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M&A(譲渡)

バトンタッチを考える前に知っておきたい事業承継の2つの意味

事業承継の意味

昨今、事業承継にお悩みの中小企業経営者の増加が社会問題になっています。

ただ、事業承継には2つの意味があることをご存知でしょうか。ちまたで飛び交う「事業承継」という言葉の多くが、そのうちの重要性が低い意味で使われています。

事業承継で本当に重要なことを知らず、銀行などの提案を聴いていただけでは、事業承継が何かを見失ってしまう恐れがあります

そこで今回は、事業承継を考える前に確認しておきたい、事業承継の2つの意味について解説します。

事業承継の2つの意味

事業承継とは何でしょうか?というと、「事業の承継でしょ?」と言われそうですが、実はもう1つの意味があります。まずは事業承継の定義から理解しておきましょう。

事業承継=相続税対策や株式分散対策ではない!

銀行やM&A業者が提案する「事業承継対策」は、相続税対策や株式分散対策であることが多いでしょう。

しかし、本来の事業承継とは、事業が次の社長の下で円滑に引き継がれ、彼らが困らないようにすることです。相続税対策や分散株式対策はその一部、それもノンコアの部分に過ぎません。

小手先の相続税対策や分散株式対策にばかり目を向けてしまうと、大事なことを見失ってしまうことになります。

後継者に承継すべき2つのモノ

一言で事業承継と言っても、自分が大切に守り、育ててきた事業をきちんと後継者に承継するためには、2つのモノを引き継いでもらう必要があります。それは、

  • 社長という職務(事業の承継)
  • その会社の株式(株式の承継)

の2つです。それぞれの関係性は下図のとおりです。

2つの事業承継の関係性

「事業の承継」とは

事業の承継とは、会社が営む顧客、従業員、取引先関係といった事業全般を、自分の後に誰に任せるかという問題です。つまり、「誰を次の社長にするか?」ということです。

中小企業は、浮くも沈むも社長個人の器次第のところがあります。社長業を引き継ぐというのは非常に大変なことで、信頼できる後継者を選ばないと、顧客や従業員、取引先に多大な迷惑を掛けることになります。

また、中小企業では会社の借金を社長が個人保証していることが多く、新社長がこの保証まで引き継がなければならないということも、頭の痛い問題です。

「株式の承継」とは

株式会社にとって、株式は会社の所有権そのものです。株主が会社を支配する権利を有し、会社の財産は株主の持ち物ということが、会社法という法律で明確に保証されています。そのため、株式を誰に、どのように承継するかという問題も重要になります。

株式の承継で厄介なのは、優良な会社ほど株式に大きな財産価値があるということです。株式の価値が高い場合、承継する際にかなりの売買資金が必要だったり、多額の相続税・贈与税が発生することになります。

より重要なのが「事業の承継」

では、上記の「事業の承継」と「株式の承継」では、どちらのほうがより重要でしょうか。

この質問をすると、ほとんどの中小企業経営者さんは一致した回答をします。「事業の承継」です。

「事業の承継」の失敗は、事業の崩壊に直結します。社長業とはそれほど重いものであり、信頼できる人間を信用できる水準まで育てたうえで引き継ぐのが理想なのです。

「事業の承継のほうが重要」という中小企業経営者の回答には、これまで自分が困難な企業経営に立ち向かってきた自負と、自分の本当に次世代に引き継ぎたい財産は株式価値ではなく事業そのものだという想いが込められているように感じています。

とはいえ、「株式の承継」も無視できない

ただし、「株式の承継」を甘く見てはいけません。たとえば株式が遠い親戚や先代の知り合いに分散していたり、後継社長とはまったく違う人が最大株主になっていたりすると、新社長としてできることは大きく制限されてしまいます。

株式の問題で新社長が十分力を発揮できなかった場合、事業の崩壊に繋がることがあります。「事業の承継」ほどではありませんが、「株式の承継」も事業を守るために重要な論点であることは間違いないでしょう。

つまり、「株式の分散を防ぐ」や「相続税の金額を下げる(繰り延べる)」といった論点は、事業承継の目的そのものではなく、手段として重要であるということです。

銀行やM&A業者が「株式の承継」の話ばかりする理由

上述のとおり、事業承継では、「株式の承継」よりも「事業の承継」のほうが重要です。

では、銀行やM&A仲介会社が「事業承継を考えましょう」というとき、「事業の承継」の話に時間を割くでしょうか。「どうもそうではない」と感じる経営者が多いでしょう。

以下では「『事業の承継』の話をあまりしない理由」と「『株式の承継』の話ばかりする理由」について説明します。

「事業の承継」の話をあまりしない理由

なぜ、銀行やM&A仲介会社は「事業の承継」の話をなぜあまりしないのか。答えは簡単で、彼らにはよくわかっていないからです。

新卒で銀行マンを続けている人に、中小企業経営の実態を理解しろというのも無理な話です。むしろ、彼らの中には自分の上司を見ているうちに、「管理職なんて誰にでもできる」と思い込んでいるような人もいます。

また、M&A仲介会社は企業経営を理解する必要はまったくなく、売り手が理解してくれる買い手を探すお膳立てをするのが仕事です。やはり、こちらも中小企業経営の深いところまで気が回る人は多くありません。

もちろん、中には事業の承継について理解のある優秀な人もいるのですが、少数派です。

「株式の承継」の話ばかりする理由

これに対し、「株式の承継」の話は饒舌に語ります。

その理由として、財産に関することなので彼らにも理解しやすいことと、なんといっても「株式の承継」の話をしていたほうが儲かるからです。

「株式の承継」は、具体的にキャッシュが必要になる話ですので、金額的効果が見えやすいという利点があります。そのため、「こんなに節税になるのだから、このぐらいの費用を掛けても痛くないですよね!」といった費用対効果をアピールする営業トークが簡単です。

またM&Aを成立させると、売り手オーナーには億単位の入金がありますので、高額な仲介報酬も受け取りやすく、銀行が仲介会社から受け取る紹介手数料も大きくなります。

M&Aでの紹介手数料の仕組みについては、「オススメなんてカネ次第?M&Aのウラで動く紹介手数料の話」をご覧ください。

銀行やM&A仲介会社の事業承継提案には、当然彼らのビジネスのメリットがあることに留意しておきましょう。

「事業の承継」を先に考えよう

事業承継でより重要なのは「事業の承継」です。そのため、当然先に事業の承継を考える必要があります。

具体的な検討する順番としては、先に「誰に社長職を任せるか」を決め、次に「いつ、どのように引き継ぐか」を検討します。それが見えてきて初めて「株式の承継」の問題に入ります(下図)。

事業承継の検討順序

上図のように、まず「誰に社長を任せるか?」が明確でなければ、その他の検討は進みません。次期社長候補が明確になって初めて、具体的な肉付けとしての事業承継手法が決まってきます。

銀行などが持ち込む事業承継提案は、「株式をいつ、どのように引き渡すか?」「どうすれば相続税・贈与税を安くできるか?」といったものが多いのですが、本来これは最後に考えるべき「手段の問題」になります。

おわりに

今回は、「事業の承継」と「株式の承継」という2つの事業承継の意味と、その優先度についてご説明しました。

事業承継を検討する際は、本末転倒な議論にならないように気を付けましょう。

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


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