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M&A(譲渡)

事業承継後に後継者がM&Aで会社を売る際に注意すべき6つのこと

事業承継後のM&A

事業承継を目的としたM&Aは件数が非常に伸びているところであり、多くの売り手さんが(成功か失敗かは別として)M&Aで後継者を見つけているのは事実です。

一方、私がこれと同時におそらくこれから伸びるであろうと予想しているのが、「一旦は事業承継で息子に継がせたものの、本人の健康状態や素質、家庭事情から、短期間でM&Aを選択し直すケース」です。

実は、弊社でもこれまでで数件だけ、このような「事業承継後のM&A」に関与させていただきました。多くの経営者が世代交代を迎えていますので、母数の大きさからすれば一定割合でこのようなニーズは存在すると思います。先代経営者からすると残念な展開だと思いますが、事業の先行きが厳しいようであれば、高く売れるうちに売るというのも選択肢の1つではあります。

事業承継後のM&Aのコツは、基本的には通常の事業承継M&Aと同様であり、「事業承継でM&Aを大成功させるための知識と知恵のすべて」でご紹介している内容を読んでいただければ成功率は確実に上がります。ただし、事業承継後という特殊事情を踏まえて少々アレンジが必要と思われます。

そこで今回は、事業承継後に後継者が会社を売る際に注意すべきポイントについてご紹介したいと思います。

事業承継後のM&Aの特徴

事業承継後のM&Aの注意ポイントを理解するために、まずはその特徴を掴んでおきましょう。事業承継前と比べて、事業承継後のM&Aの特徴は以下のとおりです。

特徴1.後継者が短期間で退任

事業承継後のM&Aは、後継者が数年で退任することになるため、周囲から驚きをもって受け止められることがあります。特に社内の従業員さんへのケアは通常の事業承継M&A以上に重要になるでしょう。

最初から事業承継を目的としたM&Aをしていた場合、従業員さんたちはある程度の「覚悟」を持っています。社長がいつかは退任することは誰でも知っていることなので、明確な後継者がいない以上は「廃業」か「M&A」は常に選択肢になるのは当然だからです。

これに対し、一旦は事業承継が終わっている場合、普通は短期間で再度社長交代が起こるなんて思いません。いわば油断した状態からの「不意打ち」ですので、突然M&Aが発表された際の衝撃はその分大きくなります。

M&Aを本当の意味で「成功」させるうえで、ヒトの問題は最大の難関です。ただでさえ高いハードルがより高くなる覚悟は必要です。

特徴2.後継者の将来が問題になることも

事業承継後のM&Aでは、後継者である現社長がまだ若いことも多く、M&A後の職や生活を考慮しなければならないことも少なくありません。転職しようにも、「元経営者」という経歴が邪魔になることもあるでしょう。

M&A後に「雇われ社長」の立場で経営に関与できることもありますし、その他何らかのポストで会社に残れることはあります。ただし、それを決めるのはあくまで買い手ですので、M&A後にどのような立ち位置になるかは、買い手選びの重要なポイントになります。

特徴3.株式の承継が終わっている場合、終わっていない場合

事業承継後のM&Aでは、すべての株式がすでに現社長に渡されている場合と、まだ渡しきれていない場合があります。

すべて終わっている場合、終わっていない場合と、それぞれ注意すべきポイントが存在します。詳しくは後述で見ていきましょう。

事業承継後のM&Aで注意すべき6つのポイント

それでは、事業承継後のM&Aでは何を注意すべきなのか、6つのポイントでご紹介しましょう。

注意ポイント1.従業員さんへの目配りに特に注力すること

上述のとおり、事業承継後のM&Aは従業員さんにとって「不意打ち」のような形で、その動揺は通常のM&Aよりも大きいと考えるべきです。

M&A後の混乱は本意ではないと考えるのであれば、この動揺には特に気を付けましょう。買い手と協力し、少しでも不安を和らげる努力を行うことが重要です。

一般的な従業員さんへの対応方法については「会社売却M&Aで社員・従業員を不幸にしないためのポイント10選」にまとめていますので、ぜひご覧ください。

注意ポイント2.買い手は「なぜ売るのか」を気にする

M&Aの買い手は、良い会社が売りに出ていると「どうしてこんな良い会社が売りに出ているんだろう?」と思うものです。

事業承継を目的としたM&Aの場合は結構簡単に納得できるのですが、事業承継後にM&Aをするとなると、

  • とんでもない事業リスクを抱えているのではないか?
  • 社内の人間関係が最悪なのではないか?
  • 信用できる売り手なのだろうか?

などなど、いろいろと考えてしまいます。

邪推されること自体は仕方ないですが、なぜM&Aに至ったのかの理由を丁寧に説明し、買い手に少しでも納得・安心してもらうことが大切です。場合によってはあまり言いたくない理由かもしれませんが、お茶を濁すと買い手の警戒感を高めますので、誠実に対応するのが得策といえます。

注意ポイント3.後継者の今後をどう確保するか?

上述したとおり、事業承継後のM&Aでは後継者(現経営者)が若いことが多いため、すぐ引退というわけにはいかないことがあります。

選択肢としては、

  1. 他社に転職する
  2. M&A対象会社に何らかのポストで残る
  3. M&Aの売却資金で不動産投資などを行う

といったところになるでしょう。

いずれも、M&Aプロセス開始前に方針を立てておくことを推奨します。なぜなら、M&A対象会社に残りたいならプロセス初期段階からその旨を伝えていくべきですし、売却資金を運用して食べていくつもりなら、M&A手法は売却後の投資に適しているタテの会社分割スキームが最適と考えられるからです。

これら重要事項はM&Aプロセス開始前に決めておくべきことで、後から考えるのは選択肢を狭めるリスクを高めます。

M&Aの開始段階で実施すべきことについては「5つのステップでわかる成功するM&Aの始め方とハマりがちな落し穴」にまとめています。

注意ポイント4.相続税・贈与税が大きくなることもある

「株式の承継」が未完了で、親側でまだ多くの株式を持っている場合、相続税・贈与税が大幅に高額になることがあります。

なぜなら、中小企業株式の相続税計算上の評価額は、M&A価格よりも大幅に低くなるように制度設計されており、キャッシュで持っているよりも株式で持っていたほうが、計算上の財産が少なくなるためです。

M&Aで譲渡する直前に安値で売買するのもリスクがありますので、どのように財産を移転するのが最良かは慎重に検討しましょう。

注意ポイント5.きょうだい間のハレーションリスク

上記の注意ポイント4はお金の話ですが、注意ポイント5は心の話です。こっちのほうがずっと厄介な問題かもしれません。

後継者に兄弟姉妹がいる場合、どのような割合で株式を承継しているでしょうか。ケースバイケースですが、多くの場合で後継者が多めに株式を保有しているのが実情です。

事業が続く場合は、後継者は家業を切り盛りする重責を担っているので、他のきょうだいからの文句はあまり出ません。しかし、M&Aによって後継者が重責から解放され、さらに後継者にだけ大目にキャッシュがもたらされる場合には、きょうだい間で不満が生じる恐れがあります。

このようなきょうだい喧嘩のリスクは、親の立場になるとどうしても過小評価してしまいがちのようです。しかし、相続トラブルでの典型的な問題ですので、注意して扱う必要があります。

注意ポイント6.名義株の問題には要注意

こんな方がご相談にいらっしゃいました。本人は株式をすべて子どもたちに売り渡しており、代表取締役も退任して「取締役会長」になっていました。事業承継後のM&Aを実施するにあたり、「私がM&Aを取りまとめれば子どもは絶対に反対しない。実質的には私が株主だから、買い手とは私が交渉する」と。

いや、お気持ちはわかるのですが、もし本当にそのとおりの振舞いをし、税務調査で同じ回答をした場合、名義株として贈与税が発生するリスクがかなり高いです。

名義株とは、株式名簿上の株主と実態としての株主が異なる状態のことを言い、税は実態に合わせて課税するというルールになっています。実際の株主が取り仕切って株式を売り、名義上の株主はお金を受け取るだけという構図であれば、実際の株主から名義上の株主への贈与と認定されかねません。

中小企業の事業承継絡みではよくあることですが、如何せん金額の大きな取引ですので、軽視すると思わぬ追徴課税を受けるかもしれません。

おわりに

今回は、今後伸びるであろう「事業承継後のM&A」についてご説明しました。

M&Aは杓子定規の事業移転ではなく、人間の思惑が非常に良く絡むドラマ性のあるものです。トラブルを如何に少なくし、引き継いだ会社を綺麗に譲渡するかは、後継者としての最後の大仕事ではないでしょうか。

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


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