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M&A(譲渡)

M&Aで「売却手数料無料」という仲介業者のウラ側と3つの注意点

売却手数料無料の仲介会社の注意点

M&A仲介のビジネスは、現在雨後の筍のように新規参入が相次いでいます。ちゃんと案件を回せるのかどうかはともかく、人材紹介業やIT企業など、これまでM&A仲介に無縁だった会社まで、猫も杓子も参入している状況です。

業界内で品質競争が起こってくれればいいのですが、残念ながら今はその過渡期のようです。むしろ、アドバイザーの頭数が増えても優秀な人材の数は限られるので、平均レベルはどんどん下がっているように思います。

一方で、価格競争は少しずつですが激しくなってきました。各社「レーマン方式から1%引き」とか「着手金、中間時金なし」などの施策を打っています。我々はコストだけでM&Aアドバイザーを選択することは強く反対していますが、コストも重要な判断要素には違いありません。

しかし、「売り手からは一切報酬をいただきません」という仲介会社もあり、さすがにそれはどうかなと考えています。中にはそんな売り文句で、実質的には割高なアドバイザー報酬を設定している会社もあります。

今回は、なぜそのような思い切った報酬体系を設定しているのかの意図と、そのようなアドバイザーを選ぶ際の注意点をご紹介しましょう。

「売却手数料無料」というビジネスモデルと意図

まずは、「売却手数料無料」というものがどういうものかと、何を意図して行われているかを知っておきましょう。

「売却手数料無料」のビジネスモデル

「売却手数料無料」を謳う仲介業者は、M&Aが成立しても売り手からは一切報酬を受け取らないということです。

ではどうやって稼ぐかというと、買い手から報酬を受け取ることになります。

通常、仲介ビジネスは売り手と買い手双方から報酬を受けとります(両手取り)。この形を崩し、買い手側からだけ報酬をもらうというのが、「売却手数料無料」のビジネスです。

「売却手数料無料」を謳う意図

では、なぜ一部業者は「売却手数料無料」を謳うのでしょうか。単に両手の報酬を下げるだけではダメなのでしょうか。

そこには、中小企業M&A市場の特殊性が絡んでいます。順を追って説明しましょう。

買い手は仲介会社を選べない

まず、一般的な中小企業M&Aの流れからすると、売り手がM&Aプロセスのスタート段階において仲介会社を選定します。この段階では買い手は一切タッチしていないので、仲介アドバイザーは売り手が独断で決定します

一度仲介会社が決まってしまうと、その仲介会社経由でなければ、買い手はその対象会社を買収することができません。つまり、売り手が選んだ仲介会社にどんなに不満を感じても、買い手は「その仲介会社を受け入れる」か「M&Aを断念する」しか選択肢がありません。仲介会社をチェンジさせることはできないのです。

M&A仲介会社の変更はなかなか難しい

買い手側で仲介会社を変更することができないことは上述のとおりですが、売り手側としても、M&Aプロセスの途中で仲介会社を変更するのはなかなか大変です。

特に買い手候補を集める段階に入ってしまうと、変更は一気に難しくなります。なぜなら買い手から見れば、「一度進み始めた案件が突然中止になり、後日別の仲介会社が同じ会社の案件を持ってきた」という状況に映りますので、「ワケあり案件」として対象会社を見ることになります。

M&Aというのは買い手の主観によって価格や条件が変わるものですので、印象が悪くなることは売り手によって不利なことです。M&Aプロセスが進めば進むほど、仕切り直しには勇気が必要になるのです。

「M&A価格は買い手の主観で決まる」という点に違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、これが厳然たる事実です。「適正価値」で決まるものではありません。詳しくは「セラーズバリューとバイヤーズバリュー/価格が決まる唯一の仕組み」をご覧ください。

売り手は初心者であることが多い

なお、中小企業M&Aの世界では、買い手の多くが「M&A慣れ」しているのに対して、売り手は初心者であることが圧倒的に多いです。そのため、悪質なM&A業者が「騙そう」とか「業者に都合の良い契約を結ぼう」と思えば、間違いなく売り手を狙ったほうが得策です

実際、契約解除条項や独占契約期間、報酬発生条件などで、目を疑うほど悪質な契約書を見たことがあります。買い手であれば間違いなく社内外の法務専門家がストップを掛けますが、中小企業オーナーの場合は「こういうものなのかな」と思い、うっかり押印してしまうようです。

「売却手数料無料」を謳う業者のすべてが悪質な契約を迫るわけではないのですが、そういう輩が暗躍しやすい状況であることは知っておくべきです。

つまり、とりあえず売り手と契約を結びたいのが本音

要するに、とにもかくにも売り手と独占契約を結んでしまえば、買い手に拒否権はほぼないし、売り手から切られることもあまりありません。M&Aが双方にとって「成功」かどうかはともかく、「成立」さえできれば商売が成り立つということになります。

なお、業績良好な売り手と仲介契約を結ぶことができれば、あとはその同業大手を数社回れば、興味を持つ買い手候補は間違いなく見つかります。買収意欲の強い買い手さえ見つけられれば、M&Aアドバイザーが無能でも買い手企業が代わりにM&Aプロセスを進めてくれるので、素人であってもM&Aを「成立」させることは可能です(繰り返しですが、可能なのは「成立」であって「成功」とは限りません)。

「仕入れたものを努力して売るのではなく、努力しなくても売れるものを仕入れる」のがM&A仲介の近道であり、「M&A仲介は仕入の商売」とよく言われる所以です。

このようなM&A仲介の現場で手っ取り早く成果を挙げるためには、とにかく大量の「仕入」を行い、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる方式で売るのが一番ということになります。成功報酬はあっても失敗罰金はありませんから、売れない会社が多くても、時間さえ掛けなければOKなのです。

「売却手数料無料」というのは、結局のところこういったウラ側によって成り立っており、とにかく売り案件数を増やそうという狙いで行われています。

M&A仲介アドバイザーのビジネスモデルについて、より詳しくは「業者に騙される前に知っておきたいM&A仲介のビジネスモデル」をご覧ください。

「売却手数料無料」のアドバイザーの3つの注意点

では、上記のような「売却手数料無料」のアドバイザーを利用する際は、何に気を付けるべきでしょうか。注意点を3つご紹介しましょう。

注意点1.買い手が払う報酬手数料は、実質的に売り手が負担している

まず、仲介手数料というものは、実質的には買い手の分も売り手が負担しているということです。

買い手には、特定の会社を買収するために支出できる「予算」というものがあります。M&A対価もアドバイザー報酬も、この予算の中から支出しなければなりません。

つまり、予算総額から、アドバイザー報酬を引いた残額が、売り手に払えるM&A対価の上限です。買い手が払うアドバイザー報酬の分だけ売り手の手取りが減りますので、実質的には売り手が負担していることになります

よって、売却手数料がタダだからと言って、買い手が払う買収手数料の額を確認しないなんて愚の骨頂です。

結局のところ、売り手が払わなくていい分だけ買い手の手数料が高い場合、売り手にとって何の意味もない話なのです

注意点2.「中立」とは思わないほうがよい

普通のM&A仲介会社が本当に「中立」かどうかはともかく、少なくとも「売却手数料無料」の仲介会社は「中立」ではないと考えたほうがいいでしょう。お金の出どころの顔色を見るのはビジネスでは当たり前のことです。

売り手は普通リピーターにはなりませんが、買い手は大事なリピーター候補です。どこまで露骨に肩入れするかはともかく、少なくとも中立を保てると思うのは牧歌的すぎるのではないでしょうか。

注意点3.気軽さに付け入ったとんでもない契約ではないか?

人間は「無料」と聞くと気軽さを覚えます。無料であることだけしっかり確認し、難しい文言の多いアドバイザリー契約書のチェックを疎かにしてしまいがちです。

しかし、悪質なM&A業者にとって、そのような経営者ほどの「カモ」はいません。

彼らは大量の売り案件を集めたい一方で、優良な売り案件は絶対に他社に奪われたくないですから、売り手オーナーの行動を縛る仕掛けを契約書に盛り込みたくなるのは自然な流れです。

契約書は押印前にじっくりと読み込み、少しでも気に入らない条項があれば修正を要求しましょう。

おわりに

今回は、最近つとに増えてきた「売却手数料無料」のM&A仲介会社の裏側と注意点をご説明しました。

M&Aは中小企業であっても大きなお金が動く業界ですので、やはり色々な業者が出入りしています。「売却手数料無料」の業者のすべてが悪質とは言いませんが、一見するとオイシイ話には十分警戒したほうがいいでしょう。

M&Aは、そういう世界ですから。

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


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