M&A(譲渡)

仲介会社のオークション入札型M&Aによる売却プロセスのすべて

オークション入札型M&Aの売り手から見たプロセス

M&Aプロセスには、大きく分けて「オークション入札型」と「提案依頼型」の2つの方法があります。

このうち、中小企業のM&Aで主流であるのはオークション入札型です。中小企業のM&Aは仲介会社が扱うことが多いですが、仲介の立場的に取り仕切りやすく、しかも成約率も上がるので、仲介会社が扱う案件の大半がオークション入札型プロセスで進められます。

初めてのM&Aを検討しているオーナーさんにとっては、これから何が起こるのかというプロセスは大変気になるところでしょう。そこで今回は、オークション入札型のM&Aプロセスについて、売り手オーナーの視点から徹底解説いたします。

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オークション入札型M&Aの概要

まずは、オークション入札型M&Aの全体像をざっくりと把握しておきましょう。

なお、厳密にはオークション型と入札型(ビッド形式)は別物ですが、あまり気にしなくて大丈夫です。

オークション入札型M&Aとは

オークション入札型M&Aとは、その名のとおり譲渡対象会社を複数社のオークションに「出品」し、入札を経て一番好条件を出した会社に譲渡するというスキームです。

複数の買い手候補に同様の情報を提供し、同時に入札してもらいます。価格面を中心に各社を比較し、買い手候補を絞り込んでいきます。

オークション入札型M&Aのメリット

オークション入札型M&Aの最大のメリットは、買い手候補に競合相手を意識させることで、より高い条件を引き出せることです。

また、買い手候補を一律のスケジュールに乗せて同時進行で検討させることで、譲渡完了までのスケジュールが読みやすいという利点もあります。

最終価格交渉は1対1で行う

留意点として、オークション入札型M&Aにおける競争入札は、通常はデューデリジェンスの前に行われます。

そのため、デューデリジェンスが終わって価格や契約内容の本格交渉をしているときは、買い手候補はすでに一社に絞られています。肝心の本格交渉で競争原理が働かせられないのが苦しいところです。

オークション入札型M&Aプロセスの大まかな流れ

では、まずはオークション入札型M&Aプロセスの全体像を大掴みしておきましょう。案件の特殊性やM&Aアドバイザーの方針によりアレンジはされますが、全体プロセスとしては下図のような流れになります。

M&Aプロセスの全体像

Phase 1.検討・準備段階

売り手オーナーがM&Aアドバイザーを選定し、会社の内容をアドバイザーに説明したり、売却方針を話し合う段階です。

情報収集から始まり、M&Aアドバイザーの選定、M&Aスキームの検討、価格目線の決定、スケジュールの策定など、M&Aの設計図を作る期間です。

Phase 2.入札者の募集段階

買い手候補に接触し、入札者を募集する段階です。

企業の業績や特徴などをまとめた企業概要書を作成し、興味を示してくれた会社に情報提供していきます。買い手候補はこのとき提供された情報をもとに入札条件を考えます。より入札しやすいよう質問対応を行います。

この入札者の募集段階が、M&A価格を高める最大の正念場です

Phase 3.買い手候補の選定段階

入札を行い、複数の入札があった場合、ここから買い手候補を絞り込んでいきます。

価格条件だけでなく、経営者同士が面談し、相手を理解し、人間関係が作れそうか確認しながら考えていきます。

その結果1社に絞り込み、今後の方針を基本合意します。

Phase 4.条件交渉段階

絞り込まれた買い手は、デューデリジェンスと呼ばれる買収前の調査を実施し、会社のことをしっかりと調べ上げます。そして、調査結果をもとに価格の見直しを行ったり、売買条件の最終的な交渉を行います。

交渉がまとまったら、これを最終契約書に落とし込み、調印式を行って、M&A契約を締結します。

Phase 5.クロージングと引継段階

最終契約書が締結されると、売り手・買い手は最終に書かれたクロージングまでの義務を果たしていきます。クロージング日までに双方の義務がすべて果たされると、口座に大金が振り込まれ、無事M&Aは成立します。

ただし、M&Aが成立したからと言って、いきなり社長がいなくなってしまっては、社内外が混乱してしまいます。しばらくは顧問などの肩書で業務の引継を行い、経営の円滑なサポートを補佐します。これが終わると、売り手オーナーは晴れて引退です。

オークション入札型M&Aの各プロセスと解説

それではオークション入札型M&Aの各プロセスを具体的に見ていきましょう。

Phase 1.検討・準備段階の具体的プロセス

M&Aプロセスのphase.1

この段階では、情報収集からM&Aアドバイザーの選定、M&Aスキーム方針の決定、スケジュールの決定などを行います。M&A成功の土台となる重要プロセスですので、気合を入れて取り組みましょう。

プロセス1-1.M&Aに関する情報収集

M&Aはよくわからない状態で手を出すと大やけどしますので、必ず最初に自分で情報収集しましょう。

最近は書店に行けばM&A関連の書籍は山ほどありますし、インターネットでも情報が溢れています。このページをご覧になっている方もこの準備段階にある人が多いのではないでしょうか。

また、仲介会社主催の無料セミナーも、全国津々浦々で行われています。後でDMが山ほど届きますが、それが煩わしくなければ顔を出してみるのもいいでしょう。

M&Aの初期段階で相談する相手には要注意です。相手の立場や裏側を理解しておかないと、巧みな話術によって独占契約が結ばされ、会社の情報が不用意に出回るリスクがあります。詳しくは「巧みな話術に要注意?株式譲渡M&Aの初期の相談相手とその裏側」も併せてご覧ください。

ネガティブ情報こそ貴重

情報収集するときは、ネガティブ情報にしっかりと耳を傾けましょう。

M&Aを生業にしている人は、オーナーさんにM&Aをしてほしいと思っていますので、M&Aのネガティブな一面はあまり話したがりません。しかし、ネガティブ情報を知らずにM&Aに突入すると、相手のペースに巻き込まれ、後で「こんなはずじゃなかった!」と後悔する羽目になります。

検討・準備段階でオーナーさんが知っておくべきM&Aのネガティブ情報については、以下のページをご参考にしてください。

鵜呑みは厳禁!M&A業者が言う「売り手のメリット」7選とその真相
M&A仲介会社は言わない売り手の9つのデメリット
中小企業のM&Aで売り手が注意すべき10個の重要ポイント

プロセス1-2.M&Aアドバイザーの選定

M&Aは素人が手を出してうまくいくものではありません。M&Aアドバイザーという専門のコンサルタントを使うことになります。(最近は売り手自身が相手を探すダイレクトM&Aサイトも登場してますが、その場合でも別途ファインシャルアドバイザーを雇われることを強く推奨します)

M&Aアドバイザーには2種類あります。1つめは売り手と買い手の中間に立って中立的にM&Aプロセスを捌く仲介会社、もう1つが売り手か買い手のどちらか片方の代理人として交渉・アドバイスするファイナンシャルアドバイザーです。

両者の違いについて、詳しくは「仲介会社とFA、2種類のM&Aアドバイザーの違いとは?」をご覧ください。

成功報酬で動くM&Aアドバイザーは、原則として独占業務委託契約です。複数社に同時進行で買い手候補を探させることは原則できません(仲介会社に特定の同業他社と提携させることは可)。

選定するときは、仲介会社であれファイナンシャルアドバイザーであれ、複数の候補者を比較することをおすすめします。M&Aアドバイザーにも得意不得意はありますし、大手仲介会社の中でも人の出入りが激しすぎるのか、担当者によってレベル格差は激しく生じています。会社規模も1つの判断要素ではありますが、一番は担当者個人のスキルだと思っています。

なお、営業担当者と実務担当者が異なる会社もあり、営業担当者を信用して契約したら、全然違う人が仕切るようになったということも少なくありません。どんな人が案件を取り仕切るのかは必ず確認しましょう。

M&Aアドバイザーの選定方法については、「死んでも後悔しないM&Aのためのアドバイザー・仲介会社の選び方」にて詳細に解説していますので、ご確認ください。

業務委託契約書の解除条項に注意!

独占業務委託契約は結んだものの、担当者のレベルが想像以上に低く、アドバイザーを変更したくなることもあります。しかし、数カ月間はアドバイザーの乗り換えが制限されているという契約書もあります。

独占業務委託契約書を結ぶ際は、解除条項に注意してください。

プロセス1-3.M&Aスキーム(売却手法)の方針決定

M&Aスキームとは、事業をどう売るかという法形式のことです。中小企業のM&Aでは、以下の4つの手法が主流です。

  • 単純な株式100%の譲渡
  • ヨコの会社分割(分割型分割)を使った株式譲渡
  • タテの会社分割(分社型分割)を使った株式譲渡
  • 事業譲渡

上記の4つのM&Aスキームについては、「【図解】4つのM&Aスキーム(売買手法)のメリットデメリット比較と検討要素」で図を交えて解説し、比較分析しています。また、弊社がコンサルティングで実際に使っているM&Aスキームの決定手順については「売り手にベストなM&Aスキーム(売却手法)を決める7つの手順」にてご紹介しています。

上記のうちどれがいいか、会社の財務内容と潜在的な法務リスク、売り手と買い手の節税効果などを踏まえながら方針決定します。基本的には、どれが一番買い手にとって買いやすくなるかを考えましょう。

上記4スキームでは、税金の掛かり方がまるで異なります。詳しくは「【図解】株式売却M&Aで個人売主が使える3つの節税手法」をご覧ください。

M&Aスキームは早めに方針決定!

M&Aスキームは、買い手候補にとってM&Aの価格やリスクを検討する大前提となるものです。スキームが変わるだけで入札額は大幅に変わります。M&Aプロセスの最中にスキームチェンジすることはできますが、プロセスの手戻りにもなります。

M&Aスキームは初期段階で方針を決定しておきましょう。

プロセス1-4.価格目線の検討

決算書をベースに、「この会社はいくらぐらいで売れるだろうか」という価格目線を作っていきます。

価格目線は、買い手が入札するときの1つの基準になります。それなら高めのほうがいいかというとそうでもなく、あまりにも目線が高い案件の場合、誠実な買い手候補がそもそも入札から降りてしまうこともあります。

価格目線は、その業界のM&A成立事例を知る仲介会社の意見も参考にしながら決めていきましょう。

買い手がどのように入札価格を決めるかは、「DCFなんて嘘?M&Aの入札で買主が本当に使う3つの株式値決め法」に記載していますので、ご参考にしてください。

プロセス1-5.M&Aスケジュールの作成

M&Aを完了させる時期を決め、それまでの日程を作っていきます。

もしいつまでにM&Aを完了させたいかの希望がある場合は、その旨を仲介会社に伝え、見合う日程を作ってもらいましょう。

なお、M&Aの日程はたいてい遅延します。M&A完了時期に強い希望がある場合は強く主張すべきです。ただ、売り手が焦っていることを買い手に悟られてしまうと交渉上不利になりますので、交渉期間がたっぷりとれる余裕のあるスケジュールが望ましいところです。

Phase 2.入札者の募集段階の具体的プロセス

M&Aプロセスのphase.2

この段階では、買い手候補に接触し、対象会社の情報を提供していきます。

多くの買い手候補に誠実な入札をしてもらうのが目的ですので、質問には売り手側も誠実に対応しましょう。

プロセス2-1.ショートリスト(声掛けリスト)の作成

ショートリストとは、仲介会社が「こんな会社のM&Aの話がありますよ」と声を掛けていく買い手候補企業のリストです。

買い手候補探しは、まず対象会社の買収に興味を持ってくれそうな会社に対して、仲介会社が「こんな会社に興味ありませんか?」と声をかけていきます。ただ、オーナーさんとしては声をかけてほしくない同業者や、積極的に売り込んでほしい業界などがあるでしょう。そこで、どこに声をかけ、どこに声をかけないかのリストを作る必要があります。

一般的な流れとしては、まず仲介会社が「こんなところに声を掛けませんか?」という同業者や買い手登録企業のリスト(ロングリスト)を持ってきます。これをもとに、声を掛けていく優先順位付けや声を掛けない相手の除外をしていきます。

ショートリストの作成は、売り手オーナーが本当に買ってほしいと思える買い手候補を見つける大切なプロセスです。M&Aを成功に導くショートリストの作り方については、「ぜひ売りたくなる相手とのご縁をつなぐM&Aショートリストの作り方」をご覧ください。

プロセス2-2.ノンネームシートの作成

ノンネームシートとは、匿名で限定された会社情報(業態、エリア、売上規模など)を記載した紙です。ショートリストに入った買い手候補はまずこれを見せられ、興味があれば守秘義務契約を結んだ上で詳細な資料を請求します。

そのため仲介会社が買い手候補と接触する前に、このノンネームシートを、仲介会社と一緒に作成していきます。

ノンネームシートは、入札する可能性の低い買い手候補を排除する目的で配布されますが、詳細に書きすぎると会社が容易に特定されますし、アバウトすぎると意味がなくなるという難しさがあります。ショートリストの配布先に応じて何パターンか用意しておきましょう。

上記のとおり、ノンネームリストの具体性は秘密保持と関心獲得の間で難しいバランス調整が必要です。詳しくは「秘密を守り有望な買い手を集めるM&Aのノンネームシートの記載内容」をご覧ください。

プロセス2-3.インフォメーションメモランダムの作成

インフォメーションメモランダムとは、会社の社名や業歴、M&Aスキーム、決算書の数値と解説など、買い手が入札するために必要な情報をまとめた書類です。これを仲介会社と作り、興味を示してくれた会社に提供する準備をしておきます。

インフォメーションメモランダムは、オークション入札型M&Aの肝ともいえる最重要資料です。この資料の出来によって、どれだけ誠実な入札が集まるかが決まります。

インフォメーションメモランダムが重要である理由、記載すべき項目、買い手に響く内容の書き方については、「誠実な入札を引き出すインフォメーションメモランダムの項目と内容」をご覧ください。

なお、インフォメーションメモランダムを作るのは結構大変な作業ですので、先にノンネームシートを配布し、ある程度入札者が集まりそうだという感触を得てから作成する仲介会社もあります。

プロセス2-4.ノンネームシートとインフォメーションメモランダムの配布

いよいよ買い手候補にコンタクトを取るタイミングがやってきました。もっとも、この時点では売り手オーナーが前に出ることはありません。先方との接触は仲介会社が行います。

ただ、仲介会社がショートリストの誰にどのように接触し、どのような反応があったのか、インフォメーションメモランダムを誰に渡したのかについては、逐次報告を受けるようにしましょう。反応が芳しくない場合、ショートリストに候補を追加したり、価格目線やM&Aスキームを修正したり、あるいは思い切ってM&Aを中止するという判断も必要になります。

また、功を焦る仲介会社が、勝手にショートリストにない買い手候補にノンネームシートを持っていったり、同業者にコピーして配布したりすることもあります。これらは一概には悪いことではないのですが、オーナーさんとしてはきちんと報告を受け、情報管理に気を配りましょう。

なお、インフォメーションメモランダムと一緒に、会社の決算書や登記簿謄本も提供するのが一般的です。

プロセス2-5.質問対応

買い手候補は入札するか否か、いくらで入札するかといった検討を、インフォメーションメモランダムをもとに行います。インフォメーションメモランダムから十分な情報が得られない場合は、会社に追加質問をして疑問を解消しようとします。

売り手としては、買い手候補から誠実な入札を受けることが重要ですので、誠実に回答しましょう。

黙秘権は行使できる!

ただ、当然ですが、会社の営業秘密にかかるようなこと、売り手本人や従業員のプライバシーに関することについては、情報の提供を拒否できます。

この時点では買い手候補はまだ入札するかどうかもわかりません。「企業秘密にかかることなので、デューデリジェンスでご質問ください」という回答は可能です。ただし、デューデリジェンスで買い手が想定外の自体が発覚した場合、当然入札額からの減額が要求されます。

Phase 3.買い手候補の選定段階の具体的プロセス

M&Aプロセスのphase.3

いよいよ入札が集まったら、そのうちどの買い手候補に絞り込むかを検討します。

絞り込んだ買い手候補は変更することも可能ですが、デューデリジェンスがやり直しになりますし、会社の情報も流出します。できるだけ一撃必中で買い手が決まるよう、会社の将来を任せられる相手をじっくり考えましょう。

プロセス3-1.入札

入札日を指定して、複数の買い手候補から一斉に入札をしてもらいます。(というのが建前で、実際には相手に応じてそれぞれ別の日を指定することもあります)

入札方法は、単に金額だけを回答させる方法と、意向表明書を提出させる方法があります。意向表明書には金額だけでなく、買い手候補の自己紹介やM&A後の事業計画、役職員の雇用方針など、売り手オーナーさんに選んでもらうためのアピールトークが記載されます。

なお、規模の大きな案件になると入札を複数回行うこともありますが、中小企業の場合はたいてい1回の入札とし、次のトップ面談が第2次の買い手候補選定になります。

なお、M&Aに買い手がどのように価格入札時の値決めを行っているかは、「DCFなんて嘘?M&Aの入札で買主が本当に使う3つの株式値決め法」にてご紹介していますので、参考までに知っておきましょう。

プロセス3-2.トップ面談

トップ面談とは、売り手と買い手のトップ(大企業の場合は経営メンバーで、必ずしも社長とは限りません)が直接面談し、双方の人柄を理解したり、M&A後の事業方針などを話し合う機会です。

ここで初めて、売り手オーナーが前面に出ることになります。

なお、入札者が多くいる場合は、全員にトップ面談をしても無駄ですので、入札内容によって数社に絞り込んでから会います。

中小企業のM&Aにおいて、トップ面談は断じてセレモニー的なものではなく、採用試験の面接のように非常に重要なものです。トップ面談の意義と準備については「最良の後継者を選ぶM&Aでのトップ面談の7つの意義と6つの準備」に記載していますので、ぜひ目を通されることをお勧めします。

買い手候補を見定める数少ない機会

売り手にとって、買い手候補に合うのはトップ面談が最初ですが、実はこれ以後先方経営者とじっくり話をする機会は、M&Aが成立するまでほとんどありません。

売り手オーナーにとって、トップ面談は事業を託せる相手かどうかを見定める数少ない機会です。じっくりと相手を品定めしましょう。

プロセス3-3.買い手候補の選定

入札内容とトップ面談の感触から、事業を託す買い手候補を1社に絞り込みます。

ある意味では売買価格の決定以上に重い決断になります。なかなか決断できずに時間を浪費させてしまうオーナーさんもいらっしゃいます。

買い手候補を選定する際の比較視点として、ご参考までに採用を検討していただきたいものを「M&Aで買い手を選ぶときに参考にしてほしい比較の視点10選」にてご紹介しています。

ただ、結婚と同じで最後は勢いのようなところもありまして、仲介会社の後押しトークがいい方向に転んだりすることもあります。

プロセス3-4.基本合意書の締結

買い手候補が一社に絞られたら、双方の意思を確認するため、基本合意書(LOI)という書面に押印します。

基本合意書は、「M&Aすること」を合意するものではなく、「双方がM&Aに向けて交渉を開始すること」を合意するものです。そのため、かなりライトな書面になります。

なお、一般には基本合意書には法的拘束力はありません。注意すべきポイントは、「細かく書きすぎないこと」です。

内容や注意点について、詳しくは「細かい記述はむしろNG!M&Aの基本合意書の目的・内容・注意点」をご覧ください。

Phase 4.条件交渉段階の具体的プロセス

M&Aプロセスのphase.4

条件交渉段階では、まずデューデリジェンスで対象会社の内容を根掘り葉掘り調査され、それをもとに買い手がM&A後の計画を見直します。計画が下方修正されたり、決算書に誤りがあったりすると、それをもとに価格の減額交渉等が行われます。

プロセス4-1.デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、買い手が対象会社の協力を得て対象会社の事業や財務、法務問題、人事組織などを総合的に調査・分析することです。

多くの場合、買い手企業の担当者と、デューデリジェンス専門の公認会計士や弁護士などがチームを組み、数日間訪問して調査されます。

デューデリジェンスの意味・役割と受ける際の準備・心構えについては「初めてのM&Aでデューデリジェンスを受ける際の6つの準備と心構え」をご覧ください。

プロセス4-2.価格交渉

買い手はデューデリジェンスの結果を受けて、入札時の金額を見直し、必要に応じて減額を要求します。

粉飾決算などの合理的な理由であれば、売り手も減額を呑まざるを得ないでしょう。一方で、不合理な主張や過大な減額要求があった場合は、きちんと突っぱねる必要があります。

デューデリジェンス後の価格交渉については、「【売主向け】DD後の最終条件交渉で勝つM&A価格交渉術」という記事で解説していますので、ぜひご参考にしてください。

プロセス4-3.価格以外の条件交渉(最終契約の作成)

価格以外での条件交渉も同時進行で行われます。最終契約書のドラフトを双方でぶつけ合って、記載内容を決めていく方法が多いようです。

M&Aの最終契約は、これまでの長かったM&Aプロセスの集大成です。「誰とどのような契約を結ぶか」を決めるためにこれまでがあったと言っても過言ではありません。

ここに来るまでにへとへとになってしまう売り手オーナーさんもいますが、もうひと頑張りなので気を抜かずに行きましょう。

M&Aにおける最終契約の条項については、「甘く見ると大火傷!M&A株式譲渡契約で絶対注意すべき5条項」をご覧ください。

プロセス4-4.最終契約書の調印式

最終契約とは、価格も含めたM&A条件をすべてまとめた確定的な契約です。(株式譲渡契約や事業譲渡契約などの総称)

契約内容の交渉が完全にまとまると、最終契約書を清書し、双方の最終的なチェックを受けた後で調印式となります。

仲介会社によっては、高級レストランで調印式を行い、そのあと買い手との一席を設けてくれることもあります。

Phase 5.クロージングと引継段階の具体的プロセス

M&Aプロセスのphase.5

最終契約が終わってめでたしめでたし・・・というわけではありません。売り手オーナーにはM&Aが法的に成立するためのクロージング条件を満たすこと、そして残された従業員さんたちが新組織になじめるよう、最後の大仕事が待っています。

プロセス5-1.M&Aの公表

まず、従業員さんたちに、しかるべきタイミングでM&Aの事実を公表します。一般的には契約調印式の直後に、買い手企業のしかるべき役職の方と一緒に、全従業員を集めて発表します。

また、取引先にも速やかに連絡をしていきます。買い手と一緒にあいさつ回りのスケジュールを組んでおきましょう。

従業員さんを辞めさせない説明の仕方

公表で一番気を付けるべきことが、曖昧な説明で従業員さんたちに不安を与え、結果退職させてしまうことです。これでは全員が不幸になります。

これは買い手の責任でもありますが、公表時に何を話すかを買い手としっかり打ち合わせたうえで、従業員さんたちが不安ではなく期待を抱けるよう振舞いましょう。

プロセス5-2.前提条件・誓約事項の充足

M&Aの最終契約書に織り込まれた前提条件や誓約事項を、買い手の協力を得ながら満たしていきます。

特にヨコの会社分割(分割型分割)を使う場合、債権者保護手続として1カ月必要になります。そのうえで登記が完了しなければM&Aの成立になりませんので、日程厳守で進めましょう。

プロセス5-3.株式譲渡日の手続き

株式譲渡日では、売り手・買い手双方が、クロージング条件を満たしていることを確認し、最後に株式代金の送金手続きと着金確認を行います。着金が確認できた瞬間、株式の所有権は売り手から買い手に移転します。

その後、書面の上で株主総会が開かれ、株式の譲渡承認決議や新役員の就任決議、取締役会での新社長指名などが行われ、これによって会社は売り手オーナーの手元から羽ばたいていきます。

プロセス5-4.業務の引継とサポート

最後に、最終契約で決められた期間、決められた条件で出社し、業務の引継を行います。一定期間元社長が会社にいるだけで従業員さんたちは安心しますので、笑顔で対応してあげてください。

契約が満了すると、晴れて引退の日を迎えます。非常に寂しいことだとは思いますが、M&Aで得たお金で第二の人生を満喫しましょう。

引継期間で絶対にやってはいけないこと

多くの売り手オーナーがやってしまいがちですが、引継期間では、絶対に社長然と振舞ってはいけません。買い手との関係が険悪になりますし、新しい組織体制を受け入れる従業員さんたちにも非常に迷惑なことです。

引継ぎの間は、買い手企業の担当者の頼りない部分が目に付くでしょうが、説教など言語道断です。ぐっとこらえて、新しいボスの顔を立てながらサポート役に徹しましょう。

おわりに

今回は。M&Aの開始から完了までのプロセスについて、仲介会社で主流のオークション入札型M&Aの形で解説させていただきました。

多くのオーナーさんにとってM&Aは初めての経験であり、何が起こるか不安が大きいと思いますので、不安解消の一助になっていれば幸いです。

ただ、当記事はM&Aを推奨するものではなく、M&Aをよく理解した上で後悔のない決断をしましょうという趣旨です。M&Aは非常に有効な事業承継とリタイアメントの手段ですが、安易な結論は禁物です。

当サイトの他の記事も参考にM&Aというものをよく理解し、そのうえでご決断いただければと思います。

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