを背負って)シナジー効果を織り込んできた買い手候補だけが高値入札を行い、落札していきます。つまり「適正価値」を信じて入札した買い手候補は永遠に買うことができず、「正直者がバカを見る」という結果に終わるだけです。

さらに、適正価値であっても、M&A後に買い手が買収額を回収できなければ何の意味もありません。中小企業M&Aは株主と経営者の同時交代という、対象会社にとって天地がひっくり返る出来事であり、適正価値計算の前提である事業の現状維持も簡単ではないのです。

M&Aの値決めは、決して科学的・客観的な学術評価ではなく、あくまで経営判断です。よって、中小企業M&Aにおいて客観的な適正価値はほとんど意味がなく、買い手候補各社が自己責任で、リスクを背負って何らかの主観を織り込んだ入札額を提示するのが正しいあり方なのです。

「稀少価値」がM&A価格を跳ね上げる

もう一点、中小企業M&Aの価格を左右する重要な要素が「稀少価値」です。

M&A対象会社は究極の1点ものであり、他社に買収されたら永遠に買収できなくなってしまいます。小売業なら立地、製造業なら技術や特許、消費財ならブランドなど、他社がお金をかけても真似できない財産を持っている会社なら、たとえ赤字であってもとんでもない価格が付くことがあります。

この稀少価値にどこまでお金を出すかという判断も、買い手の主観がすべてを左右するものです。

買い手が行う評価を外部から予測することは不可能

以上のように、M&A価格は完全に買い手の主観によって決まるものであり、その心は買い手企業内部にしかわかりません。複数の買い手候補を集めて価格を競わせるオークション入札型M&Aを実施する限り、M&A価格を見積もることは本来不可能なのです。

これは、誤差の範囲というレベルの話ではありません。たとえば小売業のM&Aでは、買い手企業との仕入を共通化するだけで、粗利率が数%変わることも珍しくありません。それは営業利益を2倍にする効果を生むことがあり、これによって買い手が出せる上限額が2倍になることもあるのです。

世界に1点しかない芸術品を競売するのと同じように、買い手が主観的に高く評価すれば適正な評価価値を大きく上回りますし、評価しなければ大きく下回ります。直近で利益が出ていても売れないこともあれば、赤字でも高値が付くこともあります。M&A価格目安を見積るのは、神のみぞ知る未来を夢想する以上の意味はありません。

買い手が期待しているシナジー効果の内容がある程度想定できれば、売り手は買い手のバイヤーズバリュー(引用者註:会社を手に入れることで買い手が得る経済価値で、入札の上限とされる)を推測することが可能です。対象会社の事業内容を買い手よりも詳細に知る立場にあり、業界の事情にも精通しているため、場合によっては買い手よりも現実的な数字を算出することができるかもしれません。

とはいえM&A取引後、グループ経営の主導権を握るのは買い手ですから、買い手の経営方針によっては、買い手が本音で考えているシナジー効果について売り手は全く予想できないこともあります。

売り手が交渉上最も知りたい「買い手が想定するバイヤーズバリュー」については、実際のところ売り手にはよくわからないのです。

アビームM&Aコンサルティング『高値づかみをしないM&A』より

理論上適正な株価を信用すると、売り手は大幅に損をする

なお、上述のように買い手は将来の期待感(シナジー効果)や希少価値を織り込んで入札に挑みますので、通常は「理論上適正な株価」よりも高い金額が提示されます。

しかし、買い手としても安く買えればそれに越したことはありません。売り手が高い価格目線を持っていないのであれば、わざわざ高い価格を出す必要はなくなります。

このように、売り手が「理論上適正な株価」を過信してしまうと、結局は自ら「在庫処分セール」を行っているような結果に終わります

「簡易企業価値算定」を無料で実施してくれるM&Aアドバイザーは多いですが、それは営業サービスであると同時に、売り手オーナーの価格目線を下げることでM&Aの成立確率を引き上げたいという思惑もあります。詳しくは「M&Aでは無意味な『簡易企業価値算定』を仲介業者が行う3つの思惑」にて解説しています。

M&Aで本当に使える唯一の「価格目安」の見積り方

では、「理論上適正な株価」が意味をなさないとしたら、どうやって価格の目安を見積ればいいのでしょうか。

元も子もないことを言ってしまうと、そんな方法はないです。なぜなら、高い価格を付けてくれる会社に出会えるか出会えないかで、価格は何倍も変わってくるからです。また、業種ごとに相場の付き方がまるで違いすぎて、全業種一律の目安把握方法を開発するのは不可能です。

しかし、そんなことを言っても始まりません。以下では、M&Aの検討段階で、弊社が最良と考える価格目安・相場観の見積り方をご紹介しましょう。

M&A相場は業種によるところが大きい

上述のとおり、M&Aの価格相場は業種によるところが非常に大きいです。

たとえば不動産賃貸業の場合、企業の売上高や利益はほとんど考慮されず、持っている資産の価値が最大の価格形成ファクターになります。
一方、調剤薬局の場合、1店舗1店舗の売上、応需処方箋の枚数や診療科、病院との位置関係が調べられ、店舗ごとの価値が査定されます。そこに人材の充足状況(薬剤師は長年人手不足状態です)を加味して相場観が形成されます。

このように、M&A価格の相場形成は業種次第でバラバラで、全業種一律の相場把握は絶対にできないと断言できます。

なお、この場合の業種というのはかなり細かいものです。たとえば同じ「小売業」でも、ドラッグストアと地場スーパーでは価格の付き方がまるで違います。幅広い生活用品の安値仕入が求められるドラッグストアと、生鮮食品の目利きや鮮度管理が求められるスーパーが、同じ評価軸で評価されるはずがないからです。

その道のプロに訊くのが最善の策

では、初期段階でM&A価格の目安を付けたい場合はどうすればいいでしょうか。

それは結局のところ、その業種のM&Aの近況を良く知る人に訊くというのが最善の方法です。むしろ、それ以外にはないでしょう。

M&Aアドバイザーをはじめとして、その業種のM&Aをウォッチしている人はいます。そのような人を探し、直近でどの程度の規模の会社がどの程度の価格で売られたかを訊き出すことができれば、ようやく信憑性の高い価格目安が手に入ります。

逆に言えば、その業種のM&A事例をあまり知らない人が出した価格相場はすべて不完全なものと考えたほうがいいでしょう。

プロは勘で価格を感じる

私も特定業種のM&Aにどっぷり浸かっていたことがあるのですが、ある程度の経験を積むと、会社の価格相場というものがなんとなくわかってきます。また、「この会社は他の会社とは別格の稀少性があるぞ」ということも強く感じることがあります。

このような直感は、あくまで感覚的なもので、言わば勘です。しかし、DCF法などの「理論上適正な株価」に比べて、はるかに精緻で正確なものです

このような経験豊富なM&Aアドバイザー等から情報を集め、戦略を練り上げていきましょう。

プロに訊くときに明確にすべき前提

なお、プロに価格相場を訊くときは、必ず「税効果抜きの事業価値」を訊きましょう。そうしないと、「自分が尋ねたのは何の価格だったのか」が後でわからなくなってしまいます。

事業価値とは、会社が営んでいる純粋な事業の価格です。実際には、そこに事業と関係のない財産や借金の額を増減させて株式の価値を算定します。詳しくは「企業価値、事業価値、株式価値・・・M&Aを巡る様々な価値の違い」をご参照ください。

また、「税効果抜き」とは、将来の税金の増減を価格に織り込まないということです。実際のM&Aでは、税効果がM&A価格を大きく変化させてしまうことがありますが、そこまで考え出すと価格目安を特定できないので、一旦考慮外にするためです。

税効果会計については「M&Aの価格交渉で知らなきゃ大損する繰延税金資産の基礎知識」でご紹介しています。

M&Aアドバイザーから情報を集めるときの注意点

M&Aの価格相場の情報は、M&A市場にベッタリと貼り付くM&Aアドバイザーに訊いてみるのが一番です。

ただし、M&A検討の初期段階で、無闇にM&Aアドバイザーと接触するのは高リスクです。以下の点に注意して情報を得ていきましょう。

注意点1.複数のM&Aアドバイザーから情報を得る

情報を得るのは1社だけではいけません。意見を訊いたアドバイザーが、その業種のM&Aのことをまったく理解していないにもかかわらず、適当なことを言っているだけかもしれません。

必ず複数のアドバイザーの意見を訊き、誰が一番説得力があるかを考えましょう。説得力を測る方法については後述します。

注意点2.多数のM&Aアドバイザーに直接会わない

M&Aアドバイザーに7社も8社も一度に会うと、情報流出のリスクが取り返しがつかないほど高まります。(詳しくは「多数のM&Aアドバイザーに会うことの2つのリスクと対処法」をご覧ください)

M&A価格の目安を形成するという意味では、やや精度は落ちるものの、代理人を立てて匿名で情報を集めることをおすすめします。

注意点3.M&Aアドバイザーが「盛る」ことを知っておく

M&Aアドバイザーは、コンタクトしてきたオーナーさんにはぜひとも売る気になってもらい、M&Aを任せてほしいと考えています。そのため、結構盛った価格を言ってきます

つまり、M&Aアドバイザーが「10億円から20億円」という相場観を出してきた場合、実際には20億円は高すぎると考えましょう。

かといって、M&Aアドバイザーの本音が下限の10億円かというと、そうでもありません。売り手オーナーが10億円未満では売らないという気持ちになってしまったら、何が何でも10億円以上の買い手を探さなければならないため、M&Aアドバイザーとしてもそんなリスクは取れません。
経験上、大手M&Aアドバイザーが10億円~20億円と提示した場合、12~13億円ぐらいが彼らの本音です。

M&Aアドバイザーはそういう商売ですので、アドバイザー選びは慎重に行いましょう。詳しくは「時代遅れの業者に騙されない初めてのM&A仲介アドバイザーの選び方」をご覧ください。

M&Aアドバイザーの価格目安の信憑性を確認する方法

いくらプロだと言っても、彼らが言う価格目安を鵜呑みにするのは考えものです。そもそも本当の意味でプロと呼べるM&Aアドバイザー自体が多くはないため、集めた意見をしっかりと吟味する必要があります。

M&Aアドバイザーの価格目安の信憑性を判断するためには、「なぜその価格だと判断したのか」の理由を訊いてみましょう。いくら勘とはいえ、ちゃんとした理由があるはずです。

煙に巻くような理由は論外

上述のとおり、理論上適正な株価は、実際の中小企業M&Aの場では役に立ちません。価格目安の根拠として、DCF(キャッシュフロー割引法)がどうのこうのと小難しいことを言い始めたら、それは単なる素人だと思いましょう(実際、話を聞いていると「あ-この人DCFを理解してないな」と思うアドバイザーは山ほどいます)。

上場会社の経営者でも、小難しいファイナンス理論はよくわかりません。売り手も買い手も良くわからない話でM&A取引が進むわけがないのです。そんな神話を信じているなんちゃってアドバイザーの意見は無視したほうが賢明です。

その事業に長年携わっている経営者として、「ふむ、納得感のある決め方だな」と感じなければ、それはマユツバの話と思うべきです。

業種ごとの価格決定要因を訊こう

「この業種でM&Aが行われる際に、M&A価格に強い影響を与える要因は何か」を尋ねましょう。

それは、ある業種では立地、ある業種では従業員数、ある業種では独自技術と、業種ごとに様々です。もちろん、売上高や営業利益といった要素が価格決定要因になることもありますが、M&Aが活発な業種ほど、決算書以外の要素が大きな影響を与えます。

売り手オーナーさんは、その業種においてはプロ中のプロですから、M&Aアドバイザーの回答がトンチンカンに思うこともあるでしょう。いくら勘とはいえ、あまりにいい加減な理屈のM&Aアドバイザーは相手にしないほうがよいでしょう。

おわりに

今回は、M&Aにおける価格目安の見積り方についてご説明しました。

まとめると、

  • 理論上適正な株価は役に立たない
  • M&A価格を正確に予測することは不可能
  • すべての業種一律に適用できる価格目安は存在しない
  • 複数の経験豊富なM&Aアドバイザーの意見を訊くべき

というポイントになります。

M&Aの価格を見積もるのはそれほど難しく、曖昧なところはどうしても残りますが、これが現実です。M&Aには常に大きな不確実性が付きまとうのだということを理解して、M&Aをすべきか否かを熟慮しましょう。

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


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