M&A(譲渡)

売り手にベストなM&Aスキーム(売却手法)を決める7つの手順

M&Aスキームの決定方法

M&Aを成功させるために非常に重要なのが、M&Aスキーム(売却手法)です。

M&Aスキームとは、M&Aを実行するための法形式のことであり、中小企業M&Aでは主に以下の4つの手法が選ばれています。

  • 単純な株式売買スキーム
  • 事業譲渡
  • ヨコの会社分割(分割型分割)を用いた売買スキーム
  • タテの会社分割(分社型分割)を用いた売買スキーム

それぞれのM&Aスキームの内容とメリットデメリットについては、「動画と図解で手法を理解!4つの中小企業向けM&Aスキーム完全比較」にて動画や図表を交えながら解説していますので、そちらを先にご覧ください。

これらのM&Aスキームは、どれを選ぶかによって「売りやすさ」や「売買金額」、そして「税引後の手取り額」が大幅に変化します。最適なM&Aスキームを選択しないと、結果的に数千万円レベルの損をするのですが、ほとんどの売り手オーナーさんは、損していることにも気づいていません。

弊社では、売り手オーナーさんにとって最適なM&Aスキームはどれなのか、M&A対象会社の調査やシミュレーション計算を交えてコンサルティングを行っております。
M&Aの初期段階でM&Aスキームの方針を決めていただくことで、その後の交渉方針やインフォメーションメモランダムに記載すべき内容が明確になります。価格面でも大きな優遇規定がありますので、非常にご好評いただいているサービスです。

今回は、弊社が実際にコンサルティングで用いている、最適なM&Aスキームをご提案する手順をご紹介いたします。

M&Aスキーム決定で特に重要な4要素

弊社が売り手のコンサルタントとして参加する場合、M&Aのスキームを決めるときに特に重要要素として重要視なのは、以下の4つの要素です。

  1. 買い手の買いやすさ
  2. 売り手の節税効果
  3. 買い手の節税効果
  4. 売り手の手元に残る財産

以下、それぞれ見ていきましょう。

M&A手法決定の重要要素1.買い手の買いやすさ

M&Aは買い手がつかなければ成立しません。誰も欲しがらない事業では、M&Aスキームを工夫しても、どのみち売れません。

しかし、「ある事業には価値があるが、他の事業が足を引っ張っている」とか「事業にはまだ力があるが、大きな訴訟リスクを抱えている」という会社の場合、単純な株式譲渡ではなく会社分割や事業譲渡によって売れることがあります。

特に複数事業を営む会社では、会社分割を使ったほうが買い手は圧倒的に買いやすくなりますので、必然的に売買価格も上がりやすくなります。

一方で、会社分割の際にM&A対象事業の許認可取得が必須で、相当な手間と時間が必須の場合、再取得を必要としないスキームを検討することもあります。

M&A手法決定の重要要素2.売り手の節税効果

M&Aスキームよって、税金の掛かり方は大きく異なります。単純な株式譲渡と比べてどれだけ節税ができるかはきちんと整理する必要があります。

M&Aにおける個人売主の節税策は3つあります。詳しくは「【図解】株式売却M&Aで税額が半分にもなる個人売主の3つの節税策」をご覧ください。

ほとんどの場合、単純な株式譲渡よりもヨコの会社分割(分割型分割)を使ったスキームのほうが大幅に税金が下がります。さらに、タテの会社分割(分社型分割)スキームは、条件次第でさらに別格の節税になります。

ヨコの会社分割(分割型分割)でどの程度税金が減少するかについて、ざっくりとした概算であれば、比較的簡単に行えます。その手順については「超簡単!M&A前のヨコの会社分割(分割型分割)での節税効果計算法」をご覧ください。

M&A手法決定の重要要素3.買い手の節税効果

売り手にとって見落としがちなのが買い手の節税効果です。これについては「なんで相手の税金まで心配しなければいけないんだ」と思うかもしれません。

しかし、買い手の立場に立ってみてください。買えば税金が安くなる会社と、安くならない会社であれば、どっちの会社のほうが高い価格を出しやすいでしょうか?

売り手が買い手の節税効果を理解していると、売買価格の上昇という形で売り手のメリットにもなります。これは見落とすと買い手の丸儲けになりますので、見落とさないようにしましょう。

買い手の節税効果を整理するためには、節税効果を資産として評価した「繰延税金資産」を計上します。この方法については「M&aの価格交渉で知らなきゃ大損する繰延税金資産の基礎知識」に解説していますので、ぜひご覧ください。

また、買い手の節税効果の中でも特に強力なものが「のれんの節税効果」です。これについては少々難しい概念ですが、「M&A価格を跳ね上げる最強の【のれんの節税効果】徹底解説」で紹介しています。

M&A手法決定の重要要素4.売り手の手元に残る財産

一番重要な要素がこの「税引後に売り手にいくらの財産が残るか?」という問題です。

この計算結果を並べると、M&Aスキームごとの手取り額の差に驚かれるオーナーさんは少なくありません。

M&Aスキーム(売却手法)を決定する7ステップ

それでは、M&Aスキームをどのように決定していくか、弊社がコンサルティングで使っている基本の7ステップを見ていきましょう。弊社では以下の手順を踏んで各手法の良し悪しをクライアント様にご報告し、M&Aスキームを決定していきます。

Step.1 対象会社の調査

まず、対象会社のB/S、P/Lを拝見し、事業環境や経営状況をヒアリングさせていただくことで、対象会社のビジネス状況を調査します。

これは簡易的なデューデリジェンスであり、これによってM&Aで価値評価されるものとされないものを特定したり、会社分割で排除すべきリスクがないかを確認していきます。

Step.2 非現実的なM&Aスキームの排除

調査結果をもとに、4つのM&Aスキームのうち非現実的なスキームがないかを検討します。

たとえば、副業に関して大きな法的リスクがあれば単純な株式の売買は難しいですし、従業員が大勢いる会社であれば事業譲渡は難しくなります。

このような非現実的なスキームは検討しても無駄ですので、この段階で一旦排除しておきます。

Step.3 売り手と買い手の節税効果の試算

各スキームごとに、売り手と買い手に発生する節税効果を試算します。

たとえば、タテの会社分割(分社型分割)スキームは、税額が大幅に下がることもあれば跳ね上がることもあります。あまりに跳ね上がる場合は買い手の節税効果を考慮しても不利なスキームになりますので、この時点で一旦除外します。

Step.4 買い手の買いやすさの検証

また、税金以外の面で、どのスキームであればどれだけ買い手が買いやすいか、高い値段を出しやすいかを検証し、整理・比較していきます。

Step.5 M&Aアドバイザーとの打合せ

ある程度初期的な調査・検討が終わった段階で、M&Aアドバイザーにコンタクトし、意見を伺います。

M&Aアドバイザーは市場状況に詳しく、現実的な相場観や買い手の心理を知っている方も多いですので、大変参考になります(まじめにやっているアドバイザーに限りますが)。

相場観は後の手取り額財産の計算で非常に重要になりますので、できれば複数のアドバイザーの意見を訊きたいところです。

Step.6 最終的な手取り財産の感応度分析

M&Aスキームの有力候補や相場観がある程度見えてきたら、いよいよ本格的な計算・検討を行います。

それぞれで発生するアドバイザー報酬、税金(消費税、不動産取得税、登録免許税を含む)、会社分割のコストなどを計算し、比較します。また、オプションで相続税額を概算させていただくこともあります。

なお、M&Aの売買成立額、M&Aアドバイザーとの契約体系、役員報酬額、M&A対象から除外する資産負債内容によって、最終的に有利な手法は大きく変化します。それぞれをパターン分けし、各条件の変化によってどの手法がどれだけ有利になるかまで計算していきます(この計算分析を「感応度分析」といいます)。

下図はM&Aスキームの感応度分析の例です(クリックで拡大)。買い手に事業ののれん価値を3億円、4億円、5億円の幅で評価されたとき、単純な株式譲渡、ヨコの会社分割、タテの会社分割のそれぞれで、どれだけ最終の手残り財産が変わるかを分析しています(実際にはもっと詳細なデータをお見せします)。

M&Aスキームの感応度分析

Step.7 M&Aスキームの方針決定

感応度分析の結果やM&Aアドバイザーの意見を総合的に勘案し、どのM&Aスキームで買い手を探すかを決定します。

このM&Aスキーム方針を大前提としてインフォメーションメモランダムが作られ、デューデリジェンスや価格交渉が行われますので、気軽にはスキームチェンジはできません。自分にとって最良のM&Aスキームは何かをしっかりと考えましょう。

おわりに

今回は、弊社がクライアント様のM&Aスキーム決定をコンサルティングさせていただく際に、実際に行っている手順をご紹介させていただきました。

ちなみに報酬に関してですが、感応度分析は高度な知識と分析力、そして責任が伴いますので、事業規模や会社の内容に応じて相応の報酬をいただいております。手法次第で数千万円規模の差が生じることはありますので、決して高くはないと自負しております。

ただし、一定の条件を満たす場合には、報酬額を大幅にキャッシュバックさせていただくこともございます。詳しくは弊社までお問い合わせください。

弊社をお使いいただくか否かはともかく、M&Aスキームは案件の成立確率、M&A後の事業の成長、そして売り手オーナー様とご家族のM&A後の人生を大きく左右する要素ですので、慎重にご判断されることを強くお勧めいたします。

事業承継M&Aを大成功させる知識と知恵

当サイトでは、事業承継でM&Aを検討している中小企業経営者様向けに、中小企業M&Aの実態と大成功に導くノウハウをご紹介しています。

これをじっくり読んでいただければ、

・M&Aの基本となる知識
・事業承継手段としてのM&Aの検討ポイント
・優秀で最適なM&Aアドバイザーの選び方
・誠実で自社に最適な後継者を見つける方法
・M&A価格を最大化し、節税で財産を残す方法
・失敗リスクを遠ざけるM&Aの進め方

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