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M&A(譲渡)

M&A相手を選択するために確認したい事業計画の9つの重要ポイント

M&Aの事業計画の確認ポイント

中小企業で一般的なM&Aプロセスでは、入札とトップ面談が終わると、短期間で「誰に売るか?」を一本化する必要があります。

この選択はM&Aの根本であり、これを決めるためにM&Aプロセスを進めてきたようなものです。最終契約締結までは取り消すことは可能ではありますが、その際の労力は通常の何倍にもなりますので、可能な限り一発で決断できるようにしましょう。

さて、その「後継者選び」の中心的な判断要素は以下の3点です。

  • 価格
  • M&A後の事業計画
  • 買い手企業の相性や信頼感

価格は言うまでもないですが、特に重要になるのが「M&A後の事業計画」です。弊社ではたびたび「未来図」とも読んでいるこの経営方針は、買い手企業の方向性や本気度を推し量る最良のバロメーターと言えます。

では、それほど重要なM&A後の事業計画は、どのように比較・分析していくべきでしょうか。今回は後悔しない買い手選びのために必ず確認すべき比較の視点を9つご紹介します。

M&A後の事業計画の吟味が重要になる理由

まず、なぜ買い手候補の事業計画を吟味することが重要になるかを確認しましょう。

買い手候補の事業計画の吟味はM&A成功の重要なカギであり、その目的は確実に心に刻んでおく必要があります。下記を読んでピンとこない場合は、「M&Aマッチングの近年の本質的変化と最高の後継者に会う3つのコツ」を読み返してみましょう。

理由1.売り手の「願望」との整合性がわかる

中小企業M&Aでは、売り手はお金だけではなく、従業員の雇用維持や事業の発展などの総合的な「願望」を抱いています。お金以外の願望は買い手企業の経営方針がその方向性にある場合のみ実現できますので、買い手の事業計画と売り手の願望の整合性は、M&Aの成功に不可欠の要素です。

したがって、買い手候補の事業計画をよく理解し、同じ方向を向いている相手であるかを確認する必要があるのです。

理由2.買い手候補の本気度がわかる

事業計画は、買い手候補のM&Aに対する本気度を知るうえで非常に重要です。

ご存じのとおり、事業計画の策定は相当に時間と手間を使う作業です。実際、事業計画を教えてほしいと依頼しても、見るからに短時間で作られたスカスカな計画を出す相手と、手の込んだ計画を出す相手に分かれるでしょう。手の込んだ計画を出す相手が必ずしも良いわけではありませんが、M&Aに対する意気込みは感じることができます。

ただし、入札時点では完璧な事業計画は出てこない点にはご注意ください。入札前はどうしてもコアな情報を開示しきれないため、買い手候補としても保留事項を完全に消しきることはできません。このような保留事項は、デューデリジェンスを通じて確認・調査し、事業計画の完成度を高めていくことになります。

理由3.計画の実現可能性がわかる

これは特に異業種の買い手候補に多いのですが、見るからに絵に描いた餅のようなシナジー効果を描いていて、その事業を熟知した売り手オーナーとしては首を傾げたくなるような事業計画が提出されることがあります。

M&Aは時に驚くような化学反応を起こしますし、目指さなければその実現はありませんので、このような事業計画は決して悪いわけではありません。しかし、売り手の願望が実現がその絵に描いた餅の上に成り立っているとしたら、それは割り引いて考える必要があるでしょう。

実現が容易でないシナジー効果には、バックアッププランが用意されているかをしっかり確認しておきましょう。

理由4.デューデリジェンス後の修正が予想できる

実務的な理由として、買い手が織り込んでいない問題点を理解しておくことによって、デューデリジェンス後の買い手の減額要求が予想できるという点が挙げられます。

上述のとおり、入札時点ではすべての情報を開示することはできませんので、たとえば「もし残業代が適正に支給されていた場合」などの仮定を置いた計画が提示されます。この仮定は買い手候補ごとにバラバラなことが多いので、一律に同じ目線で比較するためには、デューデリジェンス後の修正を見越した事業計画の予想が必要になります。

事業計画を吟味するときに確認したい9つのポイント

では、事業計画を吟味するときはどのようなポイントに確認すべきでしょうか。具体的には売り手がM&Aに望む内容によっても変わりますが、共通して以下のような点は確実に確認したいところです。

ポイント1.売上高の増減とその根拠

売上高が増加する計画なのか、減少する計画なのかは明確にしてもらい、その理由をはっきりさせましょう。

減少する計画が提出された場合、一部事業の廃止を織り込んでいる場合もあれば、単に安全を見て控えめな計画を作っている場合もあります。これは伸びる計画を作っている場合も同様で、理由を訊かなければわからないところです。

ポイント2.利益の増減とその根拠

売上と同様に、利益の増減も確認します。

M&Aで一番堅実に成果を出しやすいのがコストダウンです。M&Aがうまい会社であれば、仕入の共通化やオペレーションの工夫などによって、簡単に利益を引き上げることができます。

ただしこれも、他の買収案件でたまたまうまくいった経験をそのまま当てはめているだけで、今回のM&A対象会社に適用できるかはわからない場合があります。

ポイント3.人件費の増減とその根拠

人件費を減らすつもりなのか、それとも増やすつもりなのかは、M&Aの買い手企業によって方針がまるで変わるところです。

また、増減の理由として、人数を増減させるのか、それとも給与水準を増減させるのかといった違いがあります。特に残業代絡みで給与水準が上がることも少なくありません。

なお、リストラを考えている買い手候補の場合、それを正直に言わない可能性があります。その場合は利益が大幅に減るか、どこかで辻褄を合わせなければならず、いずれにしても無理が生じますので、注意深く見ていけば見抜けるでしょう。

ポイント4.従業員の処遇

人件費の増減にも近いものがありますが、従業員をどう扱うかは常に注意したいポイントです。

特に留意したいのが、経理など本部社員の処遇です。M&Aで買収された会社の本部機能は縮小することが多く、派遣社員を中心とした人員整理、現場への配置転換、親会社本部への移籍など、様々な扱いが考えられます。

この点はセンシティブな問題であり、買い手候補も入札前段階では現場を見ていないため確定的な回答はできないのですが、どのような方針であるかだけでも確認したいところです。

ポイント5.M&A後の役員人事

中小企業のM&Aでは社長が交代となることが圧倒的に多数です。中小企業において社長は会社の主軸であり、後任人事は極めて重要なポイントです。

そのため、後任社長が誰になるのかはぜひ確認したいところです。親会社の社長や役員が兼任する場合もありますが、そのケースでは担当者やチームが社長代理として派遣されますので、どのような人物を派遣する予定なのかも確認しましょう。

なお、M&A後に親会社から派遣されるチームは「進駐軍」と呼ばれ、売り手や対象会社としてはいい気分がしないかもしれません。しかし、M&A直後は売り手・買い手・対象会社が力を合わせて混乱を抑え込むことに全力を挙げるべきであり、大人数の進駐軍のほうがむしろ歓迎すべきだと考えています。

ポイント6.組織文化の融合有無と拒絶反応のリスク

組織文化が変わるということについて、直接損益と直結しないものも含めてできるだけ確認していきましょう。

これは要するに「御社に売ったら何が変わるのか?」という質問であり、買い手が当たり前に考えていた組織文化が強制されることで、意外な反応が起こることがあります。

これにより、買い手が想像していなかった拒絶反応が、現場から発生することも少なくありません。たとえば、これまで自由だった髪の毛の色が、突然茶髪禁止になったら、現場スタッフ(特にアルバイト)から不満が出ることは当然考えなければいけません。同様の問題は喫煙やどこまでの備品が自腹かなど、ちょっとしたことで起こることです。

これを明らかにするポイントとしては、自社の組織文化で少し独特なものがないかを確認することと、買い手候補の情報収集(Ex.転職口コミサイト)によって組織文化の違いを見極め、この点をどう扱うかをトップ面談で質問することです。

ポイント7.追加投資の内容と金額

M&A後に事業を発展させるためには、固定資産やシステムなどの追加投資は欠かせません。買い手候補がどのような追加投資を考えているのかを確認し、本気度を確かめましょう。

なお、入札段階ではすべての追加投資が見えているわけではなく、デューデリジェンスで問題点を洗い出す中でリストアップされていきます。そのため、入札時点で確定的な追加投資の内容と、その他追加投資に充てられる予算規模を確認しておきましょう。

ポイント8.ブランドや会社名、法人格の継続可否

M&Aによってブランド名や会社名が変更になることは少なくありません。ここにこだわりを持つのであれば、入札時点で方針を確認しておく必要があります。

また、M&A後に合併で法人格が消滅することも少なくありません。こちらもこだわりを持っているのであれば、法人格の継続可否を確認しておきましょう。

ポイント9.バックアッププランの有無と内容

上記のような事業計画を描いていたとしても、それによって買収額が回収できるほどの利益が生まれなければ意味がありません。買い手としては、もし想定通りの利益が出なかった場合、事業計画を変更して利益を出さなければならなくなります。

シナジー効果を目指す以上、たとえそれが実現困難なものであっても、事業計画には織り込まれます。しかし、実現できるかはわかりません。実現できなかった場合のバックアッププランを確認しておかなければ、「当初とは話が違う」という事業運営がなされることになりかねません。

したがって、バックアッププランの有無とその内容を確認し、多少のつまづきでは自分が重視する事業計画のポイントは揺るがないということを確認しておきましょう。

おわりに

今回は、M&Aの買い手候補を一本化する際に、買い手の事業計画で確認したいポイントを9つご紹介しました。

M&Aの買い手選びは容易に後戻りできない一世一代の大決断です。後悔のないよう、多面的に買い手候補を吟味していきましょう。

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


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