抽象的な「技術・品質・開発力」の 正体を解明した事例
今回ご支援したのは、私たちが日々の生活のなかで一度は手にしたことがある“誰もが知る最終完成品”に使われる、とある精密部品を製造されている会社様でした。
完成品は有名でも、その中で使われる部品はどうしても光に当たりにくい。だからこそ、買い手候補の方々に適切に価値を理解していただくには、インフォメーションメモランダム(IM)の中で「機能」や「技術」をより具体的に言語化する必要がありました。
最初に強みを伺ったとき、お客様から返ってきた言葉は「技術・品質・開発力」でした。
もちろん重要な言葉なのですが、正直なところ、その時点では“何がどう凄いのか”がまだ霧の中にあるような感覚でした。
IMは、単に上辺だけの良い言葉を並べる資料ではありません。買い手候補にとって納得できる形で、「なぜ強いのか」「何が再現性のある経営資源なのか」を具体に落とし込まなければ伝わりません。ここが、工夫のしどころでした。
何度もヒアリングを重ねていく中で、「開発力」の中身が少しずつ立体的になっていきました。
-
開発力といっても単に商品設計をするだけではなく、金型まで自社で設計している
-
装置はそれぞれ異なる業者から仕入れた外製の各部材を組み合わせ、品質安定性を高い次元で維持できる“完全オリジナル”の装置を作り上げている
-
その結果、顧客である完成品メーカーが対象会社の部品を採用したことで、大ヒット商品につながった
一つひとつが「強み」という言葉の裏付けになっていて、話を聞けば聞くほど、こちらの作り手である弊社側としてもわくわくした気持ちが湧いてくる感覚がありました。
印象的だったのは、お客様ご自身がそれらを“すごいこと”として捉えていなかった点です。
毎日その部品を作っていると、どうしても「できて当たり前」になってしまう。だからこそ、最初はその話が全く出てきませんでした。
でも、第三者の視点で見れば、思わず「これは強い武器だ」と感じずにはいられない内容でした。IMづくりとは、こうした“当たり前の中に埋もれた価値”を第三者視点で拾い上げ、伝わる言葉と構造に翻訳していく作業なのだと、改めて実感しました。
現地の工場も見学させていただき、現場の空気感や工程の考え方、品質を支える工夫を直接拝見しました。
そこで得られた実感が、これまで伺ってきた話と結びつき、「点」だった情報が「線」になっていく感覚がありました。
そうして確認できた素晴らしい点を一つずつ整理し、買い手候補が理解しやすい順序と表現に落とし込みながら、IMにまとめていきました。
IMを通じて魅力が適切に伝わった結果、複数の買い手候補に手を挙げていただきました。
そして最終的には、売主様の希望条件を叶える形で売却に至りました。
「目立たない部品」だからこそ、価値を伝えるには丁寧な翻訳が必要でした。試行錯誤の連続でしたが、最後にご成約という形で実を結んだとき、私たちも胸が熱くなる思いでした。