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買い手の買収意図や意欲に不信を感じたら疑うべきM&Aのウラ側

当社ではM&Aの無料相談をさせていただいていますが、買い手候補と交渉中の売り手経営者さんからのご相談もよくいただきます。

この状況の売り手さんからよくある相談として、「買い手さんが、ウチを買うことで何がしたいのかよくわからない」とか「仲介会社は『買い手は買う気満々』と言っているが、本人からはあまり気力を感じない」といったものがあります。

つまり、買い手の買収意図や意欲に対する不信感です。いったい買い手さんは何を考えているんだろう??という疑問を持つ売り手さんは、意外と多いのです。

実は、このようなケースでは、十中八九、間に立っている仲介業者が原因となっています

まぁこういったことは、仲介業者の立場からすれば、あまり悪気はないのかもしれません。ただ、人生でたった1度のM&A、大事な会社の後継者を選び出そうとする売り手経営者からすれば、非常に迷惑な事態と言えます。

今回は、このような買い手の買収意図や意欲に不信感が生じる際に、ウラ側でどんなことが起きているのか、その典型的な背景をご紹介しましょう。また、終盤ではこのようなケースに該当したときに、どのように対応すべきかも解説します。

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売り手が買い手の意図・意欲に不信を感じる典型的なケース

まず、売り手が買い手の購買意図・意欲に不信を感じるとはどのような状況なのか、当社がよくご相談をいただく典型的なケースをご紹介します。

ケース1.あまりシナジーが期待できない買い手

第1のケースとしては、買い手企業と対象会社のシナジー効果がイマイチ見えて来ず、買い手からも明確な青写真が示されないケースです。

M&Aは買い手にとっても大きな決断です。大きな投資とリスクが伴いますので、余程安い買い物でない限り、シナジー効果が期待できない売り案件には手を出さないはずです。それにも関わらず、どうも具体的なシナジーを全然考えていない買い手からラブコールが来るというのは、非常に不思議で不気味さを感じさせるものです。

当社にも、よく「買い手はいい人たちなんだけど、何を考えているのかイマイチわからない・・・」というご相談をいただきます。

ケース2.やる気が感じられないトップ面談

同じように、「トップ面談をしたけれども、本気で買いたいと思っているのかいないのかよくわからない」というケースもあります。

仲介会社づてに、「御社を譲り受けたらこんな施策でシナジーを追求し、地域ナンバーワンに成長させます!」などと威勢のいいことは言っているのに、いざ会ってみればそこまでの気合もやる気も感じられない。なんだか中途採用の申込書類に期待して面接してみたら、全然イメージと違う根暗な奴だったようなガッカリを感じるケースです。

直接会ったら全然ダメなのに、仲介会社を経由したら元気いっぱい。そんな不思議な買い手に困惑されている売り手オーナーも少なくありません。

ケース3.そもそも、買い手から言い出した話のはずなのに・・・

第3のケースは、M&Aの始まりが買い手企業からの熱烈なラブコールからだったにも関わらず、そこまでのやる気が感じられないというものです。

大手企業から「ぜひとも貴社をグループ会社に迎えたい!」というラブコールがあり、あの素晴らしい会社にお声がけいただけるなんて光栄だ!と話を進めてきたものの、どうも相手の感じがおかしい。
やけに態度が大きかったり、こちらの要求を全然受け入れてくれなかったり、逆に失礼な要求も平然としてきたり・・・

仲介業者は、M&Aはビジネスだから仕方ないと言うものの、そんなに横柄なものだろうか・・・と疑問を感じてご相談にいらっしゃる方も大変多いです。

すべてのケースに共通すること

上記3つのケースや、類似する様々なケースにおいて、共通することがあります。

それは、仲介業者が、その買い手候補を妙に強く推奨しているということです。

仕事熱心なのは感心ですが、要するに、ここに事態を冴えないものにしている最大の要因が潜んでいます。次の章で詳しく説明しましょう。

買い手の意図・意欲が怪しいときにウラ側で起きていること

上記3つの事例のように、買い手の買収意図や意欲が疑わしく感じるのは、どういった原因からでしょうか?

その裏側を端的に言えば、「仲介業者が、案件を成立させるため、買い手の反応について嘘や誇張を交えて報告している」ということです。実際に相談をいただいたケースでは、ほぼすべてがコレでした。

仲介業者はなぜそんなことをしてしまうのでしょうか。その理由をご説明しましょう。

仲介業者はM&Aを「成立」させる仕事

M&Aの仲介とは、M&Aを「成立」させる仕事であり、成立によって成功報酬を受け取っています。

成功報酬という名前ですが、M&Aが売り手・買い手双方にとって成功かどうかは関係ありません。売り手が「安い価格で不誠実な買い手に売ってしまった!」と後悔しても、契約書に基づいて「成功報酬」を請求します。

あくまでこういうお仕事ですから、M&A案件は何が何でも成立させようと「努力」してくれます。

売り手は本気の相手と取引がしたい

M&Aを成立させるためには、売り手と買い手に「これは良い取引だ」と思わせることが重要です。むしろ、それだけがポイントと言ってもよく、実際に良い取引かどうかより、両当事者が良い取引だと信じるほうが重要なのです。

さて、多くの売り手経営者は、自分が育てた事業をしっかりと引き継いでくれる買い手に売りたいと考えています。つまり、「やる気満々な買い手」が欲しいのです。

売り手としては、もし「やる気満々な買い手」がすぐに見つけられなければ、多少いい条件を出す買い手がいたとしても、他を当たるでしょう。買い手の意欲というものは、それだけM&Aの成立可否に影響を与えるものです。

だから、嘘や誇張も使いこなす

そのため、仲介業者も最初は「やる気満々な買い手」を探します。それでうまく見つかればいいのですが、そこまでの反応が得られないことも少なくありません。

そんな場合、仲介業者は買い手がさもやる気満々であるかのように嘘・誇張も交えてアピールします。

M&A仲介は「なるべく労力を使わずにM&A案件を成立させる」ことが利益最大化のコツです。若干でも興味関心を持つ買い手候補がいれば、なんとかその買い手でまとめてしまいたいというのは、すべてのM&Aアドバイザーの本音でしょう。

なお、仲介業者が「やる気満々な買い手」を見つけることができない原因には、対象会社の魅力の問題や、仲介業者のネットワークの狭さなど、様々な要因が考えられます。

話自体が最初から嘘ということも

なお、そもそも根本から嘘だったというケースもあります。それは上記3番目の「買い手からの熱烈なラブコールを受けた」という案件です。

このケースをよく調べてみると、買い手は仲介業者から、「売り手からぜひ貴社に売りたいというラブコールがあった」と説明を受けていました。つまり、そもそもM&A話自体が仲介業者の創作だったわけです。

売り手が「買い手さんは口ではどうしても買いたいと言っているのに、なんでこんなに譲歩してくれないんだろう・・・」と思っている反面で、買い手は「売り手さんは口ではぜひ売りたいと言っているのに、どうしてこんなに要求してくるんだろう・・・」と感じていたというわけです。

仲介業者は破談になっても別に困らないが・・・

嘘や誇張で過熱されたM&A案件は、交渉プロセスの進行とともに馬脚が現れ、売り手と買い手の関係はギクシャクしていきます。その結果、高確率で不成立に終わります。

でも、M&A仲介の契約書には、成功報酬はあっても失敗罰金はありません。なので、M&A案件が不成立に終わっても、仲介業者としてはそれまでの労力が無駄になるだけで、特別大きな損失を被ることはありません。成立確率が低いとはいえ、時々は成立して大金が転がり込むことがあるので、成功率が低いことを知りながらも嘘や誇張を重ねる仲介業者は少なくありません。

一方、信頼関係がギクシャクしてM&Aが破談になると、売り手・買い手には一定のダメージが残ります。その後の両者の関係はよそよそしいものになりますし、特に売り手にとっては、大きな虚脱感に襲われることになります。

仲介業者が嘘や誇張でM&Aを過熱させる行為は、時にM&Aの成立を近づける特効薬になることもありますが、それ以上に当事者にとって大きなリスクをもたらします。言ってみれば、医者から何の説明もなくとんでもない劇薬を処方されているようなものです。

意図・意欲に不信感があるときの対処法

もしこの記事をご覧のあなたが、嘘や誇張で過熱されたM&A案件に巻き込まれているのであれば、一度冷静になることを強くおすすめします。

買い手や条件をドライに評価してみよう

「買い手の購買意欲が強い」という間違った情報を頭から排除して、交渉中の買い手が後継者として相応しいのか、提示されている条件は満足できるものなのかどうかを、ドライに考えてみましょう。

買い手がそこまでの購買意欲を持っていない、あるいはM&Aに対して深く考えていないという前提で眺めたとき、人生を懸けてきた事業を譲るに値する相手なのでしょうか? 条件面で妥協しても譲りたい相手なのでしょうか? じっくりと考えてみましょう。

このとき、絶対に仲介業者には相談しないこと。彼らは自分たちに都合の良いことしか絶対に言いません。結論が出るまでは連絡をシャットアウトするぐらいの対応が必要です。

破談にしたときの機会損失について

このようにアドバイスさせていただくと、多くの方が「でもこの条件で買ってくれる相手が今後見つかるかどうかわからないし・・・」と悩まれてしまいます。

確かに、現在交渉中の条件で納得してくれる買い手が他に見つかるかどうかなんてわかりません。それが対象会社の実力値だと考えられるならば、清濁併せ呑む覚悟で案件を進めるのも1つの選択肢です。

ただ、やる気のない買い手が出した条件を上回ることができないというのは、実際にあまりないように思います。嘘や誇張を駆使する仲介業者は、買い手探しのネットワークが狭かったり、対象会社の魅力をうまくアピールできていなかったりで、低めの条件が提示されていることは多いです。

いずれにせよ、提示された条件に大満足でないのであれば、一度セカンドオピニオンを集めることをおすすめします。仲介業者と専任アドバイザリー契約を結んでいても、競合でない相談先であれば相談しても問題ありませんので、ぜひご検討ください。

買い手を断るなら、仲介も切ったほうがよい

今の買い手候補に売るべきか否かをじっくり検討した結果、「否」という結論が出たら、きっぱりと案件の破談を申し出ましょう。仲介が過熱した案件では、買い手企業もまた被害者ですので、グズグズと引き延ばすほうが失礼に当たります。

仲介業者とも、そこで契約を解除したほうがいいでしょう。買い手の反応を大袈裟に言うぐらいならセールマンとしてのテクニックの範囲内かもしれませんが、

  • 買収意欲が強い買い手を見つけることができなかった
  • 興味を持った買い手に対象会社の魅力をアピールしきれなかった
  • それを売り手に見透かされ、無用な不信感を招いている

という時点で、優秀な仲介屋とは言い難いようにも思います。

そもそも、M&Aという人生の一大事に、嘘や誇張を多用する業者のお世話になりたいでしょうか? ご相談にいらっしゃった方の中には、将来M&Aを振りかえってちょっとした不満を感じるたびに、仲介業者に妥協したことを後悔しそうだ、という理由から、契約解除を選択される方も多いです。

不安を感じたなら、一度立ち止まってリセットを

M&Aは、人生を懸けてきた事業を他人に譲り渡すという大きな決断であり、ご自身、ご家族、従業員等の関係者の将来に大きな影響を及ぼします。軽々に妥協し、一生の後悔を誰にも言えずに抱え込んでいる方も少なくありません。

一度きりの人生のたった1回の大勝負です。多少の妥協は仕方ないこともありますが、じっくり思い悩んだ上での妥協でない限り、すべきものではないと思います。

不安を感じた際は、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。その結果、勇気を持ってM&Aをリセットすることも必要な場合があるでしょう。

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