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M&A(譲渡)

間違えてはいけない事業承継とM&A(事業の外部譲渡)の違い

事業承継とM&Aの違い

弊社は「組織再編」や「M&A」を専門にしている会社ですが、それを説明すると「じゃあ事業承継もできるんですね?」という反応が返ってくることがあります。どうも、世の中一般の感覚では「組織再編やM&A」と「事業承継」が似たようなもののようです。

このような質問への回答としては、

弊社は事業承継手段としてM&Aをするなら得意分野ですし、事業承継に絡めて組織再編をするならぜひ頼りにしてほしいですが、それ以外の事業承継は本業ではないので、それぞれのプロに頼んでください。

という回答になります。中にはキョトンとされる方もいらっしゃって、まだまだ情報発信が足りないのだなと反省するところです。

M&A(事業の譲渡)は事業承継の数ある選択肢の1つです。また、事業承継はM&Aの数ある目的の1つです。事業承継をしたいというニーズに対して、M&Aはひとつの回答ではありますが、それがすべてではありません。

事業承継業界や中小企業M&A業界には怪しい業者がたくさん入り込んでいますので、このような両者の関係性をしっかり理解しておかないと、口車に乗せられ本来選択すべきでないM&Aをしてしまうようなことも起こりかねません。今回は、事業承継とM&Aの違いと両者の関係性についてご説明しましょう。

M&Aの意味と活用される目的

まずは、そもそもM&Aがどういう意味の言葉で、何を目的として行われているかを知っておきましょう。

M&Aの意味

M&Aは「合併や買収の総称」と言われることがありますが、実際に使われている言葉の意味としては「会社や事業の経営権の売買」です。

そもそもM&Aを「合併と買収」と翻訳したのは誤りで、通常は合併の意味は含まれていません。詳しくは「「合併と買収」は誤訳!【M&A】の本来の意味と実際の使われ方」をご覧ください。

つまり、会社の株式を売買したり、事業そのものを売買することによって、会社や事業の経営権(会社や事業を支配し利益を享受する権利)を売り手から買い手に引き渡すのがM&Aです。

M&Aが活用される目的(売り手目線による)

M&Aが活用される理由は様々で、売り手の目線から見ると、M&Aには以下のような目的があります。

目的1.売却収入の獲得

経営権の売買売り手には株式や事業を譲渡した対価としての収入が手に入ります。

これはコツコツ事業で稼ぐのとは桁違いの価格になることも多いですし、上場するよりも簡単です。時には上場益よりも高い収入が期待できることもあります。

経営者としては、会社をカネで売り飛ばすなんて!と眉を顰める方も多いですが、実際に大金を目の前にすると気持ちが変わることは少なくありません。少なくともそのような決断をした方を責める権利は誰にもないでしょう。

目的2.経営資源の選択と集中

選択と集中とは、複数の事業を営む会社が、一部の事業や子会社を売却し、残った事業に集中投資することです。

業績が悪くなった事業を売ることもありますし、優良事業を高値で売って他の事業に再投資することもあります。さらには、単に経営者が「飽きた」という理由で一部事業を売ることもあります。

目的3.後継者不足時の事業承継

M&Aと社長交代経営者もいつか引退の時期を迎えますが、適切な後継者がいない場合、廃業するか、後継者を探す必要があります。

M&Aを選択することで、経営は大手企業に引き継いでもらえますし、雇用や取引関係も守れるというメリットがあります。

目的4.大企業の傘下入り

若い経営者が、大企業の傘下に入ることを目的として会社を売るケースがあります。

これは、自分の経営者としての実力に限界を感じたり、大企業の経営資源を借りてもっと大きな仕事をしたいと考えるときに選択肢に上ります。

つまり、事業承継は目的の1つに過ぎない

上記のとおり、売り手がM&Aを選ぶ目的は様々で、単にお金が欲しいときもあれば事業の再構築を狙うときもあります。

事業承継はその中の1つに過ぎず、M&Aがすなわち事業承継ではないことをご理解いただけたかと思います。

事業承継の意味と3つの方向性

では、事業承継はすなわちM&Aかというと、やはりそれも全然違います。事業承継には、(「廃業」を度外視すると)次の3つの方針があります。

  • 家族に継がせる(親族内承継)
  • 部下に継がせる(親族外承継)
  • 第三者に継がせる(M&A)

それぞれの内容を確認し、事業承継におけるM&Aのポジションを確認しておきましょう。

事業承継方針1.家族に継がせる(親族内承継)

伝統的な発想で、長男など家族に継がせる方法です。

こういった事業承継は後継者が未成年のころからいずれ継ぐことが決まっており、本人の学業や就職先はいずれ来たる事業承継を見据えたものになります。本人もいずれリーダーになる前提で成長していますので、そこら辺のサラリーマンとは覚悟がまったく違います。

ただ、家族内に適切な後継者候補がいなければできませんし、何より子どもの人生を親が決める時代ではありません。子どもがサラリーマンとして立派に別の道を歩んでいる場合、無理に本人を説得して家業を継がせることはなかなかできません。

事業承継方針2.部下に継がせる(親族外承継)

社内の役員などから次期社長を登用することです。

実は、この事業承継がもっとも難しいと言われています。サラリーマンとしてどんなに優秀でも、中小企業経営者として優秀かどうかは別の話。時に個人保証も引き受けなければならない中小企業経営者という「生き方」に適合できない人が非常に多いのが現実です。

また、株式を本人に売る場合、M&Aほどではなくてもある程度の価格で買い取らなければいけません。このキャッシュをどう用意するかという問題もあります。

そして、社内から後継者を選んだ場合、往々にして「なんでAさんではなくBさんなのか?」という疑問から、妙な噂が社内に蔓延することがあります。後継者に選ばれた人と選ばれなかった人の間にしこりが残ったり、選ばれなかった人を慕う社員から不満が生まれることも少なくありません。

事業承継方針3.第三者に継がせる(M&A)

そこで最後に出てくるのが、会社に直接関係のない第三者(会社)に継いでもらうというM&Aということになります。

このように、M&Aは事業承継手段の3番目に出てくるものであって、唯一無二の事業承継手段ではありません。

そして、常に最高の事業承継手段と断言することもできません。M&Aのメリットとデメリットについては次章でご紹介します。

事業譲渡でM&Aを選択することのメリットとデメリット

では、M&Aは他の3つの事業承継手段に比べてどのようなメリットとデメリットを持っているのでしょうか? 以下ではその特徴を見ていきましょう。

事業承継におけるM&Aのメリット

まずはメリットから説明していきます。良いことばかりではありませんが、他の事業承継手段では絶対に得られない素晴らしいメリットがあるのも事実です。

メリット1.多額のキャッシュが手に入る

M&Aのメリット事業がどの程度評価されるかはわかりませんが、高く評価されたときは破格の金額が手に入ります。

親族内承継であれば、基本的にはキャッシュはほとんど得られません。親族外承継の場合は多少手に入りますが、後継者が用意できる範囲内です。これに対し、M&Aであれば優良企業が相当な金額を用意してくれます。

実際のM&Aでの売買金額は、世にいう「適正価格」どころではありません。株式をオークションに掛け、きちんと情報を開示し、争奪戦を起こすことができれば、買い手候補は適正価値を遥かに超える入札をしてくれます。

心理的には抵抗があると思いますが、弊社では入札形式でのM&Aを推奨しています。入札でM&Aを成功させる方法については「初めてのM&Aを入札で成功させるために売主本人が学ぶべき基礎知識」をご覧ください。

メリット2.多数の優良企業から後継者を選べる

M&AのメリットM&Aで多数の買い手候補を集めることができれば、その中から最良の後継者を選ぶことができます。

このとき、各買い手候補に必ずM&A後の事業計画を提示してもらい、M&A後にどのような事業運営を考えているのかを確認しましょう。売り手経営者の希望に100%沿うものはなかなか出てこないとは思いますが、それまでの対象会社では想像もできなかった、ワクワクするようなシナジー効果を描いている買い手に出会えるかもしれません。

買い手候補から提示してもらった事業計画の吟味方法については、「M&A相手を選択するために確認したい事業計画の9つの重要ポイント」にて解説しています。

事業承継におけるM&Aのデメリット

一方、M&Aには様々なデメリットがある点も承知しておきましょう。事業承継業者・M&A業者はなかなか教えてくれませんが、以下のようなデメリットには要注意です。

デメリット1.即日で決定権限がなくなる

事業承継でM&Aを選ぶことの、おそらく最大のデメリットが、経営者を“即日で”引退するということでしょう。

親族内承継や親族外承継であれば、しばらくは会長職などで会社に残り、経営に対して相当な影響力を発揮することができます。良し悪しはともかく、「院政」を敷くことも可能です。

しかし、M&Aではその成立日をもって経営者ではなくなります。一応社長職として続投することもありますが、それは「経営者」ではなく「他人の会社を管理している人」でしかありません。

つまり、M&A後に会社が思わぬ方向に向かっても、止める権利はまったくなくなるということです。たとえば買い手企業の意向でリストラが敢行されることもあり得ます。

M&Aをする際は、この現実に向き合い、自分の意に沿った経営をする後継者を選ばなければなりません。詳しくは「会社を売ると、あなたに何が起こるのか?~覚悟はできていますか~」をご覧ください。

デメリット2.売れるかどうかは最後までわからない

M&Aは最後の最後まで何が起こるかわかりません。順調に進んでいた案件が最終盤で破談することだって少なくないのです。

利益が十分出ていても、欲しいと思ってくれる買い手が現れなければ、M&Aは成立すらしません。売りたいと思う買い手が現れるかは猶更不明です。それがM&Aというものです。

M&A初心者である売り手にとって、M&Aプロセスは非常に忙しく、時間もかかります。その努力と時間が空振りに終わる(自ら終わらせる必要が生まれる)リスクは常に覚悟しておく必要があります。

デメリット3.怪しい業者が山ほどいる

M&Aのデメリット大変残念なことですが、「事業承継」や「中小企業M&A」の業界は「すごく儲かる」というイメージが広がっているため、プロと呼ぶに到底値しない業者が山ほどいるのが現状です。

これは新規参入の小規模仲介業者だけではありません。老舗の大手仲介会社でも素人同然のアドバイザーを採用して質が低下していますし、最近は銀行・金融機関もよくわかっていないのに参入しているのが現状です。

このような雑多な業者の中から、本当に優秀で誠実なアドバイザーを探してサポートを依頼しない限り、M&Aの初心者である中小企業経営者が成功するのはなかなか簡単ではありません。

M&Aアドバイザーの選び方については「時代遅れの業者に騙されない初めてのM&A仲介アドバイザーの選び方」も併せてご覧ください。

こんな事業承継業者に要注意!

M&Aは他の2つの事業承継手段に比べてかなり特殊な領域であり、3つの事業承継(+廃業)のすべてを1つの業者がカバーするのはほとんど無理です。そして、間違いなく一番実入りがいいのはダントツでM&Aです

「事業承継なら親族内承継からM&Aまで全部丸ごと請け負います!」という業者がいたら、それは単なる売り文句で、結局はM&Aに誘導されるのではないか?と警戒しておきましょう。もちろん、M&Aが最良の選択肢であることは少なくありませんが、決めるのはコンサルタントではなく、あなた自身とご家族です。

本当にM&Aが必要か、しっかり考えよう

上述のとおり、M&Aは事業承継の唯一の方法でもなければ、完璧な方法でもありません。優秀な選択肢の1つであることは間違いないと思いますが、ご自身の置かれている状況を踏まえて慎重に判断する必要があります。

事業承継でM&Aを成功させる王道は、M&Aについてしっかりと勉強されることです。当サイトでは以下の記事で事業承継M&Aの成功に不可欠な知識と知恵をすべてご紹介していますので、ぜひ参考にし、後悔のない選択をしてください。

事業承継でM&Aを大成功させるための知識と知恵のすべて

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


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