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M&A(譲渡)

のれんとは何か? M&Aでしか得られないプレミアムの正体

    のれんとは何か?

    M&Aでは「のれん」という言葉が必須ワードとして飛び交います。のれんを知らずしてM&Aは到底語れません。

    そのため、M&Aに関係する人、関係したことがある人は、みんなのれんというものが何かを「なんとなく」知っています。しかし、のれんが本当に何なのかについてちゃんと語れる人は意外と少ないです。

    そこで今回は、のれんというものが何なのか、じっくり考えてみましょう。これは「会社の価値」「事業の価値」というものの本質ですので、本記事をしっかり読むことでM&Aの本質的な理解が劇的に深まるはずです。

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    のれんとは何のことを指しているのか

    まず、のれんとは何のことを指し示した言葉なのかを確認しましょう。

    厳密な定義ではなく、「何のことを言っているのか」を先にイメージしたほうが、理解しやすいからです。

    のれんとは「会社(事業)のプレミアム」を表現した言葉

    のれんを端的に表現すると「会社(事業)が持っているプレミアム価値」です。では、プレミアムとは何でしょうか。

    一般的な商品におけるプレミアム

    たとえば某ブランドの女性向けバッグは、良いもので100万円以上の値段で売られています。

    とはいえ、別に宝石が散りばめられているようなものではありません。もちろん素材や縫製技術は通常のバッグとは比べ物になりませんが、モノとして価値はせいぜい数万円の差です。

    ブランドバッグの価格が150万円、製造コスト・流通コストが10万円とした場合、差額の140万円は何の価格なのでしょうか。これが、プレミアムというものです。

    会社(事業)おけるプレミアム

    上記のようなプレミアムは、会社(事業)においても顕著に現れます。

    会社の持っている資産から負債を差し引いた額「純資産」が、「会社の持ち物の価値」を示します。言ってみれば、純資産額が「会社の製造コスト」です(下図)。

    純資産は会社の持ち物の価値

    しかし、会社の価値(=株式の価値)は、往々にしてそれよりも高くなります。これは、単に製造コストが値上がりした(資産に含み益がある)というだけではなく、会社の製造コストを上回る価値がその会社に存在するからです。

    この差額(プレミアム)を「のれん」といいます(下図)。

    のれんとはプレミアム部分である

    なぜ「のれん」と呼ばれるのか

    ちなみに、この会社(事業)のプレミアムのことを「のれん」と呼ぶのは、「暖簾分け」という言葉から来ているものだと思われます。

    「暖簾分け」とは、商人や職人が弟子に屋号を名乗ることを許可することです。現代でもラーメン屋などは暖簾分けが行われています。

    弟子はなぜ師匠の暖簾がほしいかというと、その暖簾には師匠たちが作り上げてきた信用力、商流、知名度、ノウハウといった無形の財産が詰まっているため、同じ暖簾を使ったほうが商売がしやすいからです。

    M&Aはまさにこの発想で、先人たちが時間をかけて作り上げてきた無形の財産を、大金を使って買い取る行為に他なりません。

    プレミアムはどこから生まれるのか

    上記のように、のれんは会社(事業)が持っているプレミアム価値ですが、その正体は一体何なのでしょうか。のれんはどこから生まれてくるものなのでしょうか。次はそれを考えてみましょう。

    プレミアムの正体は分析しきれない

    ブランドバッグの例に戻りますが、140万円のプレミアムはどこから生まれるのでしょうか。一番の価値構成要素は「ブランドイメージ」ですが、それをもう少し掘り下げてみましょう。

    たとえば以下のような概念がプレミアムを構成していると思われます。

    • ブランドに対する信頼感、安心感
    • 高級品への憧れ
    • 「このブランドを持っている自分」の満足感
    • 周囲から羨ましがられることの優越感

    また、直接的なブランドイメージではないですが、以下のような概念も市場価格を引き上げる重要な要素になっているでしょう。

    • 限定品の希少性
    • いずれ高く転売できるという期待感
    • いつでも現金化できる安心感

    このように、物の価格というのは買う人の心の主観によって大きく変わります。上記を高く評価する人は高値でも買いますし、評価しない人はバッグのモノとしての価値しか出しません。

    そして、上記のプレミアムの構成要素のうち、どの要素がいくらの価格上昇効果をもたらしているかは分析できません。全部一体となったボヤッとした価値がそこにはあります。

    確かに存在し、現実的に価格を引き上げているにも関わらず、何だかよくわからないもの。それがプレミアムというものです。

    のれんの正体とは

    M&Aのプレミアム、すなわちのれんも同様で、確かに存在するのですが、その内容はケースバイケースです。

    のれんの構成要素としては以下のようなものがあります。

    のれんの構成要素1.ブランド・知名度

    ブランド力の獲得を目的としたM&Aは多数行われていますが、これは金額的に評価することが非常に難しく、買い手が主観的に感じている期待感だけで価格が付けられます。

    のれんの構成要素2.ノウハウ

    会社が持つノウハウを買い取るためには、従業員を根こそぎ引き抜くか、M&Aしかありません。そのため、ノウハウを奪い合うことでM&A価格が高くなることは少なくありません。

    のれんの構成要素3.企業文化・社風

    企業文化や社風といったものは、1から再現することはほぼ不可能です。キーパーソンの引き抜きでもコピーできることはありますが、一番確実な方法はM&Aです。

    のれんの構成要素4.商流や物流

    有力な仕入先や大手得意先との商流を作るのは簡単ではありません。また、それを支える物流網も生み出すのは非常に大変です。

    のれんの構成要素5.業歴・信用・DNA

    対象会社の業歴や、そこから生み出される信用力、そしてストーリーとして引き継がれるDNAといったものは、ビジネスにおいて非常に重要な差別化要因となります。これらをコピーすることは不可能であり、M&A以外に入手する方法はありません。

    のれんの構成要素6.希少性

    希少性はM&A価格を引き上げる極めて重大な要素です。希少な会社であればあるほど、それを評価する買い手にとっては「絶対に逃せない案件」という位置づけになります。

    のれんの構成要素7.権利関係・既得権益

    権利関係や既得権益は、ライバルとの競争をそもそも排除してしまいますので、M&A価格を引き上げる要素になります。また、政府・行政の規制が入り、M&Aによらなければ参入できない業界になると、M&A価格は突如として高騰します。

    のれんの構成要素8.シナジー効果への期待

    売上やコストなどに対してシナジー効果が期待されている場合は、これがのれんを構成することがあります。

    シナジー効果が価格に反映される仕組みについては「実務ですぐに使えるシナジー効果の分類とM&A価格に織り込む技術」をご覧ください。

    のれんの構成要素9.その他

    上記以外にも、従業員の数や立地、同じビジネスを再構築する時間などがM&A価格を引き上げることがあり、それものれんを構成します。

    のれんの構成要素は金額測定できない

    上記のようなのれんの構成要素ですが、ブランド品と同様、それぞれの構成要素にどれだけ価値があるかを測定することはできません。

    上記はいずれも、買い手の心の中の主観です。買い手がそれぞれにどれだけ価値を感じるかが重要であって、それそのものに収益力があるかは関係ありません。

    だからこそ、M&A価格は理論上の株価を大きく超えることがあります。M&Aの価格決定過程において、DCF法やマルチプル法といった「理論上適正な株価評価」は、参考情報以上の意味はないのです。

    実際、中小偉業M&Aで理論上適正な株価評価が値決めに使われることはほぼありません。中小企業M&Aで使われている値決め基準については「DCFなんて嘘?M&Aの入札で買主が本当に使う3つの株式値決め法」をご参照ください。

    結局、のれんとは何なのか

    上記の結論として、のれんとは何なのかを一言で言えば、

    会社(事業)のプレミアムとして買い手に評価された価値が、ごちゃまぜになったもの

    という結論になります。

    あくまでも買い手(あるいは市場)が会社を主観的に評価し、その結果としてのれんがあります。それが何の価値かというのは、実は値段を付けている買い手もよくわかっていません。それでもそこに高値を出しても欲しい何かがあるから、プレミアム価値が生じているのです。

    のれんは確かに存在し、確かに価格を上昇させています。そのため、のれんはM&Aの本質的な部分であると言えるでしょう。

    会社を高く売るにはどうすればよいか

    会社を高く売ろうと思ったら、買い手にのれん価値を高く評価してもらうことが重要になります。

    のれん価値は買い手の主観によって決まりますので、買い手がより会社の価値を感じられるようにしましょう

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