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M&A(買収)

サラリーマン個人のM&Aは99%失敗すると思うシンプルな理由

個人のM&A

最近「M&A 個人」などの検索ワードで当サイトにたどり着く方も多いようです。このページをご覧のあなたもその1人かもしれません。

どうやら「老後の資産形成には個人M&Aが最適だ」とか書いてあるトンデモ投資本が売れたことが大きな原因のようです。「個人でもM&Aなんて簡単だ」的なことが書いてありますが、素人がそう考えてくれれば彼らが儲かる仕組みだから。サラリーマン向けの不動産サブリース投資と同じ構造です。

個人がM&Aで中小企業を買収し、経営に成功することは、決して不可能ではないと思います。しかし、とても簡単なことではありません。「自分にはキャリアがあるから大丈夫」とか「大企業のノウハウを注入すれば中小企業経営なんて難しくない」と思っていると、個人M&Aは99%失敗すると断言できます

それはなぜなのか? その理由は本記事でじっくりご説明しますが、シンプルに説明すると、

サラリーマンと中小企業経営者は、根本的に違う職業である

ということです。

これを理解せずにサラリーマン気分、中間管理職気分で中小企業経営者になってしまうと、まず間違いなく一生後悔する結果に終わります。少しでも成功の可能性が欲しかったら、「サラリーマン」から「中小企業経営者」へと生き方そのものを変える必要があるのです。

今回は、なぜサラリーマンがM&Aをすると失敗するのか、そして、どのようにサラリーマンから脱皮して事業を引き継いでいくべきなのか、中小企業M&Aという特殊な取引について知る者としての意見をご紹介したいと思います。

中間管理職気分で経営者になると必ず失敗する

大企業の管理職であっても直接中小企業M&Aに関与した人は決して多くないので、金融屋さんに「M&Aなんて簡単だ」と言われると「そうなのかな?」と思ってしまうかもしれません。

しかし、実際にM&Aに関与していると、それが「すごく大変」で「個人が手を出すのは非常に困難」であることを痛感します。自分で1から事業を立ち上げるのも大変なことですが、M&Aはそれとは違った大変さが存在していることは知っておくべきです。

ビジネスを引き継ぐこと自体が大変ですが、一番の難関は従業員さんの心の問題です。

従業員が付いてこないM&Aは100%失敗する

「経営者とは何でもできて何にもできない人」という言葉があります。従業員を動かす権限は持っているものの、実際に現場で働くのは個々の心を持ったヒトであり、将棋の駒ではありません。モチベーションが下がれば仕事のクオリティが下がったり、退職者が出て現場が回らなくなるのは自明の理です。

仕事が仕組み化されている大企業であれば、多少のモチベーション低下が深刻な結果を招くことは少ないかもしれません。しかし少人数で動く中小企業では、周囲から慕われている数名のキーパーソンのモチベーション低下が素早く業績低下につながります。

ある意味で、M&Aを成功させるのは買った人ではなく、プロパー社員とも言えます。プロパー社員がついてこないM&Aは、悲劇的な結果を招くだけです。

社長交代は中小企業にとって天変地異

大企業でも社長が交代するというのは大きなイベントですが、中小企業ではそんなレベルではありません。まさに天地がひっくり返るぐらいの大ごとです。

中小企業は、例外なく、社長の器で成り立っています。単に生まれが良いだけのお坊ちゃんが2代目社長になっていると思うかもしれませんが、多少能力に疑問があったとしても、幼少のころからいつか経営者になると目されて育ってきた人間です。そんじょそこらのサラリーマンとは別格の覚悟を持っています。

社長が交代すると、従業員は極めてシビアに新しいボスを「品定め」します。新社長が、仮に誰しもが知る大企業で役員まで上り詰めたとしても、前社長と比較して「やっぱり俺たちに合わない」「中小企業の泥臭さがわかっていない」と思われたら、現場は一気に白けていきます。

中小企業のトップは理屈でなるものではない

中小企業のトップとして部下を従えるためには、理論理屈で鍛えられた能力もある程度は必要かもしれませんが、最大の必須要素は「リーダーシップ」や「人望」と言った、サラリーマンではなかなか鍛えられない無形の力です。

どんなに超一流の仕事の流儀を知っていたとしても、それをスタッフに浸透させるのは簡単ではありません。それも、後から入ってきた部外者という完全アウェーの中で実現しなければならないのです。

もちろん、サラリーマンの中にもこのようなリーダー独特の素質を持っている人もいますし、自分がそうであると思うならばそこに賭けるのも選択でしょう。ただ、少なくとも中間管理職の延長として中小企業経営者を捉えているとしたら、それは致命的な間違いであると思い知ることになります。

企業の買い手がM&Aに成功する理由

個人ではなく、企業が買い手となるM&Aであっても、現場に親会社のトップが派遣されるわけではありません。現場に派遣されるのは「経営者」ではなく「現場監督」であるサラリーマンです。では、どうして企業が買い手になるとM&Aがうまくいくのでしょうか。

それは、M&A対象会社はM&Aによって、中小企業から大企業の1部門に変化するからです。

もちろん、この変化はM&Aをすれば勝手に起こるものではなく、買い手企業が乗り込んで変革を起こすこと(PMIと言います)によって生まれるものなのですが、いずれにせよ、大企業の1部門であれば経営者が不在になってもやっていける、ということなのです。

M&A市場の現状は個人にとって逆風でしかない

さらに、近年のM&A市場は個人にとっての逆風が吹いており、そもそも買うこと自体が困難であることは知っておきましょう。以下では個人が会社を買うということが如何に困難かをご説明していきます。

優良企業は買い手企業が高値で買う

まず、M&Aという成長手段は多くの企業にとって選択肢となっており、優良企業が優良企業を買おうと全力で取り組んでいます。つまり、完全な「売り手市場」です。

大手企業のノウハウをちょっとやそっと注入すれば業績上昇が見込める会社であれば、大手企業が手を出さないはずがありません。競争入札になったら資金を用意できる大企業ほど有利な勝負であり、個人には勝ち目がないと考えるべきでしょう。

シナジー効果が見込めなければ勝てる入札はまず出せない

なお、なぜ大企業が高値で買収できるかというと、それは今よりも業績を引き上げ、投資回収する目算がきちんと立っているからです。この目算の根拠が「シナジー効果」です。

大企業は人材交流や経営資源の共通化によって利益を上げる手段を豊富に持っています。手書きで伝票を切っている現場にExcelを導入するなんて地味で小規模なカイゼンではなく、部門統廃合も含めた抜本的な改革を起こすことができます。

このような高いシナジー効果を実現する手段がない以上、個人が優良企業を買うのは夢のまた夢でしょう。

一般に買い手がどのようにシナジー効果をM&A価格に織り込んでいくかについては、「M&Aの【シナジー効果】のすべて|意味、種類、重要性、価格反映」をご覧ください。

売り手オーナーも企業に買ってほしい

また、ほとんどの売り手オーナーは、自社よりも大きな会社に買ってほしいと考えています。

もちろん別意見の売り手オーナーもいますので、そのニーズを拾えればチャンスがあるのかもしれませんが、少なくとも高値で売れる会社ほど、高値を出せて社会的信用力も高い相手と交渉したいと考えるのは当然でしょう。

仲介会社も相手にしてくれない

M&A案件をどうやって探すのかという問題も、個人にとって大きな逆風になります。

M&A仲介会社は、積極的に個人に案件を紹介することはまずありません。上述のとおりほとんどの売り手オーナーは望みませんし、何より個人ではまずリピーターになってくれないので、買い手候補として優先的に扱うメリットはないからです。

もし個人に紹介するとしたら、売り手オーナーがなぜか頑なに企業の買い手を嫌がっていたり、買い手企業を回ってもどうしても買い手がつかなかったりという「ワケあり案件」になるでしょう。

必見!成功確率を引き上げる事業の引継ぎ方法

では、個人の買い手がM&Aを成功させるためにはどうすればいいのでしょうか。恐らくポイントになるのは以下の3点です。

  • 自身が経営者になるのだという覚悟を形成する時間を作る
  • 自身とM&A対象会社との相性を確認する期間を設ける
  • 他人への売却ではなく「弟子」への承継を志向する経営者を探す

上記のポイントを踏まえると、「M&Aという手段で買い取るのではなく、『弟子入り』という形式で事業を引き継ぐ」のがもっとも成功率を高めると考えています。

具体的な方法を考えてみましょう。

1.まずは「後継者候補」として「弟子入り」する

個人の買い手が「買収者」として対象会社に関与するのは非常に危険なことです。M&A直後の対象会社はただでさえハレーションが起きやすいところに、わざわざ喧嘩を売りに行くようなものです。

最初は現経営者の「弟子」としての立場で会社に入社しましょう。入社ルートはハローワークでも構いません。後継者の最有力候補であるという立場で問題ありませんが、常に腰を低くしていることです。

このような遠回しな手順を踏む理由は、以下の3つです。

  1. 自分がサラリーマンから経営者へと成長する時間を作る
  2. プロパー社員に受け入れてもらう土壌を作る
  3. お金よりも自分の意志を継いでほしい売り手オーナーに選んでもらう

3番目の「自分の意思を継いでほしい売り手オーナー」について補足しましょう。
経営者というのは単にお金が欲しいだけではなく、自分の会社を維持・発展させてほしいと思う方が多いです。このような人は、ドライな企業に売るよりも自分の「弟子」に引き継いでほしいと考えやすく、そのニーズに応えられれば企業に対しての差別化ポイントになるからです。

このとき、肝心の株式は20%程度譲ってもらい、残りは一定の「修業期間」の後に買い取るという約束を取り付けましょう。ただし、それまでの間はあくまでも未確定の約束であり、契約撤回となっても構わないようにします(違約金を設定してもいいのですが、多額過ぎないようにしましょう)。

国としても、そのような「お試し後継者」を後押しする流れにあるようです。今後の制度設計に注目しています(参考:中小後継者「お試し」支援 経産省|日本経済新聞

2.2~3年の期間で適性や相性を確かめる

この「修業期間」は2~3年とし、その間に自分を経営者として成長させる他、対象会社との相性を確認していきます。

もしかすると、経営者の仕事は想像より面白くないかもしれません。従来の番頭格の社員と対立し、プロパー社員が全然動いてくれないかもしれません。このような場合は、多少違約金で損をすることになっても、事業の引継ぎを断念すべきです。

もちろん、売り手オーナーからも、「やっぱりあなたには売りたくない」と言われるリスクはあります。しかし、そんなM&Aであれば最初からしないほうがよいものですので、諦めるべきでしょう。

3.一定期間後に社長交代し、株式を買い取る

上記のような「修業期間」を経て、売り手、買い手、対象会社の準備が整ったら、いよいよ社長交代と株式の売買となります。

売り手オーナーも引き続き株式を持ち続けたいと考えるかもしれませんが、最低でも8割程度にはなるように買い取りましょう。少なくともそのぐらいは手元にないと、思うように経営ができません。

いよいよ本格的に経営者としてのデビューになりますが、準備は万端であるはずです。自信を持ってリーダーシップを発揮していきましょう。

おわりに.M&A屋に騙されるな!

今回は、個人が既存の事業の経営権を買い取り、成功させるために必要と考えられることについてご説明しました。個人のM&Aは決して簡単ではなく茨の道であり、入念に準備しない限り失敗が待っていると感じていただけたでしょうか。

個人のM&Aを推奨する本はファンドマネジャーなどが執筆していますので、個人にはM&Aは困難であることを知っていて書いているのでしょう。それにもかかわらずなぜ推奨するかというと、要するに自分たちのファンドで持て余した「売れない在庫(会社)」を、何も知らない個人に売りつけたいという意図があるものと思われます。M&Aとはそういう世界です。

中小企業経営は決して老後を豊かに過ごすための投資ではなく、人生を懸けて事業を率いるという生き方です。少なくともその気持ちなくして経営者になることはできませんので、甘言に踊らされることのないように気を付けましょう。

(参考記事)M&A後に『現状維持』できない理由と買い手が全力で実施すべきこと

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