住宅リフォーム × 介護レンタル 一見バラバラな2つの事業をつなぐ強みを解き明かした事例
そのうち2つをまとめて売却したい PROLOGUE
今回ご支援させていただいたのは、関東のある地域で住宅のリフォームや新築を手がける、地域密着型の工務店を営む会社様でした。
この会社様は、住宅リフォームや新築といった工務店事業のほかに、介護用品のレンタル事業など、複数の事業を営んでおり、このうち工務店と介護レンタル事業を事業譲渡のスキームにより売却したいというご意向をお持ちでした。
ところが、この2つの事業には、一見して分かりやすいシナジー効果があるわけではありません。なぜこれらの事業を連携して営んでいるのか、そして2つの事業を一気に手に入れることで買い手にどのようなメリットがあるのかが、すぐには見えづらい状態でした。
事業の組み合わせの意味が伝わらなければ、買い手には「小さな事業の寄せ集め」に映ってしまい、かえって「買いづらい事業」という印象を持たれるおそれがあります。2つの事業を結びつけている理由を解き明かし、それをこの会社ならではの強みとして買い手に伝えることが、我々の使命であると感じました。
そのつながりをヒアリングで紐解く CHAPTER.01
この会社様の分析を行うにあたり、まず取り組んだのは、2つの事業の関係性を丁寧にヒアリングしていくことでした。
お話を伺っていくと、工務店事業の売上の一部は、介護保険の適用を受ける「介護リフォーム」(バリアフリー工事)によって生まれていることが分かりました。そして介護用品のレンタル事業は、この介護リフォームのお客様へのクロスセルとして行っていたものだったのです。
売上の中心はあくまで一般のリフォームでしたが、その一方で介護の領域にも手を広げ、粗利率の高い介護用品レンタルにも進出していた。ここに2つの事業をつなぐ糸口があると考え、さらにビジネスの流れを詳しく伺っていきました。
相見積りなしで選ばれる仕組み CHAPTER.02
ビジネスの流れを詳しく伺ったところ、この会社様の大きな売上の経路が見えてきました。
まず、地域のケアマネジャーを通じて介護リフォームの業務を請け負います。その後も定期的なご連絡やアフターケアなどを通じて、お客様との継続的なリレーションを維持していきます。そうすることで、一般のリフォームや新築工事のニーズが発生したときに、優先的にお声がけいただける関係性が築かれていたのです。
リフォーム業界には悪徳業者も多く、「安くなくても信用できる業者に依頼したい」と考えるお客様が少なくありません。そのため、この会社様は相見積りなしで選んでいただけることが非常に多いというのも大きな特徴でした。
つまり、「介護」というキーワードが集客の中核にあり、そこで築いた信頼によって、一般リフォームや介護用品レンタルといった粗利率の高い業務の競争力が向上している。これこそが、この会社様の大きな強みであり、2つの事業を一体で営む意味でした。
IMでは、この「介護リフォームから一般工事へ」という顧客との関係づくりの流れや、ケアマネジャーとの密な情報共有の取り組みを具体的に示し、2つの事業をまとめて引き継ぐことの価値が買い手に伝わるよう工夫しました。
すべての科目で内訳表を作成 CHAPTER.03
今回は、会社の中から一部の事業だけを切り出して譲渡する事業譲渡を想定スキームとしていました。そのため、譲渡対象となる資産・負債の抽出や、収益・費用のうち対象事業にかかるものの切り分けが極めて重要になります。
ここが曖昧なままでは、買い手は対象事業の本当の収益力を判断できません。また、譲渡の対象に何が含まれ、何が含まれないのかがはっきりしなければ、交渉の段階で思わぬ行き違いを生む原因にもなりかねません。
そこで、帳簿データをすべてお預かりし、すべての科目で内訳表を作成しました。そのうえで、それぞれの取引や残高が譲渡対象の事業に属するのかどうかを分類し、分類に抜け漏れがないかを社長様と入念にチェックしていきました。
こうして積み上げた数字をもとに、IMでは譲渡対象事業だけの実態損益や、譲渡対象となる資産・負債の内容を示し、買い手が対象事業の姿を正確に把握できる資料に仕上げました。IMの総ページ数は55ページとなりました。
希望価格そのままでM&Aが成立 EPILOGUE
この会社様は人口があまり多くない地域を地盤としていたため、ニッチすぎて買い手が見つかるだろうかと心配になったところもありました。
しかし、弊社がご紹介した仲介会社を通じて買い手を探したところ、すぐに有力な買い手候補から手が上がりました。お相手は隣県の中核都市で規模の大きなリフォーム事業を営む会社様で、前述の「介護リフォームから一般リフォームへの集客の流れ」に強い関心を持たれていました。地域では有名な会社様だったこともあり、お客様ご自身も「ぜひこの相手に売りたい」と強いご希望を持たれました。そして最終的に、お客様の希望する価格そのままでM&Aが成立しました。
一見つながりの見えない事業の組み合わせでも、丁寧に紐解いていけば、そこには長年かけて築かれてきた必然性と強みがあります。それを正しく言葉にして買い手に届けることができれば、地域や規模にかかわらず、事業の価値はきちんと評価されるのだと改めて実感した案件でした。