M&A(譲渡)

レーマン方式って何?M&A仲介アドバイザーの報酬手数料を徹底解説

M&Aアドバイザー・仲介会社の報酬とレーマン方式

M&Aでは売り手側にも大きな出費が発生します。1つは税金であり、もう1つが仲介会社やファイナンシャルアドバイザーといったM&Aアドバイザーに支払う報酬です。

M&Aアドバイザーの中には、報酬を提示する際に「レーマン方式という業界の標準的な報酬体系です」とか「大手より安い報酬料率です」という人もいます。しかしながら、実際にはM&Aの報酬計算は各社バラバラで、単純比較はできません。営業トークを鵜呑みにせず、「自社の場合はいくらぐらいになるのか?」を確認しながら比較検討しましょう。

そこで今回は、具体的な例を交えつつ、M&Aアドバイザーの報酬体系について解説します。

M&Aアドバイザーのよくある4つの報酬パターン

M&Aアドバイザーの報酬体系でよくお見掛けするのが、以下の4つの報酬パターンです。

  • 成功報酬
  • 着手金
  • 中間時金
  • 月額報酬

成功報酬がないM&Aアドバイザーはおそらくいないと思います(売り手からはもらわないという「仲介会社」は見たことありますが)。

一方で、着手金、中間時金、月額報酬は、すべてまったく頂かないという会社もあれば、着手金と中間時金はあるけど月額報酬はない会社もあるように、各社バラバラの報酬体系となっています。

M&A仲介会社は両手取りの報酬体系

中小企業のM&Aは仲介会社が仕切ることが多いですが、その報酬体系は「両手取り」です。
つまり、売り手と買い手の両方から報酬をもらいます。

M&Aアドバイザーには、「M&A仲介会社」と「ファイナンシャルアドバイザー(FA)」の2種類があります。両者の違いについては。「初めてでも納得!仲介会社とFA、2つのM&Aアドバイザーの違い」をご覧ください。

買い手分に請求される仲介報酬は実質売り手負担

なお、買い手には対象会社に応じて「個々のM&A案件に最大限出せる予算額」というものがあり、仲介会社に支払う報酬額を差し引いた金額が売り手に支払える株式買収額の最大額になります。

つまり、買い手の仲介報酬は、株式売買額の減少という形で実質的に売り手が負担することになります。

ファイナンシャルアドバイザーは片手取りの報酬体系

売り手か買い手の一方の代理人であるファイナンシャルアドバイザー(FA)は、当然ながら「片手取り」です。
つまり、自分のクライアントである売り手か買い手の一方からしか報酬をもらいません。

銀行が仲介会社を紹介したがる理由

銀行や証券会社といった金融系の会社は、金融庁の指導で両手取り形式の報酬体系は禁止されています。片手取りしか選べず、中小企業のM&Aだとなかなか儲かりません。

そのため、自行内にM&A部隊を作るより、仲介会社に案件を紹介して紹介手数料をバックしてもらうほうがオイシイ商売になっています。

銀行はM&Aを最初に相談する相手になりがちですが、上記のビジネス構造に留意しながら相談されることをお勧めします。M&Aの最初の相談相手とそれぞれのビジネスモデルについては「巧みな話術に要注意?株式譲渡M&Aの初期の相談相手とその裏側」という記事にまとめていますので、ぜひご参考にしてください。

M&Aアドバイザーの成功報酬とレーマン方式の計算方法

M&Aアドバイザーの報酬の中で、ダントツに金額が大きいのが成功報酬です。まずは成功報酬について確認しておきましょう。

成功報酬はM&A成立時に発生

成功報酬は、基本的にはM&Aの成立時によって発生します(M&A最終契約時の可能性もあるため、必ず契約書をご確認ください)。

M&Aの成立時とは、株式の売買であれば株式の所有権が実際に移動した日、事業譲渡であれば事業譲渡の効力発生日です。

なお、成功報酬と言ってもM&Aの成功ではありません。思った価格より大幅に値引きされるようなことがあっても、M&Aが成立すれば支払義務が発生します。

つまり、成功報酬の指す成功は、クライアントが本当に目指すべき成功ではない点に要注意です。詳しくは「M&Aで一緒後悔したくないなら追い求めるべき、たった2つの成功軸」をご覧ください。

成功報酬金額の決め方で多い「レーマン方式」とは

M&Aの成功報酬金額は、「レーマン方式」という段階的な料率テーブルにより算出されることが主流となっています。(リーマン方式と呼ぶ方もいますが、同じものです)

レーマン方式では、「報酬基準額」応じて、予め決められた料率テーブルの料率を適用し、報酬額を計算していきます。

レーマン方式の料率テーブルの例

レーマン方式の料率テーブルは、会社ごとに違いますが、ファイナンシャルアドバイザーの世界で昔から主流だった以下の料率テーブルが、M&A仲介会社でもスタンダードになっています。

報酬基準額 料率
5億円以下の部分 5%
5億円超  10億円以下の部分 4%
10億円超  50億円以下の部分 3%
50億円超 100億円以下の部分 2%
100億円超の部分 1%

レーマン方式の適用例

上記の料率テーブルを使って、報酬基準額が13億円の案件のアドバイザー報酬を計算してみましょう。

下図のように、まず13億円を5億円以下部分(5億円)、5~10億円部分(5億円)、10~50億円部分(3億円)に分解し、それぞれの部分に料率テーブルに乗っている料率を掛け算します。最後に掛け算の結果を合計します。レーマン方式によるM&Aアドバイザー成功報酬の計算方法

上図のとおり、報酬基準額13億円に対する計算結果は54百万円であり、これに消費税を上乗せした額が、売り手、買い手の双方に請求されます。

標準的なレーマン方式の早見表

下表は、上述のスタンダードな料率テーブルをベースに、報酬基準額が増減した場合の成功報酬額を計算したものです。消費税増税が予定されてますので、8%と10%を両方記載しています。

レーマン方式によるM&Aアドバイザー成功報酬の早見表

なお、買い手側でも同じ料率テーブルが適用されることが多いため、実質的な売り手の負担は上記のおよそ倍になります。

レーマン方式は「報酬基準額」に注意!

上述のレーマン方式が適用される場合、料率テーブルも重要なのですが、それ以外に報酬基準額にも注意しましょう。「株式が8億円で売れたから税抜37百万円かな?」と思っていると、請求書を見てひっくり返ることになるかもしれません。

主要な4つの報酬基準額

報酬基準額の決め方には、以下の4つのパターンがよく使われています。M&Aアドバイザーによって本当にバラバラなので、契約内容をしっかり確認しましょう。

  1. 株式価値基準
  2. オーナー受取額基準
  3. 企業価値基準
  4. 移動総資産基準

以下では、下図の貸借対照表の会社の株式が8億円で売れた場合に、上記報酬基準の違いによってどれだけ成功報酬に差が出るかを見ていきましょう。(料率テーブルは前掲のスタンダードのものとします)

レーマン方式によるM&Aアドバイザー成功報酬の計算例

レーマン方式の報酬基準額① 株式価値基準

株式価値基準とは、文字通り株式に付けられた価値評価を報酬基準額にする方法です。なお、M&Aの直後に役員退職金を出す場合はその金額を加算するのが一般的です(他の方法も同様)。

M&Aの際に役員退職金支給により節税を図る方法については、「【図解】M&Aで役員退職金を使った節税方法を徹底解説!」をご覧ください。

したがって、設例の場合は8億円が報酬基準額になり(下図)、税抜37百万円がM&Aアドバイザーの成功報酬になります。

M&A成功報酬の例1

レーマン方式の報酬基準額② オーナー受取額基準

オーナー受取額基準は、株式の売買額に役員借入金などの、株主とその親族からの負債を加算した金額を報酬基準額にする方法です。

設例の場合、株式価値8億円に役員借入金1億円が加算され、報酬基準額は9億円(下図)、M&Aアドバイザーの成功報酬は税抜41百万円になります。

M&A成功報酬例2

レーマン方式の報酬基準額③ 企業価値基準

企業価値基準では、株式の売買額に有利子負債(借入金のこと)を加算した金額を報酬基準額とします。

「企業価値」の意味については、「企業価値、事業価値、株式価値・・・M&Aを巡る様々な価値の違い」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

設例の場合、株式価値8億円に、銀行借入金4億円と役員借入金1億円が加算され、報酬基準額は13億円(下図)、M&Aアドバイザーの成功報酬は税抜54百万円になります。

M&A成功報酬例3

レーマン方式の報酬基準④ 移動総資産基準

移動総資産基準では、株式の売買額にすべての負債の合計額を加算した金額を報酬基準額とします。

設例の場合、株式価値8億円に、負債の合計額7億円が加算され、報酬基準額は15億円(下図)、M&Aアドバイザーの成功報酬は税抜60百万円になります。

M&A成功報酬例4

4つの報酬基準と成功報酬額の比較

上記の4つの報酬基準を比較すると、以下のとおりとなります。

基準決定方法 報酬基準額 成功報酬(税抜)
株式価値基準 8億円 37百万円
オーナー受取額基準 9億円 41百万円
企業価値基準 13億円 54百万円
移動総資産基準 15億円 60百万円

同じ「レーマン方式」でもこれだけ差が生じることがあります。M&Aアドバイザーの報酬を比較するときは、料率だけでなく報酬基準も必ず確認しましょう。

成功報酬の最低保証額にも注意!

なお、小規模な案件にもレーマン方式を適用すると、十分な成功報酬が確保できないため、M&Aアドバイザーの多くは最低保証額を設けています。どんなに小さな案件でも、最低1,000万円はいただきますよ、といった計算です。

この最低保証額の金額もアドバイザーによって様々ですので、必ず確認しましょう。

成功報酬以外のM&Aアドバイザー報酬

成功報酬以外の料金を設定しているM&Aアドバイザーは少なくありません。成功報酬の料率が安いからという理由で選んだところ、実は月額報酬がものすごく高かったというのでは意味がありません。必ず全体の報酬体系を確認しましょう。

それぞれのM&Aアドバイザー報酬がどのようなものか以下で解説しましょう。

なお、M&Aプロセスが頭に入っていると理解しやすいでしょう。M&Aプロセスに関しては「自社争奪戦を起こすオークション入札型M&Aプロセスの流れと要点」にまとめていますので、ぜひ併せてご覧ください。

着手金

着手金は、M&Aプロセスの初期段階で請求されるものです。

M&Aでは、初期段階からインフォメーションメモランダムの作成など結構な手間が発生しますが、その後買い手が興味を示してくれる案件かどうかはわかりません。その手数料として、着手金を請求するM&Aアドバイザーはいます。また、オーナーさんの本気度を確認するという意味もあるようです。

インフォメーションメモランダムについては、「M&A売価に3倍差が付くインフォメーションメモランダムの記載内容」をご覧ください。

一方、「仕入」が重要なM&Aでは、オーナーさんに選んでもらうために着手金はいただかないという会社も多くあります。

なお、買い手側には、対象会社の情報を提供する際の「情報提供料」として、着手金が発生することがあります。(他人の会社の情報を提供するだけなのにどうかとは思いますが・・・)

中間時金

M&Aの入札や基本合意書の締結など、M&Aが半ばまで進捗した際に発生する報酬です。

これは成功報酬の内金として発生する場合と、それとは別に発生する場合があります。内金方式の場合は同額が成功報酬発生時に差し引かれますので、必ず確認しておきましょう。

月額報酬(リテーナーフィー)

M&A案件はダラダラと長引くことがあり、そのような状況で人件費を使い続けるというのも難しいところがあります。そのため、月額報酬を請求するM&Aアドバイザーもあります。

月額報酬が発生する期間は、M&Aの検討段階からの場合もあれば、基本合意書が結ばれた後からという場合もあります。この点も注意しましょう。

M&Aアドバイザー報酬の考え方

上記のように、M&Aアドバイザー報酬は、成功報酬の考え方や料率もまるで違えば、成功報酬以外の報酬設定もてんでバラバラです。M&Aアドバイザーと契約する際には、必ずどのような報酬体系なのかしっかりと確認しましょう。

M&Aアドバイザー報酬体系を比較する際のポイント

複数のアドバイザーの報酬体系を比較する際は、仮定のシナリオを複数作って、実際に当てはめてみるのがいいでしょう。

たとえば、株式の売却額が7億円、8億円、9億円と変化したときに、アドバイザーごとに報酬がいくら発生するのか、という比較表を作ってみましょう。M&Aが成立しなかったときの料金も比較します。下表はその例です。

アドバイザー 7億円 8億円 9億円 売却不成立
A社 36百万円 40百万円 44百万円 2百万円
B社 55百万円 58百万円 62百万円 無報酬
C社 40百万円 44百万円 47百万円 4百万円

報酬はM&Aアドバイザー選びの1要素

なお、M&Aアドバイザーの報酬の多寡だけでアドバイザーを選択されることはあまりお勧めしません。

あなたが目指すべきはM&Aそのものではなく、M&Aの結果得たいと思っていた目標が実現することです。M&Aの世界には「ケチと小心者は成功しない」という言葉があります。M&Aではアドバイザー報酬を下げるよりも、M&A後に望ましい事業運営をしてくれる良い相手に高値で売るほうが遥かに重要であり、それをアレンジする信用できるアドバイザーであれば相応のお金を出すべきだと思います。

重要な検討要素であることは間違いないため、今回は記事を独立させて説明させていただきましたが、他の要素も交えながら最適なアドバイザー選びを心がけてください。

M&Aアドバイザーの選び方や検討すべき他の要素については、「死んでも後悔しないM&Aのためのアドバイザー・仲介会社の選び方」にて解説していますので、ぜひご覧ください。

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