“宝探し”のような旗艦店の魅力と、荒利率変動の真相を解き明かした事例
今回ご支援させていただいたのは、九州で6店舗の食品スーパーを運営する会社様でした。
お客様は当初、M&Aへの意思はまだ固まっておらず、「まずは勉強だけでもさせていただきたい」というお気持ちで、YouTube動画をご覧になったことをきっかけにスタート戦略講座にお申込みいただきました。M&Aの基礎学習から始め、会社の分析を進めていく中で、少しずつ譲渡に向けた決意を固めていかれました。
この会社様の何よりの魅力は、旗艦店でした。決して巨大な店舗ではないものの、売り場づくりが本当に魅力的で、バイヤーが全国を飛び回って買い付けてきた、大型スーパーではなかなか見られない地域地域の商品がずらりと並んでいます。眺めているだけでも楽しく、まるで宝探しをしているような気分になれるスーパーマーケットでした。
聞けば、アメリカのスーパーマーケットを参考にしながら、亡くなった先代社長がリーダーとなり、社員の皆さんとともに創意工夫を重ねて作り上げた店舗とのこと。この店舗に込められた想いと価値を、余すところなく買い手に伝えることが我々の使命だと感じました。
スーパーマーケットの魅力は、売上高や利益率といった数字だけではなかなか伝わりません。とりわけこの会社様の旗艦店の価値は、実際に売り場を歩いてみて初めて実感できる「ワクワク感」にこそありました。
そこでIMでは、売り場や商品棚、こだわりの商品コーナーなどの写真をふんだんに使い、資料を眺めているだけでもワクワクしてくるような構成を目指しました。買い手の経営者の方に「これはぜひ現地に行って自分の目で見てみたい」と思っていただけることが、この会社の価値を正しく評価していただくための第一歩になると考えたからです。
もちろん写真だけではなく、品揃えのこだわりや売り場づくりの工夫、店舗が生まれた経緯なども丁寧に言葉にし、写真と説明の両面から旗艦店の魅力が伝わるよう心がけました(総ページ数:105ページ)。
この会社様は6店舗のスーパーマーケットを運営していましたが、それぞれの店舗が置かれている状況はまったく異なっていました。
旗艦店は周囲の競合店を圧倒する集客力を持っていた一方で、近隣に競合他社が出店したことで売上を大きく減らしていた店舗や、地代家賃が高く十分な採算が取れていない店舗もあるなど、店舗ごとに濃淡のある状況でした。
これらの店舗の業績を単純に平均してしまうと、「ごく平凡な店舗が6店舗ある会社」に見えてしまいます。しかしそれでは、旗艦店をはじめとする強い店舗の本当の価値が埋もれてしまいます。
そこでIMでは、1店舗ごとに直近の状況を開示できる範囲で丁寧に説明し、極めて高い魅力を持つ数店舗について、買い手に「他ではなかなか手に入らない店舗だ」という希少性を感じていただけるような構成にしました。
なお、店舗別のデータは営業上極めて重要な秘密情報です。どこまで開示すべきかについては、お客様と入念に打ち合わせを重ねたうえで決めています。
財務分析を進める中で気になったのが、会社全体の荒利率が年度によって大きく増減していたことです。荒利率の変動は、買い手に収益の安定性を疑わせる要素になりかねません。理由が曖昧なままでは、価格評価に大きなマイナスとなってしまいます。
そこで、店舗別の販売データをすべてお預かりし、商品構成の変化や商品群ごとの平均荒利率の変化などから、荒利率の変動要因をブレイクダウンして分析していきました。
その結果、旗艦店の改装時に一時的に仮店舗で営業していた期間は、販売が食品や日用品中心となったことで荒利率が大きく低下していたこと、そして改装後は極めて力強く荒利率が上昇していることが明らかになりました。
つまり、荒利率の低下は改装という非常に例外的な事情によるものであり、将来において再現するものではない――。このことを、データの裏付けを持って買い手に説明することができました。
完成したIMを携えて買い手探しに進んだ結果、このスーパーには複数の買い手候補が集まり、お客様の当初のご希望以上の価格で譲渡が成立しました。
出店のために借り入れた借入金が多く残っていたことから、価格に関しては伸びないかもしれないという不安もありました。しかし、旗艦店をはじめとする強い店舗の魅力が伝わったこと、そして将来の業績に対する明るい要素とリスクの両面を買い手企業様にご理解いただけたことで、単純な計算式以上に価格が伸びたものと考えています。
お客様からは「当初の漠然とした理想相手とは違っていたが、結果的には最高のお相手だった」とのお言葉をいただきました。先代社長と社員の皆さんが創意工夫で作り上げてきた店舗の価値が正しく評価され、良いお相手に引き継がれたことを、心から嬉しく思います。