この記事に辿り着いた方の中には、M&A業者や地銀の方から「M&Aとかのエキスパート」やら「M&Aナントカ協会認定アドバイザー」的なことが書いてある名刺を受け取り、
この資格って本当に価値があるものなんだろうか・・・?
と少し怪しんでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
その直感は正しく、名刺にそんな資格を書いている時点で、マトモにM&Aを語れる人はいません。
M&Aの世界で優秀なM&Aアドバイザーは、そのようなポッと出の資格なんか誰も持っていません。そして、そんな資格を誇らしげに名刺に書いている人は、ウラで同業者にバカにされているかもしれません。
この記事では、
- M&Aの世界で「資格」にまったく価値がない理由
- 中途半端な資格を持っている人に注意すべき点
- 優秀なM&Aアドバイザーほど資格を名乗っていない理由
- 公認会計士などの専門資格者にも注意すべきこと
について解説していきます。
M&Aはまったく経験のない新規参入組が雨後の筍のように増えているアコギな業界ですので、記事を最後まで読んで、ヘンテコな資格に惑わされないようにしてください。
M&Aの現場では、資格は無価値に等しい
最初に結論から申しますと、実際にM&Aを実施する、取り仕切るという立場においては、資格というものはほとんど無価値です。
というのも、M&AアドバイザリーやM&A仲介サービスで必要なスキルというものは、机の上の勉強で身につくものではありません。
専門知識が必要なこと(財務、税務、法務、労務など)は、それぞれの専門家と連携しながら進めていくべきことであり、(専門家からすれば)基礎知識以上のものは求められません(その基礎知識すら危ないアドバイザーも山ほどいますが)。
もちろんそのレベルの専門知識はないよりあったほうがいいに決まっていますが、M&Aアドバイザーという役割を全うするためには、それより遥かに重要なスキルがあります。
M&Aアドバイザーに本当に求められているスキルは、M&Aを本当の意味で「成功」させるために知恵を絞り、試行錯誤した経験値です。それはM&Aプロセス全体の流れを実感として理解し、トラブルの種を未然に察知し、(FAであれば)クライアントの利益を最大化するために必要な戦略を緻密に練り上げる知恵と言えるでしょう。
そのような「本当のスキル」を認定するような資格がこの世に存在するのであれば別ですが、実際には存在しません。実際の認定試験は、「理論的にはそのとおりだけど、そんなことは誰もやっていない」ようなことばかりが問題として出題されます。
中途半端なM&Aの資格はむしろマイナス!
一生懸命勉強して試験に合格した方々には大変恐縮なのですが、正直申し上げますと、私はこのような「M&A関係の資格」を名刺に記載している人は、あまり信用していません。M&A業界の人の多くが同意見ではないでしょうか。
なぜなら、信頼できるM&Aアドバイザーは、誰一人としてそんな資格を名乗っていないからです。
これは、単に私のサンプリングが少ないだけかもしれません。ただし、M&Aの世界は本当に実力の良し悪しが明確です。M&Aで苦労した経験さえあれば、少し話すだけで、相手が本当にM&Aに精通した人かどうかはすぐにわかります。
その意味で、M&Aの資格を名刺に書いている人は、正直、押しなべて「うーん、この人には大事な顧客を紹介できないな・・・」というレベル感です。
失礼ながら、「ご当地検定レベルの資格を追いかける前に、もっとやることがあるだろう・・・」と思うようなアドバイザーも、少なくありません。
優秀なM&Aアドバイザーほど資格を名乗らない理由
では、なぜ優秀なM&Aアドバイザーは、このような資格を名乗らないのでしょうか。
それは、業界内でバカにされてしまうからでしょう。意味もない資格を誇らしげに掲げるという行為は、それが無意味であることを知っている人からすれば、滑稽と言わざるを得ません。
実際、民間資格というものは、合格率が高すぎても低すぎても資格屋のビジネスになりません。本当にM&A実務に踏み込んだ資格にしてしまうと、合格率が低すぎて誰も受けてくれなくなりますので、理論理屈の表面をなぞったような当たり障りのない試験問題になるのは仕方ないことです。
そのような資格をわざわざ名刺に載せるというのは、実情を知っている人からすれば「私はこの程度の知識・経験しかありません」と宣伝しているようなものですので、仮に資格に合格していても、それは隠しといたほうがいいんじゃないかとすら思います。
公認会計士、税理士、弁護士なども要注意
実際には、何でもできるM&Aアドバイザーというものはほぼ存在しません。M&Aアドバイザーは、優秀な人ほど、以下のような「その道の専門家」の力を借りながら高品質なサービスを提供していきます。
- 公認会計士
- 税理士
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 社会保険労務士
このレベルになれば、M&Aの現場で名乗っても恥ずかしくない資格と言えるでしょう。
ただ、残念ながらこれらの専門資格を持っている人の中でも、中小企業M&Aについて高い知見を持っているのはごく一部です。M&Aを経験している専門家は驚くほど少ないのが実情なのです。
M&A、特に中小企業M&Aについては、理論理屈よりも実務慣行や企業力学、そして何よりも経営者の勘が重要になります。
わかりやすい例がM&Aの「値決め(プライシング)」です。実際の中小企業M&Aの現場では、机の上のお勉強で習う「ファイナンス理論上適正とされる株価」では価格が決まることはまずありません。それよりも、
- 自社を高く評価してくれる買い手に売り込んでいけるか?
- 買い手が欲しくなるような情報を適切に開示できるか?
- 立ち回りで買い手を焦らせ、うまく譲歩を引き出せるか?
といった実務的な駆け引きで価格が決まります。
これは考えていただければ当たり前の話ですが、詳しくは「M&A価格はどう決まる?価格相場の調べ方と高く売る3つのコツ」で解説しています。
このようなM&A実務の本当のところは、M&Aアドバイザーの仕事と同様、M&Aの「成功」のために積んできた経験がモノを言います。したがって、いくら専門資格保有者でも、これまでM&Aにほとんど携わってこなかったのであれば、頼りにはならないと考えましょう。
パートナーは自分の目で決めること!
このように、ファイナンシャルアドバイザー、M&A仲介アドバイザー、各種専門家のいずれも、資格そのものが持っているパワーは驚くほど微力で、何の保証にもなりません。
本当にM&Aを「成功」させたいのであれば、絶対に「資格」や「紹介」を過信してはいけません。大事なのは自分の目で相手を見極め、信頼できる相手なのか、大事な会社を任せられるのかを判断することです。
多くの売り手オーナーさんにとって、M&Aは一生に一回の大勝負であり、すべて自己責任の厳しい闘いです。ぜひ、本当に信頼できるパートナーを慎重に選びましょう。
M&Aアドバイザーの選び方のコツについては、「初心者にオススメなM&A仲介の選び方!大手ランキングや手数料比較」で詳しく解説しています。
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