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M&A(譲渡)

M&Aの基本合意書とは?目的・内容と書き方の【意外な注意点】

    基本合意書の内容と注意点

    M&Aでは、最初は複数の買い手候補に売り込みをかけ、同時進行で買収を検討してもらいますが、プロセス全体の半ばごろに候補を1社に絞り込みます。このときに「基本合意書」という書面を取り交わします。

    この基本合意書は、M&Aの最終契約とは異なり、そんなに重要なものではないことが多いです。そのため弁護士抜きで進めてしまうことも多いのですが、あまり甘く考えるとご自身の今後の交渉を縛ってしまうことがあり、一定の注意は必須です

    この記事では、初めてのM&Aで不利な基本合意書を結ばないように、

    • 基本合意書の基礎知識(タイミングと役割)
    • 基本合意書を結ぶ目的
    • 基本合意書の一般的な内容
    • 基本合意書の書き方での意外な注意点

    について、詳しく解説していきます。

    最後までご覧いただければ、爆弾が潜んだ基本合意書に安易にハンコを押してしまうリスクを回避できるでしょう。

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    基本合意書を結ぶタイミングと役割

    基本合意書は、M&Aプロセスのちょうど中間地点ぐらいで結ばれることが一般的です。

    基本的には買い手候補を1社に絞り込んだ後、「これから、お互いに真剣にM&A交渉をしていきましょう」という意味合いを込めて結ばれます。

    手続的にはこの後デューデリジェンスが行われますが、その前に方向性を基本合意しておくことになります。

    つまり、買い手候補の絞り込みとデューデリジェンスの間が、基本合意を結ぶタイミングになります。

    M&Aの流れについては「5ステップで掴めるM&Aの流れと時間軸!イラスト付きやること一覧」という記事で解説していますので、併せてご覧ください。

    LOIとMOUの違い

    なお、基本合意書には「LOI(Letter of Intent)」と呼ばれるものと、「MOU(Memorandum of Understanding)」と呼ばれるものの2種類があります。

    LOIは上述のとおり、買い手候補の絞り込みとデューデリジェンスの間に結ばれます。

    一方のMOUはもっとずっと前、買い手候補がM&Aに興味を持った段階で結ばれることがあるものです。「これから真面目にM&Aを検討しますよ」ということを双方が表明する程度の意味合いで、LOIよりもずっと緩い内容になっています。

    MOUは買い手候補が絞られない段階で結ばれるもので、入札型のM&Aプロセスとは相性が悪く、結ばれないことが大半です。そのため、中小企業M&Aで基本合意書と言ったら、ほとんどの場合LOIだけを指しますので、本記事でもLOIを前提に進めます

    LOIは「意向表明書」?

    なお、LOIは「意向表明書」であり、MOUこそ「基本合意書」の略だという方もいらっしゃいます。確かに、元の英語表現を直訳するとそのとおりかもしれません。

    この点、私の経験上は「基本合意書」と書かれた書類をLOIと呼ぶことが圧倒的多数であり、MOUはその前段の緩い覚書として使うことが多かったので、上述の説明とさせていただいていますが、日本の中小企業M&Aの実務慣行が本来の意味と乖離しているのかもしれません。

    ちなみに実務慣行では、「意向表明書」は「入札時に買い手が入札額や自己アピール、M&A後の事業計画等を伝える書面」のことで、基本合意書とはまったく別の書面として扱われています。(※詳しくは「売り手経営者を口説き落とすM&Aの「意向表明書」の記載内容とコツ」を参照)

    いずれにせよ、中小企業M&Aでは入札前に基本合意書に該当する覚書が結ばれることは稀で、実務上はあまり違いを意識する必要がないという点は強調したいと思います。

    基本合意書の目的

    基本合意書は、以下のポイントを双方が確認する目的で締結されます。

    1. 独占交渉権の確認
    2. 交渉の基礎となるM&A価格の確認
    3. デューデリジェンスの協力確認

    以下、それぞれ説明しましょう。

    基本合意書の目的1 独占交渉権の確認

    M&Aでは、複数の買い手候補に売り込みを行い、同時進行で買収を検討してもらいます。そして、基本合意書の締結を境に、買い手候補は1社に絞られることになります。これを「独占交渉権」と言います。

    なぜこの独占交渉権の確認が必要かというと、次のプロセスであるデューデリジェンスのためです。

    買い手はデューデリジェンスに結構なコストを使いますので、買い手の立場からすると、複数候補との競合状態が解消されていなければ、安心してデューデリジェンスを行うことができません。

    基本合意書の目的2 交渉の基礎となるM&A価格の確認

    入札によって買い手候補から提示された価格を記載します。これに双方が押印をすることで、その後の価格交渉はこの金額をベースとして行われることになります。

    なお、通常は基本合意書に記載された金額が最終的なM&A価格の上限値とお考えください。つまり、この金額をスタートにして、デューデリジェンスの結果を踏まえて値下げ交渉が行われます。

    基本合意書の目的3 デューデリジェンスの協力確認

    デューデリジェンスは買い手側で行うものですが、売り手の誠実な協力がなければ成立しないものです。基本合意書にデューデリジェンスへの協力義務を記載することで、きちんとデューデリジェンスを受けることを約束します。

    基本合意書の内容

    次に、基本合意書とは何なのか、どのような性格の書面なのかについて確認しておきましょう。ポイントは以下のとおりです。

    • 基本スタンスを合意する
    • 基本的には法的拘束力はない
    • 基本合意書に盛り込まれる一般的な条項

    それぞれ解説していきます。

    基本スタンスを合意する

    基本合意書は、「M&Aをすること」を合意するものではありません。「M&Aの成立に向けて、これから双方誠実に交渉していくこと」という基本スタンスを合意するものです。

    したがって、何か約束する契約書というより、これから約束事を決めていきましょうという双方の気持ちを確認する内容になります。

    基本的には法的拘束力はない

    一般的には、基本合意書の大半の条項には、法的拘束力を持たせません。わざわざ「法的拘束力はない」という一文を記載します。

    デューデリジェンスも行っていない段階では、価格はもちろん、M&Aが成立するかどうかも約束できません。そのため、「検討・交渉した結果破談になっても、双方違約金や損害賠償は求めない」という約束をしておくことが重要です。

    法的拘束力のある基本合意書とは

    ただし、すべての基本合意書が法的拘束力がないわけではなく、法的拘束力を持たせ、一定の条件で違約金を発生させる基本合意書もあります。

    1つの例が、大きな案件に多いのですが、デューデリジェンスの過程で情報流出が避けられない場合です。情報が無秩序に漏れるぐらいなら、基本合意の段階でオープンにしてしまったほうがよいのですが、一度オープンにした以上、生半可な理由で破談にするわけにはいきません。

    したがって、このような場合には、双方が安易に撤回できない状況にしておく必要があります。

    必ず法的拘束力を持たせる条項とは

    なお、法的拘束力のない基本合意書を結ぶ場合であっても、以下の条項には例外的に法的拘束力を持たせることになります。

    • 秘密保持義務
    • 一定期間は他の買い手候補と交渉しないこと(独占交渉権)
    • 売り手がデューデリジェンスに協力すること

    これらを約束してもらえないとデューデリジェンスができませんので、当然の法的拘束力であると言えます。

    基本合意書に盛り込まれる一般的な条項

    基本合意書の条項はケースバイケースですが、主に以下のような条項が盛り込まれます。

    • M&Aの交渉を誠実に進めることで合意したこと
    • 予定しているM&Aスキーム
    • M&A価格の基準額
    • 予定しているM&Aスケジュール
    • 独占交渉権とその期間
    • 秘密保持義務
    • デューデリジェンスへの協力義務
    • 法的拘束力がある条項、ない条項の特定
    • 破談の条件、違約金の有無

    基本合意書の書き方の意外な注意点

    基本合意書の注意点として、あまり具体的に書きすぎないということが挙げられます。

    基本合意書は上述のとおり、今後デューデリジェンスや交渉を行う上での約束事を決める程度の意味合いしかありません。ただし、書面にしてしまう以上、その後の交渉の足枷になることは十分考えれれます。

    基本合意書には、表明保証をどうするとか、価格変更はどういったときに行われるかといった、細かい話は必要ありません。これらを記載してしまうことで、後の交渉が限定されてしまうことになりかねないため、できるだけ記載しないようにしましょう。

    弁護士に頼むときの注意点

    上述のとおり、中小企業M&Aでは、基本合意書を弁護士のチェックなしに結ぶことがあります。できればM&A専門の弁護士さんのチェックを受けてほしいところですが、コストの問題がありますので、必ずしもマストとは思いません(M&A最終契約の場合はマストですが)。

    それ以上に注意すべきが、M&Aの経験に乏しい弁護士を使ってしまうことです。経験上、このパターンが一番危険だと思います。

    たとえプロの弁護士でも、M&Aの経験に乏しい人は、その後どれだけ熾烈な交渉が行われるか、その上で基本合意書がどのような足枷になりうるのかといったことを肌で理解していません。基本合意書は細かく書くべきではないということを知らない弁護士さんは多いのです。

    そのような弁護士さんが大切なクライアントから「基本合意書を結ぶから原案を書いてくれ」と依頼されたら、つい張り切って細かく書いてしまいがちです。それがどれだけクライアントを危険にさらすかはわかりません。

    基本合意書を弁護士に書かせてみれば、その人がM&Aをどれだけ経験しているかわかります。「これって細かすぎるんじゃないの?」という気がしたなら、最終契約は別の弁護士さんの意見も聞いたほうがいいかもしれません。

    おわりに

    今回は、M&Aでの基本合意書の目的や内容、そして注意点についてご説明しました。

    法的拘束力がないからついつい手を抜きがちなところですが、書面に残るため、意外と言質を取られるという例を見かけます。

    重要なことは、とにかく「余計なことは書かない」ということです。十分気を付けましょう。

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