column

徹底解説!会社合併の18種のメリットデメリット

経営者様とお話していると、「合併したほうが事業はうまく行くのではないか?」「合併することでどんな問題が生じるのか」といったご相談を受けることが多くあります。

合併は企業グループの発展にとって大きな転換点になるとともに、失敗により社内外に混乱を招くリスクがあります。合併のメリットとデメリットを把握し、合併することが最善策なのか、株式交換などより適切な手続はないかなど、多面的に検討していきましょう。

合併のメリット

合併することで、様々なメリットが享受できます。例を挙げると以下のようになります。

メリット1.組織的一体感の醸成

2つの会社が合併することによって、法的な意味での組織の垣根が取り払われ、社員が持っていたそれぞれの組織に対する帰属意識が溶け、ひとつのチームとしての一体感が高まります。

適切にマネジメントしないと「〇〇会社出身」という派閥が社内にできてしまいますが、経営者のリーダーシップと工夫次第で劇的に一体感が生まれます。

メリット2.組織のシンプル化

複数の会社をマネジメントすることは大変ですが、これを1つにしてしまうことで全体が見えやすくなります。
組織のスケールを維持したままシンプル化でき、経営管理の難しさを適切にコントロールすることが可能です。

メリット3.シナジー効果の加速

組織的一体感や組織のシンプル化の延長として、シナジー効果(複数事業の相乗効果)が期待できます。

法的な組織の壁は人員やお金の交流を妨げますし、顧客の口座も複数作ってもらわざるをえません。その点、1つの会社にすることで、より一体となった事業展開が可能となり、強いシナジーの現出が期待できます。

メリット4.共通部門の合理化

存続会社と消滅会社の双方に、経理や人事、総務などの部門が存在している場合、合併により統合し、合理化できる場合があります。

メリット5.信用力の増加

合併によって組織規模が大きくなり、財務的な信用が増加します。また、より強い組織のブランドを全社で共有することができます。たとえば、「トヨタの子会社」よりも「トヨタ自動車」のほうが、一般的に信用力が高いといえるでしょう。

メリット6.社員のやる気増進

対外信用力と同じことは、社員のモチベーションにも当てはまります。

同じ仕事内容であっても、大きな企業グループの1子会社より、その中核会社の社員でありたいという人は少なくありません。ただし、小さな組織を求める人もいますので、その点はキーマンとなる人材の思考を考慮する必要があります。

この点は、新規採用においても同じことが言えます。

メリット7.大きな節税効果があることも

合併の税務メリットとして、黒字事業の利益を赤字事業の損失と相殺することで、節税を図ることが可能です。

また、グループ会社が持っている繰越欠損金(過去の累計赤字)を取り込むことができる場合もあります。この点は、合併の仕方を間違えると取り込めない(繰越欠損金が消えてしまう)こともあるので、必ず専門の税理士に確認しましょう。

メリット8.オーナーの相続税対策にもなる?

合併は相続税における株価評価にも大きな影響を与えることが少なくありません。

上述の黒字事業と赤字事業の相殺によって全体の評価額が下がったり、組織規模が変更されることによって計算方法が変わり、税金が安くなることもあります。

ただし、相続税対策のためだけに合併を強行すると、ほとんどの場合失敗します。合併を成功させ、かつ、相続税対策も実現するためには、一工夫が必要になります。

メリット9.資金繰りが容易に

グループ会社であっても、法人間でお金をやりとりすることは簡単ではありません。経営指導料や配当、貸付金などの名目を明確にしなければならず、税が発生することも多くあります。

この点、同じ組織であれば、単なる口座間移動に過ぎないため、機動的な資金繰りが可能になります。

合併のデメリット

上述のとおり多くのメリットのある合併ですが、同時にデメリットも少なくありません。目先のメリットを追って合併した結果、組織・事業がボロボロになっては本末転倒です

合併を実施する前に、デューディリジェンス(事前調査)を通じて以下のようなデメリットの有無を確認し、無視できないものか、工夫次第で回避・軽減できるものか、それとも合併を中止・延期すべきかを慎重に検討しましょう。デューディリジェンスについては「合併成功に不可欠なデューディリジェンスのポイント」をご覧ください。

デメリット1.合併するだけでコストがかかる

合併はどんなに小さな会社同士でもコストが掛かります。また、合併により株主の相続税負担が大幅に増加することもあるため、必ず合併前に税金面を確認・シミュレーションすることをお薦めしますが、このような確認作業にもコストが掛かります。

これらのコストについては「必見!会社合併の成功率を下げずに費用を安くする節約法」も合わせてご覧ください。

デメリット2.とにかくスタートが大変!

社内的には合併によって多くの事務負担、業務フローの見直しが発生します。十分な準備をしないまま合併日を迎えてしまうと、社内は大混乱に陥ります。詳しくは「要注意!3つの合併失敗事例と成功の絶対条件」をご覧ください。

一方、きちんとデューディリジェンスを実施し、十分な準備を行った上で合併することができれば、社内の業務体制はより洗練されたものにグレードアップできます。合併で残る会社も消える会社も、自分たちの業務を見直すよい機会として活用しましょう。

デメリット3.社員の精神的ストレス

合併はどちらかの会社が消滅する手続です。長年勤めてきた社員にとって、これは想像以上の精神的ストレスになります。合併することによって自分たちのビジネスが発展していったり、本人の待遇が改善されるといったメリットを正しく伝え、合併を前向きに捉えられるようにしてあげましょう。

一方、存続する会社の社員にとっても、降って湧いた話で業務量が増えたり、業務担当が曖昧になったりと、ストレスのかかる出来事になります。それぞれの社員が適切に動けるよう、しっかりとした合併スケジュールを組みましょう。

デメリット4.人件費が上昇することも

会社が異なれば給与水準は異なります。合併すると給与テーブルを統合するのが一般的であり、水準の低い側の給与を高い側に合わせることが一般的です。これにより、給与水準が低い事業の人件費が増加することになります。

事業・業務範囲がまったく異なる場合、複数の給与テーブルを併存させることも可能ですが、その分社員の一体感は削がれることになります。

デメリット5.組織が鈍重になるリスク

一般的に組織は大きくなるほど機動力がなくなっていきます。その点では、小規模に小分けされたグループ会社のほうがメリットがある場合もあるでしょう。

一方で、複数の会社の集合体よりも1つの大きな会社のほうが全体を動かす力は強くなります。会社分割と組み合わせることも選択肢に入れながら、適切な組織サイズを考えながら調整していきましょう。

デメリット6.責任の所在が曖昧に?

事業ごとに「会社」として切り分けられていれば、それぞれの会社の社長がその会社の業績に責任を負うことになります。一方、組織の境が曖昧だと、どこまでが各管理職の責任範囲かが曖昧になりやすく、無責任な体制が生まれる可能性があります。

合併に先立って組織図を整理するとともに、部門別管理会計を導入するなどして、最適な組織体制づくりを実施しましょう。

デメリット8.税金面で損することも?!

法人税制は小さな会社に対する優遇措置が多く設定されています。合併することによって組織規模が大きくなり、かえって税負担が増加することもあります。合併に際しては事前に経験豊富な専門の税理士に相談し、税務面のデメリットを理解した上で進めましょう。

税金面のメリットデメリットについては、「合併すると節税できる?赤字会社活用法と注意点」をご覧ください。

デメリット9.相続税も安くなるとは限らない!

合併によって相続税が安くなることもあれば、高くなることもあります。これは実際に計算してみないとわからないことであり、合併前に専門税理士に依頼してシミュレーション計算を行いましょう。ときには想像以上に税負担が増加し、合併を中止せざるをえないこともあります。

「デューディリジェンス」が勝負の分かれ目!

合併は会社にとっての一大事であり、上記のように多面的なメリット・デメリットが考えられます。

これらのメリット・デメリットは常にすべてが発生するとも限りませんし、その程度も会社によって様々です。事前に「デューディリジェンス」と呼ばれる調査をしっかりと行い、当初描いていたメリットは確かに享受できるのかや、大きなトラブルの可能性と対策について明らかにしたうえで、慎重に決断しましょう。

合併のデューデリジェンスについては「合併成功に不可欠なデューディリジェンスのポイント」にまとめていますので、しっかりと読んで準備しましょう。

この記事をシェアする

関連記事

ヨコの分割型分割(人的分割)の意味と適格要件をわかりやすく図解!

1つの会社を2つに分ける「会社分割」には、分割型分割または人的分割と呼ばれるタイプ(俗称:ヨコの会社分割)と、分社型分割または物的分割と呼ばれるタイプ(俗称:タテの会社分割)があります。 どちらの会社分割も、企業グループの再編やM&Aなど幅広い場面で活用されていますが、タテの分社型分割に比べてヨコの分割型分割は概念が少々難しく、しかも一歩間違えると多額の税金が発生して破産しかねないという、少々危…

株式交換を合併と比較したときのメリットデメリット10選

株式交換は、他社を確実に完全子会社にできる、経営統合やグループ内再編の有効な手段です。 その有効性は「法人組織がそれぞれ残る」ことです。少々変な言い回しになりますが、合併よりも非暴力的と言えると考えています。実際にやってみるとよくわかるのですが、合併は結構「暴力的」な手段であり、慎重に実施しないと多くの混乱と軋轢をもたらします。その点、株式交換はだいぶ緩和できるのです。 具体的にどういうことでしょ…

【図解】ゼロからわかる株式交換の超基礎知識

株式交換とは、会社が、他の会社の株式をすべて取得し、その代わりに自社の株式を他社の株主に交付する会社法上の組織再編手続きです。これにより、他社を100%子会社にすることができます。 以上のように説明しても、何がなんだかよくわからないと思いますので、このページでは株式交換の流れについて図解で説明します。 株式交換は大手・中小を問わず採用事例が費用に多いスキームです。しっかりと理解しておきましょう。 (さら…

即日?数カ月?会社分割の最低所要期間と推奨期間

会社分割は厳重な法務手続によって法的に成立しますので、少なからぬ期間が必要になることが一般的です。 「M&Aの日程に合わせて分割しなきゃいけなかったけど、うっかりしていて全体の日程が遅れてしまった!」ということのないように、しっかり所要期間を確認しておきましょう。 (さらに…)

意外と単純!分割対価と株主構成の考え方と決め方

会社分割では、分割元会社(分割会社)の事業が分割先会社(吸収分割承継会社)や分割新会社(新設分割承継会社)に移転します。この際、分割元会社やその株主は、事業を切り出す「分割対価」を分割先の会社か受け取ることになります。 この分割対価は、金銭の場合もあれば株式の場合もあります。株式の場合、何株発行するかは分割後の会社経営に大きな影響を与えるため、非常に重要な論点です。 今回は、この株式による分割対価…

大きく4つ!これだけは知っておきたい会社分割の法務手続

会社分割は法人が分裂するイベントであり、権利義務関係が優良な事業から切り離されることもあります。したがって、かなり厳格な法務手続を経て成立します。 具体的にどのような法務手続があるのでしょうか。一般的な例を元に全体の手続を見ていきましょう。 (さらに…)