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M&A(譲渡)

M&Aマッチングの近年の本質的変化と最高の後継者に会う3つのコツ

M&Aマッチング

「中小企業M&Aの成功の秘訣は、M&Aマッチングにこそある」と言っても過言ではありません。

売り手は単にお金がほしいだけではなく、信頼できる相手に納得できる形で事業を引き継いでほしいと考えています。したがって、信頼できない相手や、納得できない事業運営を考えている相手には、たとえ高値で売れるとしても売ろうとは思いません。

さて、このようなM&Aの最重要ポイントともいえる「M&Aマッチング」を成功させるためには、何が必要だと思いますか?

もしあなたの答えが、「運」や「大量の買い手と出会うこと」であるならば、それは本当のM&Aマッチングに辿り着いていません。いや、「ひと昔前はその通りだったけれど、今は違う」と言ったほうがいいかもしれません。

もしあなたがM&Aを本気で成功させたいなら、あるいは運やインスピレーションに頼らず確実に良い相手とめぐり会いたいなら、「M&Aマッチングとは何か?」についてしっかりと理解しておきましょう。なぜなら、その答えはM&Aを成功に導くためには不可欠の概念であり、M&Aプロセス全体にわたって、非常に重要な意味を持つからです。

正しいM&Aマッチングとは

日本の中小企業M&Aの歴史は深いものではありませんが、だからこそ、今も大きな変化が起こっています。それは、M&Aを成功させるために、真摯に真剣に取り組んできた先人たちの知恵の蓄積でもあります。

数年前の常識がガラリと変わることもあるM&Aの世界で成功を掴むためには、M&Aマッチングというものが、本質的にはどのような役割を持っているのか、言い換えれば「M&Aマッチングの普遍的な意味」を考えることから始めましょう。

M&Aマッチングの意味

M&Aマッチングを実際に生業にしているM&A仲介アドバイザーにすら、M&Aマッチングとは何かをあまり真剣に考えていない人もいます。「お見合い」という表現をする仲介アドバイザーも結構おり、「まぁあなたの立場からするとそんなもんかもしれないけどさ」と溜息がです。

M&Aマッチングを一番シンプルに説明すると、以下のようになるでしょう。

M&A対象会社を売りたいという人と買いたいという人が出会うこと(出会わせること)

この解釈が間違っているというわけではないのですが、これでは不十分です。どうやって出会うかという「過程」が具体的ではなく、さらにM&Aが成功なのかどうかという「結果」も不明なまま、ただ「出会う」という事実だけを強調したものです。

そこで、弊社ではM&Aマッチングを以下のように定義しています。

M&Aマッチングとは、売り手がM&Aの成功のために、自身が満足できる対象会社の経営方針を描く買い手を選び出すこと

上述との意味の違いは明白です。まず、M&Aは売り手がM&Aの成功を目指して主体的に行動すること、そして、買い手企業に対象会社を吟味させ、その結果生み出された経営方針を軸に売るべき相手かを判断することです。この成長戦略は「会社の未来図」と言ってもいいでしょう。

M&Aマッチングを単なる「出会い」や「お見合い」の場と捉えているだけであれば、ひたすら多くの買い手候補を集め、入札額が高くてウマの合う相手を探せばよいという発想に陥ります。実際、多くの売り手オーナーさんが仲介アドバイザーの勧めるまま、まったく関係のない業種にも声を掛けてみたり、Webやメール配信で不特定多数にノンネームシートを公開しています。今のM&A市場では、そのような発想はかえって選択肢を狭めるにも関わらず、です。

一方、弊社の定義のようにM&Aの成功を軸に考えていれば、売り手自らが、買い手を後継者としてふさわしいか吟味しようという発想になるはずです。買い手候補が後継者としてふさわしいかどうかを判断するためには、それぞれの買い手候補がどんな未来図を描いているかを判断の主軸にするのは当然のことです。

当然、後者の発想でM&Aマッチングを捉えたほうが、売り手にとってM&Aの成功率は大幅に上がります。

そしてこの事実は、買い手企業にとっても同じことです。中小企業M&Aでは、売り手が真剣に成功を目指すことによって、買い手の成功率も上がります。これは決して理想論ではなく、買い手が中小企業M&Aで蓄積してきたノウハウの結果得られた現実的な結論なのです。

以下で詳しく説明していきましょう。

フェイスマッチングM&Aの隆盛とその限界

M&Aマッチングを単なる「出会いの場」として捉え、大量の買い手候補から相性の良い相手を探すM&Aマッチング方法を「フェイスマッチングM&A」といいます。中小企業M&Aの黎明期から比較的最近まで、このフェイスマッチングM&Aが主流でした。

買えば儲かると思われていた時代

企業買収自体は昔からありますが、日本における中小企業M&Aの最初の成長期は2000年代に入ってからです。

このころ、多くの企業が低成長時代の手堅い投資先として、中小企業の買収に興味を持ち始めました。法改正の後押しもあり、ちょっとしたM&Aブームが起きています。

しかし、当時の買い手企業の多くは、株主に対する余剰資金対策の意味でM&Aを捉えていたところもあり、意識面でも技術面でもM&Aの素人でした。企業買収を成功させるためには、どんな意識を持ち、具体的に何をすればいいのか、まったくわかっていなかったのです。

むしろ、当時の買い手企業の多くが、「儲かっている会社を適正な価格で買えば、何もしなくても自然と儲かる」と本気で考えていました。

そのため、買い手企業は決算書の数値だけで入札額を決め、M&A後の事業計画もシナジー計画もなく買収を行っていました。M&A成立後は親会社の役員が名義上の社長となり、実際の現場管理は下っ端が派遣されて親会社の指導を受けながら取り仕切るという仕組みでした。

中小企業経営者であれば、そのようなやり方で中小企業が引き継げるのだろうかと疑問に思うでしょう。実際、うまく引き継げないケースの方が圧倒的に多数であり、事業を停滞させて億単位の損失を計上することになります。トーマツコンサルティングが2007年に行ったアンケート調査では、M&Aが成功したと回答した企業は、わずか29%しかなかったとのことです(松本英夫『ポストM&A成功戦略』)。以下は当時出版された書籍の記述です。

多くの(買い手)企業は、このPMM(M&A後の事業引継ぎ)を体系化された「仕組み」としては捉えていないため、事前準備が十分でないまま個別議論に突入してしまい、次々と出てくる経営統合上の課題に対し事後的に対応せざるを得ず、結果として必要以上に時間を要し、当初期待していた経営統合の目的を達成できずにいるケースがよく見られます。

北地達明他『M&A実務のすべて』より。カッコ内は引用者追記

売り手の選択肢とフェイスマッチングM&A

このような、M&A前に対象会社をじっくり分析したり、シナジー効果について真剣に検討したりしない買い手企業が大量にいた時代ですので、仲介アドバイザーが提供するM&Aマッチングサービスもそれに合わせたものでした。

この時代では、買い手がろくに対象会社を検討していないので、入札はどこも同じような金額、M&A後の事業方針もどこも同じような内容でした。つまり売り手にとって、表面的な情報だけで判断するならば「誰に売っても同じ」という結論だったのです。

そのため、買い手選びの主要な判断基準は「買い手企業の社会的信用力」と「買い手経営者とウマが合うかどうか」程度しかありません。その中でM&Aの成功率を高めようと思えば、当然「買い手候補は大量にいたほうがいい」という結論に至ります。

したがって、M&Aマッチングを委託された仲介アドバイザーの仕事は、「いかに対象会社に興味を示す買い手候補の頭数を増やすか?」でした。とにかく出会いの場を増やすフェイスマッチングM&Aは、M&A市場が未成熟であったからこそ求められたM&Aマッチング手法でした。

失敗から生み出されたニーズマッチングM&Aの隆盛

2000年代は上記のようなフェイスマッチングM&Aが主流でしたが、徐々に、現状の問題点に気付き始める買い手企業が現れ、マッチングプロセスの変化が始まっていきます。

フェイスマッチングM&Aの誤りに気付き始めた買い手企業

2000年代後半から、一部のM&Aに熱心な買い手企業が、失敗を通じて「儲かっている会社を適正な価格で買えば、何もしなくても自然と儲かる」という幻想の誤りに気付き始めます。
そして、リーマンショックや震災後の不況を経験した2010年代前半には、すでにほとんどの買い手企業の共通認識になっていきました。具体的には以下のような考えです。

  • 単に良い会社より、自社の戦略ニーズにマッチした会社を買う必要がある
  • M&A価格に適正価格は存在しない
  • シナジーを追求しなければM&Aの意味はない
  • 買い手にとってM&Aの本番は買う前ではなく買った後である
  • 中小企業ほどM&A後に全社を挙げてフォローアップしなければならない

では、上記のように、自社の戦略ニーズにマッチし、シナジー効果を上げるM&Aを実現するにはどうすればよいでしょうか? 買い手企業が失敗の中から学び出した答えは以下の2つです。

  • 自社の戦略ニーズにマッチする会社かどうか、徹底的に調査分析する
  • 調査分析結果をもとに、M&A成立前から、M&A後の成長戦略を描く

つまり、M&A後に何をするかを、M&A前に徹底的に吟味してから買収可否を判断するようになりました。今、M&Aに真剣に取り組んでいる買い手企業は、M&A後に対象会社をどのように発展させていけるかを見定めてから、買収判断を行っています。

以下はそんな買い手のM&A戦略の変化を物語る、最近出版された書籍からの引用です。

そのようななかでは、M&Aの成功確度をどうやって高めていくのかが重要となります。単にM&Aをやればよいのではなくて、M&Aの質をどうやって高めていくのか、企業グループの企業価値を本当に高めていけるM&Aをどのように実施していくのかが重要な課題になってきています。いわば、賢くM&Aをやることが求められる時代になったのです。

森・濱田松本法律事務所編『変わるM&A』

フェイスマッチングM&AからニーズマッチングM&Aへ

買い手企業がM&A前に、徹底的にM&A対象会社の調査分析を行うことになったため、売り手に要求される情報開示は、従来に比べて質と量の両面で各段に高水準なものになります。もしこの情報開示要求に十分応えられない場合、入札から降りられてしまうか、大幅に安い価格でしか評価してもらえません。

ただひたすら買い手候補を集めてくるフェイスマッチングM&Aでは、このような要求に対応しきれなくなっています。これからのM&Aは頭数を揃えることではなく、買い手が納得するまで対象会社の情報を提供し、対象会社の「未来図」が示されるほど吟味させなければ、好条件での成立はありません。

このような新しい時代のM&Aマッチング手法を「ニーズマッチングM&A」と言います。この変化は加速することがあっても逆戻りすることは絶対にありません。フェイスマッチングM&Aでは、余程運が良くない限り、もはやM&Aの成功は望めない時代なのです。

ニーズマッチングM&Aは売り手にとってもメリットが大きい

売り手にとって大変な時代だと感じるかもしれませんが、ニーズマッチングM&Aの売り手のメリットは、フェイスマッチングM&Aとは比較にならないほど大きなものです。

まず、売り手オーナーが後継者を選ぶ際の判断材料が飛躍的に高度化します。フェイスマッチングM&Aでは、会社の信用力や経営者との相性ぐらいしか判断材料がありませんでした。これに対してニーズマッチングM&Aでは、買い手候補がすでに対象会社の「未来図」を検討し具体化しているため、売り手オーナーとしては各社が描いてきた未来図を比較し、もっとも自分の意に適った未来図を持ってきた会社を選べばよいのです。

また、入札額も、フェイスマッチングM&Aのように各社横並びの「適正価格」ではなく、シナジー効果を織り込んだ、競争に勝つための金額が入札されます。「適正価格」よりもはるかに高値になることも珍しくはありません。

そして、対象会社との相性が良い買い手企業ほど、高値の入札が出しやすくなります。高値を出すためには高いシナジー期待が不可欠ですが、事業や組織文化の相性が良いほど、効果も確度も高いシナジー効果が期待できるからです。

このように、買い手の要望する情報公開に対応することさえできれば、売り手にとっても買い手にとても、M&Aの成功確率が劇的に跳ね上がります。これがニーズマッチングM&Aであり、売り手、買い手双方にとって望ましい時代になってきているということです。

ニーズマッチングM&Aを成功させるために今あなたに求められていること

ニーズマッチングM&Aの時代に売り手が求められていることは至ってシンプルです。それは、各買い手候補に必要な情報を提供し、対象会社の『未来図』を描いてもらうこと。M&Aプロセスのあらゆる場面でこれを徹底することが、ニーズマッチングM&Aを成功させるための王道であると言えます。

ただし、あなた一人では貫徹することは困難でしょう。M&Aの世界は初心者が1人で後悔なく売り抜けるほど甘くはありません。しかし安心してください。M&Aの世界には、M&Aアドバイザーやコンサルタントなど、あなたのM&Aの成功を力強くサポートしてくれる優秀な人材が溢れています。

ただ、残念ながら全然優秀じゃない人材もまた溢れているのが現実です。そのため、相手の能力をしっかりと見極め、本当に優秀な人を選別していかなければなりません。選別のもっとも重要な基準は、「ニーズマッチングM&Aの発想を持っているか、それともフェイスマッチングM&Aしかできない人か」です。

ニーズマッチングM&Aで成功するための3つのポイント

では、このようなニーズマッチングM&Aの時代において、売り手オーナーは何を意識して行動していくべきでしょうか。

ニーズマッチングM&Aを成功に導くためには、以下の3つのポイントについて、M&Aプロセスの始まりから終わりまで、首尾一貫して徹底し続けることが重要です。

  1. 低レベルな業者に騙されないための『知識武装』
  2. 自分が本当に求めるM&A像を整理し追求する『成功定義』
  3. 買い手に未来図を書いてもらうための『情報開示』

この3つを常に忘れず、あらゆる場面で意識してM&Aプロセスを進めていくことが、ニーズマッチングM&Aの成功の王道です。以下、それぞれの内容を確認していきましょう。

ポイント1.低レベルな業者に騙されないための『知識武装』

大変残念なことではありますが、M&AアドバイザーをはじめとしたM&A業界に出入りする業者の中には、まったく信頼するに値しない低レベルな業者が少なくありません。これは大手でも例外ではなく、フェイスマッチングM&Aで成長してきた仲介会社が時代の変化に対応できていない例も見受けられます。

このような低レベルな業者に騙されないためには、売り手オーナー自らがM&Aを勉強し、知識で武装する以外に防衛策はありません。

当サイトでは、売り手オーナー様向けに、M&Aの知識と知恵を公開しています。ぜひご参考になさってください。

事業承継でM&Aを大成功させるための知識と知恵のすべて

ポイント2.自分が本当に求めるM&A像を整理し追求する『成功定義』

成功定義とは、自分がどんなM&Aを実現したいのか、つまり自身にとってのM&Aの成功とは何かを定義することです。

M&Aの成功を定義することは、M&Aのゴールを定めるということです。これはM&Aプロセスにおけるすべての判断基準になりますので、M&Aプロセスの開始前には実施しておく必要があります。M&Aの成功定義の方法については、以下の記事をご参考にしてください。

これがM&Aの第一歩!【M&Aの成功定義】の7つのステップ

なお、単に最初に成功を定義しただけでは意味がありません。M&Aの進捗に合わせて、今自分がゴールに向かってきちんと進んでいるかを確認したり、成功定義の内容を修正していく必要があります。

ポイント3.買い手に未来図を描いてもらうための『情報開示』

ニーズマッチングM&Aにおいて、買い手に適切な情報を開示することは最重要なことです。

買い手は入手した情報を元に対象会社の「未来図」を描きます。コアな情報が多ければ確度の高い具体的な未来図を売り手に示し、さらに価格にも反映させやすくなりますが、情報が少ないとフェイスマッチングM&Aのようなチープな未来図と、将来に対する不安感を反映した低い価格しか提示できません。

なお、情報開示はM&Aプロセス全体を通じて重要ですが、その中でも特に重要になるタイミングが入札前です。その理由については以下の記事をご確認ください。

最高の後継者が争奪戦を起こしてくれるM&Aの【情報開示の5原則】

3つのポイントは首尾一貫して意識し続けること

上記3つのポイントは、M&Aプロセスの始まりから終わりまで、常に意識し続ける必要があります。どれか1つでもないがしろにした瞬間、M&Aはあらぬ方向に漂流するものと考えましょう。

これは簡単なことではありません。M&Aが完了するまでの期間、つまり半年から9カ月程度は、上記3つのポイントを忘れず、労を惜しまずに続けなければいけません。

しかし、その見返りは計り知れません。あなたの会社を本当に心から評価してくれる会社と出会い、M&Aによって最高の結果を得ることができるのです。

おわりに.最高のM&Aマッチングとは

かつて主流だったフェイスマッチングM&Aの役割は終焉を迎えました。今やニーズマッチングM&AでなければM&Aの成功は掴めないと考えたほうがいいでしょう。

ニーズマッチングのニーズとは、売り手と買い手の双方がM&Aに期待する要望のことです。適切なマッチングによって、売り手は財産と同時に事業の望ましい将来が得られ、買い手は自社グループの経営戦略において必要な経営資源=対象会社を得ることができます。双方がwin-winでなければならないため、その選別、確認作業に手間がかかるのです。

しかし、M&Aとは買い手にとっては何億円、何十億円と言う大規模投資であり、売り手にとっては人生を懸けて育ててきた会社を他人に託すプライスレスの取引です。フェイスマッチングM&Aのように、買い手は「儲かっているから」という理由で買収し、売り手は「相性がいいから」という理由で売却してしまう時代のほうが、どうかしていたのでしょう。

M&Aマッチングは今後、ニーズマッチングの時代からさらに発展があるかもしれません。しかし、買い手がしっかりと対象会社を吟味し、売り手が買い手を吟味するという構図は、強まることがあっても弱まることは絶対にありません。

ニーズマッチングM&Aを追求することが、今売り手オーナーにできる最良のM&A戦略なのです。

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


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