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M&A(買収)

のれんの減損とは?M&Aが巨額損失を起こす仕組みを基礎から図解!

のれんの減損損失の図解

M&A関連のニュースで定期的に話題に上がるのが、「のれんの減損損失」というものです。たとえば、昨日(2019年1月31日)は野村ホールディングスが814億円の減損損失を発表しています。

野村HD、1千億円超の最終赤字に リーマンなど「のれん」で減損[外部]

では、この「のれんの減損損失」とは何でしょうか?「のれん」と「減損」という取っ付きづらい言葉が組み合わさった難しい話ですが、要するにどういうことなのか、基礎から学んでいきましょう。

減損損失とは?

「のれん」と「減損」のうち、より多くの方が躓くのが減損のほうでしょう。まずは、減損損失とは何かについて説明していきましょう。

減損=資産に「貸借対照表に載せる価値」がなくなった状態

減損を端的に言うと、その金額で貸借対照表に載せておくほどの価値がなくなった状態ということになります。

貸借対照表に載せる資産の金額には、「これ以上の帳簿価額にしてはいけない」という金額があります。減価償却するなどして、通常の会計ルール通りの帳簿価額を計算した結果、その金額を超えてしまった場合に、「減損」という状態になるのです(下図)。

減損の状態

貸借対照表に載せても良い上限ラインとは?

ここでいう貸借対照表に載せてても良い上限ラインとは、「将来キャッシュで回収できる金額(回収可能価額)」とされています。普通に計算した結果の資産の帳簿価額がこの金額を超えるようであれば、貸借対照表に載せるべき金額とは認められません。

将来のキャッシュによる回収の仕方については資産それぞれによって異なります。売掛金であれば債権回収、商品在庫であればその販売です。そして固定資産であれば、その固定資産を使用して事業を行うことで得られる利益(キャッシュフロー)が基本となります。

厳密には、キャッシュフローを割り引いたり、売却処分する場合と比較したりしますが、説明をシンプルにするために割愛します。

減損状態があったらどうなるのか?

では、貸借対照表上の資産の額を通常通り計算した結果、将来得られるキャッシュの額より下回っている場合(つまり、回収できない額となっている場合)、会計上でどのように処理するのでしょうか?

具体的には、回収できる額になるまで資産の帳簿価額を切り下げなければなりません。そして、その差額を当期の損失として処理します(下図)。

減損処理の図解

この際、どのような勘定科目で損失に計上するかは、資産の種類ごとに異なります。多少例外はありますが、概ね以下の表のとおり、各損失科目として計上します。

資産の種類 損失計上の勘定科目
売掛金 貸倒損失 or 貸倒引当金繰入
商品在庫 商品評価損
固定資産 減損損失
投資有価証券 投資有価証券評価損
繰延税金資産 法人税等調整額

減損損失が発生する条件

上表のとおり、減損損失は固定資産が減損状態にあることによって発生します。

つまり簡単に言うと、固定資産の帳簿価額を通常通り計算した結果、残高が将来の事業利益で回収できない額になっており、回収できる額まで切り下げたときに、減損損失が発生するということです(下図)。

減損損失の図解

では、なぜ減損状態が発生してしまうのでしょうか?その主な理由は以下の2つです。

  • そもそも高すぎる価格で資産を取得した(帳簿価額が高すぎる)
  • 想定したより事業利益が出ていない(回収可能価額が低すぎる)

詳しくは後述しますが、この2つの理由は、のれんの減損にもそのまま当てはまります。

「のれん」とは?

では、次にもう1つのワードである「のれん」について確認しておきましょう。

のれんとは、差額である

のれんを正しく定義すると、「M&A対価と受け入れた対象会社(事業)の純資産との差額」です(下図)。

のれんについて図解

M&A対象会社の資産だけがほしいのであれば、わざわざその会社を買う必要はありません。対象会社が持っているのと同額の借入れをし、資産だけを譲ってもらえばいいのです。それにも関わらず、敢えてM&Aという手段を用いるのは、その会社(事業)が単なる模倣では手に入らない、ブランドなりノウハウなりの無形の財産価値を持っているからです(下図)。

M&Aで手に入れる財産価値

買い手はこの無形の財産価値を手に入れるため、M&Aを実施します。そして、対象会社が持っている純資産(有形の財産価値)を超えて支出したM&A対価のことを「のれん」と言います(下図)。

のれんとは何か

のれんの内容はよくわからない

なお、のれんは差額であって、それ以上でもそれ以下でもありません。M&A対象会社に有形の資産価値を超えた収益性があるから買い取られているものの、のれんがどのような要素で構成されているかは、実際のところよくわからないのです。

どのような構成要素が考えられるかはある程度想像でき、その内容は「のれんとは何か?M&Aでしか得られないプレミアムの正体」にてご紹介していますが、現実に発生するのれんとはこれらの無形の要素の複合体であり、具体的にどの要素がいくらぐらいの価値があるのかは、値決めをした買い手ですら特定できません。

余談ながら、のれんを「差額」という概念でしか把握できないという事実が、M&Aのプレミアムの呼び名を「営業権」から「のれん」に変更させています。詳しくは「営業権とは何か?のれんとの違いと実際に使われる2つの評価方法」にて解説しています。

この、実際のところよくわからないというのが、のれんの減損損失を理解する上で少々ポイントになってきます。

のれんの会計処理

M&Aの結果発生したのれんは、無形固定資産として、貸借対照表に資産計上されます。

のれんは上述のとおり内容に関してはよくわからないのですが、買い手が将来の長期的な収益性に期待を込めて、お金を払って購入しているという事実があります。これを無視することはできません。

そこで、「内訳はよくわかんないけど、ブランドとかノウハウとか、確かに価値のある財産を買ってきたようなので、まとめて『のれん』として計上しとこう」ということで、無形固定資産として扱われます。

無形固定資産として計上された後ののれんは、適用されている会計基準によって扱いが異なります。いわゆる「3大会計基準」での扱い方は以下のとおりです。

適用会計基準 のれんの扱い
日本基準 20年以内のその効果が及ぶ期間で減価償却
国際会計基準 減価償却しない
米国会計基準 減価償却しない

正確には「減価償却」という言葉は使いませんが、わかりやすくするためにそのまま用いています。また、国際会計基準・米国会計基準では特に「減損テスト」が強調されていますが、実態は日本基準とあまり変わらないため、説明を省きます。

ただ、いずれにせよ当分は貸借対照表上に計上されつづけるという点には変わりありません。

「のれんの減損損失」とは?

上記を踏まえて、いよいよ本題であるのれんの減損損失について説明しましょう。

のれんとは、上述のとおりM&A対象会社に有形の資産価値を超えた収益性があるから、お金を出して買い取られているものです。したがって、「実際買い取ってみたら、当初期待しているほどの収益性はありませんでした」という状況になった場合、「貸借対照表に計上されているのれんという資産は、将来のキャッシュで回収できないのでは?」という問題が発生します。

つまり、M&Aの投資額が予定通り回収できそうにないときに、のれんの帳簿価額を回収できる額まで切り下げる必要があり、このときに発生するのが「のれんの減損損失」です(下図)。

のれんの減損損失の図解

のれんは優先的に減損処理される

なお、のれんは通常の固定資産に比べて優先的に減損処理の対象として扱われます。

なぜなら、上述のとおり「内容がよくわからないもの」ですので、M&A対象事業の収益性が思ったほど出ていないときは真っ先に疑われるのは当然のことです。

そこで、M&Aで買収した事業が減損しているときは、まずのれんの額を最優先で切り下げていき、ゼロにしてから他の資産を減損処理するという手順が決められています。

のれんの減損が発生する2大要因

このようなのれんの減損損失は、なぜ生まれてしまうのでしょうか。その理由は主に以下の2つです。

  • 買収時のM&A価格が高すぎた(高値づかみ)
  • 買収後の事業引継ぎが思うようにいかなかった(PMIの失敗)

実際、世の中のM&Aの失敗のほとんどは、上記のいずれかの要因によるものです。2つの失敗要因の内容については「基本が大事!買い手が陥る買収M&Aの【2大失敗要因】と防止策5選」にて解説していますが、いずれにせよ、のれんの減損処理の時点においては、過去の経営施策の失敗に起因するものと言えます。

のれんの減損で経営責任が問われることも!

上記のとおり、のれんの減損は過去の経営施策の失敗に起因することが多く、また結構具体的な財務報告や報道がなされるため、経営者としては非常に嫌なものです。

そのため、買い手企業の経営陣が積極的にのれんの減損を認めることはなかなかなく、大抵は監査法人に減損処理するように指導され、いろいろと議論してから減損損失が計上されます。

減損損失は金額が大きくなりがちで、世間の注目も集まるため、時には退任した経営者にまで責任が及ぶことがあり、かなりナーバスな問題と言えるでしょう。

おわりに

今回は、ニュースでよく見る「のれんの減損損失」について、基礎的なところから説明させていただきました。

積極的にM&Aをしている企業では、のれんの減損は定期的に出てしまうものですが、しっかりと準備してM&Aを実施すれば確率は下げることが可能です。特にM&A前の準備が重要ですので、可能な限り減損が出ない買収体制を構築していくことが大切と言えるでしょう。

基本が大事!買い手が陥る買収M&Aの【2大失敗要因】と防止策5選

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