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M&A(譲渡)

M&Aで一生後悔したくないなら追い求めるべき、たった2つの成功軸

M&Aの成功とは

M&Aはたった1つの事業を売る、たった1度のチャンスです。何が何でも絶対に成功させなければなりません。失敗は一生の後悔に直結します。

私は数多くのM&Aに成功した売り手や、M&Aを期に成長した会社を見てきました。
しかしその一方で、M&Aによって取り返しのつかない深い後悔をしている元経営者や、M&Aによってガタガタになってしまった会社も嫌になるほど見ています。実際M&Aが嫌いになって、関係する仕事を避けていた時期すらあります。

実は、M&Aで後悔している元オーナーで、M&Aを選択したこと自体を後悔している方は意外と少数派です。むしろ、M&Aの結果やそこに至るまでのプロセスに後悔されている方が多く、「あのときもっと良く考えていれば」「あのときもう1つの選択をしていれば」という後悔が大きな要因になっています。

もしあなたが「M&Aの成功とは、売買が成立すること」と考えているのであれば、上記の元オーナーは将来のご自分の姿だと覚悟してください。あなたが本当に目指さなければならないのは、常に売買の成立の先にある未来図です。

私が数多くの中小企業M&A事例に関与してわかったことは、売り手オーナーが本当に追い求めなければならない成功軸はたった2つの成功軸しかないということです。それに集中して全力で愚直に追い求めることが、M&Aを大成功に導く唯一の道であると断言できます。

今回はその2つの成功軸をご説明します。本記事を読めば、決して間違った方向に走り出すことはないでしょう。

まずは、「M&Aの失敗」を理解しよう

成功は失敗の反対です。成功を考えるために、まずはM&Aの失敗について考えてみましょう。

「売れなかった」は失敗か?

M&Aの失敗というと、「売ろうと思って買い手を探したけど、見つからなかった」という状況を思い浮かべる方もいるでしょう。「M&Aプロセスが進んでいたけど、最終交渉で条件が合わず破談になった」ということも考えられます。

これらは時間を空費してしまったり、会社の機密情報を他社に渡してしまったという点では、確かに失敗かもしれません。でも、あなたにとって大事な会社はまだ手元にあります。また売るタイミングが来るかもしれませんし、少なくとも引き続き事業を経営できます。

「売れなかった」は失敗かもしれませんが、失敗のレベルとしては必ずしも高いものではありません。

M&Aの本当の失敗とは

M&Aの本当の失敗は、むしろM&Aが成立してしまったときに起こります。

たとえば、あなたが5億円以下では売りたくないと思っていたのにも関わらず、買い手やM&A仲介会社に何だかんだと言いくるめられ、売値が2億円になってしまったとしましょう。あなたがそれで納得すればいいですが、後々後悔するようならM&Aは失敗したことになります。

また、残される社員・従業員の雇用維持が重要なM&Aの条件と考えていて、それを約束してくれる買い手を選んだつもりだったとしましょう。ところがM&A成立の1年後に突然全員転勤が命じられ、ほとんど自己都合で退職してしまったら、それは売り手オーナーが何十億円もらっていようが、M&Aの失敗です。

これらの失敗は、M&Aが成立してしまったら取り返しがつきません。2億円で契約書に押印すれば2億円しか受け取れないですし、M&A後は対象会社の経営に口を出すことはできません。

つまり、後戻りできない状況になってしまってから後悔が生まれるなら、それが本当のM&Aの失敗です。M&Aの「成立」と「成功」はまったく別物なのです。

M&Aの成功も失敗も自分次第

M&Aの失敗の基準が「後悔」ですから、M&Aの成功や失敗は、売り手本人の心の中にあります。

2億円で満足できる人もいますし、社員・従業員が退職に追い込まれても気にしない人も中にはいます。すべては売り手オーナー本人がどう考えるかであって、それは十人十色の価値観です。

重要なことは、自分の本心に真摯に耳を傾け、自分がM&Aで実現したいことは何かを考えることです。中途半端な妥協は後悔を生みます。本当に自分の求めるものを求めるのが、人生でたった1度のM&Aというものです。

M&A成功の2つの軸

では、M&Aの成功とは何でしょうか。失敗が「後悔」ですから、「満足」こそがM&Aの成功です。

そこで、売り手がM&Aでどのようなときに満足するかというと、以下の2点に集約されます。

  • 期待通りまたはそれ以上の財産を得たとき
  • 後継者の事業運営が納得できるものであるとき

以下ではその内容について説明しましょう。

成功の軸1.期待通りまたはそれ以上の財産を得たとき

M&Aは経営権の売買ですから、財産は当然に重要な成功要因です。

M&Aで得られる財産を広く捉えると、「お金」「株式」、それと例外的に「役職」などがありますが、中小企業M&Aの場合はお金以外の対価になることは珍しいので、お金を意識しておきましょう。

通常はM&Aをすると役員も引退ということになりますので、老後資金としてのお金は非常に重要です。

成功の軸2.後継者の事業運営が納得できるものであるとき

前述の「事実上のリストラの有無」や「従業員が活き活きと働けること」、「M&A後の事業発展」「ブランド名の維持」などは、後継者である買い手が主体となって実現するものです。なぜなら、M&Aの成立後は買い手による事業計画に基づいて経営がなされるからです。つまり、雇用維持や事業発展など、お金以外の成功軸は、それを実現してくれる後継者を選べるかどうかという点に集約できます

自社の組織文化を尊重してくれて、従業員の面倒もしっかり見てくれ、そしてシナジーによって事業発展を実現し、さらにオーナーが個人的にも気に入る経営者に売ることができれば、何も言うことはないでしょう。

「財産」と「後継者」の関係性

本当の意味でのM&Aの成功は、「財産」と「後継者」が満足のいく水準であることが不可欠です。つまり、以下のようなマトリックス図になります。

M&A成功のマトリックス

もちろん、「どうなれば満足か」というモノサシは人によって異なります。「財産」の要求水準が低く「後継者」の要求水準が高い人もいれば、その逆もいます。

2つのM&A成功軸を達成するポイント

2つのM&A成功軸は、それぞれ成功へのポイントが若干異なります。

「財産」の成功軸の達成ポイント

まずは「財産」の成功軸を達成するためのポイントを確認していきましょう。「財産」の成功軸には、主に以下の2つの要素があります。

  1. M&A価格
  2. 税金を含む諸費用

他にも若干ありますが、この2要素が圧倒的に重要なので、それぞれ内容を確認していきましょう。

財産面の成功要素1.M&A価格

最初の成功要素は、M&A価格です。「売買の対価」ということになります。

M&A価格は基本的には利益相反

M&A価格の特徴は、売り手の成功と買い手の成功が相反する要素になりうるということです。つまり、売り手にとっての成功が、そのまま買い手にとっての失敗に直結することがあります。

売り手は1円でも高く売りたいですし、買い手は1円でも安く買いたいと考えています。ここから双方が納得できる「落としどころ」を見つけなければなりません。

この際に注意すべきことは、売り手はM&Aの初心者であることに対して、買い手は熟練者であるということです。生半可な知識で交渉に臨んだり、仲介アドバイザーに丸投げしてたりすると、本来よりも大幅に安値で買い叩かれ、M&Aの失敗に至るリスクが高まります。

対象会社の価値を高く評価させれば、買い手の要求は弱まっていく

買い手からの値下げ要求は、買い手が対象会社の価値を過小に評価すると強くなり、高く評価してくれれば弱くなります。

M&A価格面での成功を掴むために売り手としてすべきことは、買い手が対象会社を高く評価してくれるよう誘導することです。もちろん、M&Aではデューデリジェンスという徹底した調査が行われるため、過大評価させることはできません。しかし、過小評価を正す努力は労を惜しまずにしていきましょう。会社の磨き上げM&Aスキームの選択を通じて、会社の価値そのものを引き上げていく努力も必要です。

財産面の成功要素2.税金を含む諸費用

M&Aで得られる財産は、収入から諸費用を差し引いた手残り分です。そのため、諸費用を抑えることも重要な財産面の成功要素となります。

諸費用は主に以下の2つです。

  • 税金
  • M&Aアドバイザー報酬(仲介手数料)

M&Aスキーム次第で税金は大きく変わりますし、M&A仲介会社ごとにアドバイザー報酬は大幅に異なりますので、この点も意識してM&Aを進めていく必要があります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

【図解】株式売却M&Aで税額が半分にも?!個人株主の3つの節税策
レーマン方式って何?M&Aアドバイザー・仲介会社の報酬の仕組み

これらは売り手・買い手双方の利益が相反しない費用です。つまり、安くなればなるほどお互いにとってメリットがあります。

買い手に請求される仲介報酬が増えればその分売り手に支払えるM&A対価の予算が減りますので、売り手が負担する報酬は実質的に2倍であることにも注意したいところです。
ただし、M&Aに関するアドバイザーや専門家は、報酬の多寡で決めるのではなく、その能力で決めるべきである点は誤解のないようにしましょう。安物買いの銭失いは必ず後悔します。

「後継者」の成功軸の達成ポイント

次に、M&Aが成功だったと心から思える「後継者」選びのポイントをご説明します。

自分がM&Aで実現したいお金以外のこと(雇用維持や事業展開など)を実現するには、買い手候補に「M&A後にどのような事業運営をしたいと思っているのか?」を尋ねることがもっとも確実です。つまり、買い手候補にそれぞれが考える対象会社の「未来図」を考えさせ、一番自分の意に沿う未来図を持ってきた買い手候補を選べばよいのです。

これを実現するためには、以下の3点が特に重要なポイントになります。

  1. 自分がどのような未来を望んでいるかを正確に伝える
  2. M&A対象会社の情報を適切に開示する
  3. 各社の「未来図」が本当に実現されるかを見極める

それぞれ具体的に説明しましょう。

後継者面の成功ポイント1.自分の希望の通知

後継者にM&A対象会社をどのように運営してほしいか、自分が評価する未来図のポイントを最初に提示します。

買い手候補が対象会社を本気で買収したいと考えているなら、その実現可能性を真剣に検討し、可能な限り応えようと努力してくれます。そして誠実な買い手であれば、できない場合は素直にできないと答えてくれるでしょう。その分、価格などで譲歩してくれるかもしれません。

いずれにせよ、「未来図の採点基準」を明示しておくことによって、各社の提示がより具体的なものになります。

後継者面の成功ポイント2.適切な情報開示

何の情報もなく、ただM&A後の希望だけ言われても、買い手としてはその条件を飲めるかどうか検討することはできません。十分な情報開示がない場合、約束はすべて空手形に終わります。

M&Aプロセスの進捗に応じて、それぞれ適切な情報開示をしていきましょう。企業秘密保持とのバランスは簡単ではありませんが、これがM&A成功の分水嶺と言っても過言ではありません。

後継者面の成功ポイント3.各社の「未来図」の見極め

複数の入札が集まった場合、それぞれの買い手候補が提出した未来図を比較し、どの会社の方針が自分の意に沿うものかを検討しましょう。ある程度は妥協も必要になるかもしれません。

このとき注意していただきたいのは、買い手候補の中には守る気もない空約束をしたり、守る気があってもそれを実現する能力に乏しいこともあるということです。そこを見誤り、口だけの良さそうな未来図に飛びついてはいけません。

これはM&Aプロセスを通じて注意していくべきポイントですが、一番の確かめるチャンスは、買い手企業の意思決定権者と面談できる「トップ面談」の場です。トップ面談に臨むための準備については以下の記事で紹介していますので、準備不足でチャンスを十分に生かす機会を失わないようにしましょう。

最良の後継者を選ぶM&Aでのトップ面談の7つの意義と6つの準備

2つの成功軸は同時追求できる!

「財産」と「後継者」は、どちらかを得るためには一方を諦めなければならないという関係ではありません。うまく立ち回ることで十分に両立できます。

それは、M&A対象会社を買うことの魅力を十分に買い手候補に伝えることです。
これにより買い手が「買いたい」と思うほど、真剣に事業計画を検討し、未来図を描いてくれます。当然買収意欲が強いほど高い価格も許容できますし、争奪戦も起こりやすくなります。

M&Aの成功は決して特殊なことをしなければならないわけではありません。会社・事業を売買する上で当たり前のことを当たり前にすれば、自然と成功が近づいてきます。

まずは自分の心を整理しよう

M&Aが成功か失敗かを決めるのは、自分の心に他なりません。自分が後悔しないM&Aを実現しましょう。

最悪なのは、仲介会社など周りの意見を訊いているうちに要求水準が下がっていき、M&Aの「成立」まで漕ぎつけたのに、後でひどく後悔する事態に陥ることです。

このような事態は、M&Aプロセスが始まる前に自分の本心ときちんと向き合っておけば防げます。自分の価値観がしっかり意識できていれば、価値観を修正するとしても納得のいく意見しか受け入れませんので、後で後悔することはなくなるでしょう。

繰り返しになりますが、M&Aの成功も失敗も自分の心次第です。自分がどんなM&Aを実現したいのか、真剣に考えていきましょう。

自分がどんなM&Aを実現したいかを明確に整理する方法について、「これがM&Aの第一歩!【M&Aの成功定義】の7つのステップ」にて詳しくまとめています。ぜひご覧いただき、実践してみてください。

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


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