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M&A(譲渡)

M&A仲介会社を大手というだけで信用してはいけない5つの理由

M&A仲介会社が大手でも安心できない理由

中小企業M&Aでは、多くの場合で仲介会社がマッチングを取り仕切ります。近年の後継者問題への対応や調剤薬局など特定業種のM&Aの盛り上がりでM&A仲介業は伸び盛りで、複数社が上場まで果たしています。

M&Aは売り手オーナーにとって、一生を懸けてきた会社・事業の売却であり、安心できる相手に委ねたいという想いは当然です。そして、安心感を求めて大手仲介会社と契約する方も少なくありません。

大手仲介会社を選ぶこと自体は、必ずしも悪いことではありません。大手仲介会社の中にも優秀なアドバイザーはたくさんいらっしゃいますし、M&Aプロセスの中には組織力があったほうがよい場面もあるにはあります。

ただし、「大手だから」というだけで無批判に仲介会社を信用し、安心するのは愚の骨頂です。某有力地方銀行に誘われるがままに、巨額の債務を背負ってシェアハウスに投資したサラリーマンと何も変わりません。

なぜ、大手というだけで仲介会社を信用してはいけないのか。今回は、私自身が大手仲介会社に何度も振り回された経験を踏まえて、その実態をご紹介したいと思います。

最初に強調しますが、大手仲介会社だからダメというわけではありません。問題は会社のサイズだけで信用してはいけない、ということです。

M&A仲介会社のビジネスモデル

まず、M&A仲介会社のビジネスモデルを理解し、大手仲介会社がどのようにして成長していったのかを知っておきましょう。

M&A仲介会社のビジネスモデル

M&A仲介会社は売り手と買い手をオークションなどによって結び付け、売買交渉の行司・仲裁役となり、M&Aを成立に導きます。M&Aが成立した暁には、売り手・買い手の両方から仲介報酬を受けとります。

仲介報酬は成功報酬以外にも、着手金や月額報酬が発生することもあります。詳しくは「レーマン方式って何?M&A仲介アドバイザーの報酬手数料を徹底解説」をご覧ください。

如何に「売れる会社」を「仕入」できるかが勝負

中小企業M&Aの世界では、買い手発信(買い手が特定の会社に買収を持ち掛ける)よりも、売り手発信(売り手が事業承継などで買い手を探す)ほうが圧倒的に多数です。

そして、きちんと利益が出ていて将来性に問題がない良い会社であれば、価格や条件はともかく売り捌くこと自体は簡単です。同業の大手数社に声を掛けるだけで、ぜひ買いたいという会社はすぐに見つかります。

したがって、このような「売れる会社」を如何に「仕入」(専任アドバイザリー契約で囲い込み)するかが、M&A仲介会社の重要な競争ポイントです。

M&A仲介アドバイザーのビジネスモデルについて、より詳しくは「業者に騙される前に知っておきたいM&A仲介のビジネスモデル」をご覧ください。

ネットワークと人海戦術で「売れる会社」を独占する

このような「仕入の商売」の中で、一部の賢い仲介会社が「人脈」と「紹介手数料(バックマージン)」で成長していきます。

全国津々浦々の金融機関や会計事務所を足で廻り、「売れる会社」を紹介してくれた際の紹介手数料をバラ撒きながら、人脈を作っていきます。中には大量の社員を地方金融機関に出向させることもあります。

このような人脈づくりを地道に繰り返し、良い売りモノを独占できる仕組みを作り上げることで、仲介会社は大きくなっていったのです。

M&Aの紹介手数料については、「オススメなんてカネ次第?M&Aのウラで動く【紹介手数料】の話」をご覧ください。

大手M&A仲介会社の売り手にとってのメリット

このような大手M&A仲介会社は、売り手にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。実際、売り手の考え方によってはそれなりにメリットを提供していることも事実です。

大手のメリット1.多くの買い手にアクセスできる

大手M&A仲介会社は目立ちますので、積極的に買収していきたいと考えている買い手企業が日々積極的にコンタクトをしています。そのため、社内に業種別の買い手候補企業データベースが存在しており、初めて取り扱う業種のM&Aでも1から買い手企業を探していく必要がありません。

買い手が集まるほど、「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」の原理で、相性の良い買い手に出会える可能性は上がります。このように多くの買い手候補と顔合わせをしてマッチングすることを「フェイスマッチングM&A」と呼んでいますが、このフェイスマッチングM&Aを行うためには大手仲介会社のほうがよいでしょう。

大手のメリット2.対応のキャパシティは大きい

少人数のM&A仲介会社の問題点は、他のM&A案件が進行しているときに、キャパシティ不足で対応が遅くなることがあることです。特に優秀な独立系アドバイザーほど忙しく、下手に採用を増やしてクオリティを下げることを嫌がるため、対応力という点では限界があります。
この点、頭数の多い大手仲介会社は、チームを組んでスピード感のある対応がしやすいというメリットがあります。

ただし、人数が多いといっても単なる営業マンばかりでは意味がないですし、質の悪い人間ばかり多くてもスピードが出るわけではありませんので、その点は注意する必要があります。

大手のメリット3.専門家が社内にいる

大手仲介会社の中には、公認会計士や税理士、弁護士などの専門家を社内に雇っている会社があります。このような場合、専門的な質問に対して比較的迅速に安価で対応してくれることがあります。

ただ、専門家の業界というのは優秀な人ほど独立志向が高く、そこまでは行かない人々という点には要注意です。手前味噌ですが、筆者(公認会計士・税理士)は負ける気はしないです。

とはいえ、そんじょそこらの会計士や弁護士よりははるかにM&Aを知っている人々ですので、利用価値はあると言えるでしょう。

あなたが本当に目指すべきM&Aの成功とは

さて、ここで一旦立ち止まって、売り手のあなたが本当に目指すべきM&Aとはどのようなものなのかを確認しましょう。そして、それを踏まえて大手仲介会社に委ねることのリスクを考えていきましょう。

中小企業経営者が目指すべきM&A

上述したとおり、良い会社であれば、M&Aの「成立」までは簡単です。たぶんどんなに無能なM&Aアドバイザーでも成立自体には持っていけますので、多量の買い手候補を紹介し、人海戦術で案件をスピーディーに進めてくれる大手仲介会社には向いているでしょう。

しかし、あなたが本当に目指すべきは、M&Aの「成立」ではなく「成功」ではないでしょうか

M&Aの成功とは、適切な相手に適切な価格で譲渡し、M&Aという選択肢を決断したときに抱いていた「M&Aによって実現したいこと」が高いレベルで実現することです。もしこれができなければM&Aの失敗であり、特に「不適切な相手に安値で売ってしまった」場合は、二度と取り返しのつかない一生の後悔を生み出します。

「M&Aによって実現したいこと」は人それぞれであり、「個人的願望」と言ってもよいでしょう。このような個人的願望を実現したければ、「良い会社を仕入れて売り捌く」という発想の仲介アドバイザーが適切とは限らないのではないでしょうか?

M&Aの成立ではなく成功を目指すという発想は、中小企業M&Aの本質であり、成功の絶対条件と言っても過言ではありません。M&Aを検討する方は、ぜひ「中小企業M&Aの本質は売り手経営者の『個人的願望』を追求すること」をご覧ください。

フェイスマッチングM&AからニーズマッチングM&Aの時代に

実は、「良い会社を仕入れて売り捌く」という発想のM&A市場は、現在急速に縮小しています。

それは、かつては多くの買い手企業が「儲かっている会社を適正価格で買えれば、何もしなくても自然と儲かる」と考えていたものが、今では「儲かっている会社でも、自社の戦略に見合ってさらに成長させることができなければ失敗に終わる」と考え方を変更しているためです。つまり、これまで儲かってさえいればそこそこの価格で売れていたものが、買い手の成長戦略にマッチしていなければ買い叩かれてしまうということです。

この変化の背景には、かつての発想によるM&Aの失敗から、買い手企業が「M&A成功のコツ」を掴み始めたためです。詳しくは「M&Aマッチングの近年の本質的変化と最高の後継者に会う3つのコツ」をご覧ください。

このような新しいM&Aマッチングの考え方を「ニーズマッチングM&A」と呼びます。単に顔合わせの弾数を競う時代は終わり、本質的に売り手と買い手のニーズを結び付けなければ、M&Aの成功は不可能な時代になっているのです。

大手M&A仲介会社に注意すべき5つの理由

では上記を踏まえて、大手M&A仲介会社に注意すべき理由を考えていきましょう。

理由1.M&A仲介は担当者のスキルが最重要

まず、M&Aの仲介サービスに関しては、組織力よりも担当者個人のスキルが圧倒的に重要と断言できます。

M&Aは財務・税務・法務・労務などの広範で専門性の高い知識が求められ、M&Aアドバイザーには基礎的な素養が必要不可欠です。一方で、それぞれの有資格者ほどの知識を持つことは不可能であり、適時適切に外部専門家の知恵を集めながら案件を進めていきます。

このような広範な知識と専門家活用のスキルを持つとともに、厳しい交渉を取り仕切る調整能力・コミュニケーション能力がそれ以上に求められます。残念ながら組織的な分担作業ができる内容ではなく、案件担当者の腕次第でM&Aの成功は大きく左右されます。

急成長した会社の限界

この点、急成長した会社の多くがそうであるように、アドバイザーのスキルレベル格差は非常に大きなものがあります。

特にM&A仲介のビジネスはドライな実力社会であり、見込みのある新人を教育研修で育てるという発想は稀薄です。結果を出せる人は高年収を得る一方、結果を出せなければすぐクビになりますので、スキルのバラツキはなかなか解消されません。

これが大手だからと安心してはいけない最大の理由で、過去の栄光で輝く看板を背負っているだけの素人が多すぎる点に注意が必要なのです。

理由2.単なる営業会社になっているところも

上述のとおり、M&A仲介会社が成長するカギは「良い会社を仕入れること」です。そのため、売り手オーナーを売る気にさせることに全力を挙げる、単なる「営業トークがうまい奴ばかりの会社」もあります。

実際、某大手仲介会社の転職口コミサイトを見ると、そんな書き込みがあふれています。このような書き込みが全部信じられるわけではありませんが、少なくとも私の感覚や業界の共通認識ともよく一致しています。

ただ、その会社に所属していても、優秀なM&Aアドバイザーは何人も知っています。どのようなアドバイザーに出会えるかのほうが重要であるという点は改めて強調させていただきます。

理由3.過去の成功体験から抜け出せない会社も

上述のとおり、大手仲介会社はこれまで良い売り案件をかき集め、フェイスマッチングM&Aの手法を突き詰めることで成長してきました。

M&Aマッチングに求められる機能がフェイスマッチングからニーズマッチングに変化しているのは明らかなのですが、大手ほど経営層と現場の認識がズレやすいもので、いつまでもフェイスマッチングM&Aの発想から抜け出せない側面が見受けられます。

旧来の勝ちパターンにしがみついた会社がクライアントニーズを見失って徐々に衰えていくように、M&Aの世界でもそのような大手が消えていくものと思われます。

理由4.優秀な人ほど辞めやすい

M&Aの世界は担当者レベルの腕が重要ですから、優秀でサービス品質向上に意識が向く人ほど、独立や引き抜きで辞めていく世界です。

今は上述したとおりニーズマッチングM&Aへの変化の時代であり、大手内部で現場に密着している人の中には、自社が変化についていけていないのではという懸念を抱いている人が少なくありません。そのような危機感のある人もまた、辞めやすい傾向にあります。

大手仲介会社としてもその点は強く意識しているようで、優秀な人には相当な給与を出しているのですが、やはり自信のある人の流出を止めるのは容易ではないようです。

理由5.コンプライアンスは大差がない

なお、上場するほどの大組織なら、情報管理やコンプライアンスの面でしっかりしているのではないかと思うかもしれません。ただ、印象としては組織規模では大差がないと思います。

M&Aの世界は嘘も方便という意識が他の業界より強いように思います。大手だから、中小だからという組織規模の問題ではなく、特定の組織ではノルマ達成のためなら多少のコンプライアンス違反は大目に見られていると感じた経験は何度もあります。

小さな会社でも誠実に仕事をしていることもありますし、大手の中でもしっかりした方とそうでない方は同居しています。そのため、大手だからコンプライアンスが安心ということはなく、関係しているアドバイザー個人のモラルの問題であろうと思います。

おわりに

今回は、大手というだけでM&A仲介会社を信用してはいけない、という事実を説明しました。

繰り返しになりますが、では大手がダメかというとそういうことではなく、単に大手というだけで選んではいけないということです。担当するM&Aアドバイザー本人の能力を見極めましょう。

M&Aアドバイザーを選ぶ際の具体的な注目ポイントについては、「時代遅れの業者に騙されない初めてのM&A仲介アドバイザーの選び方」にて解説しています。ぜひ併せてご確認ください。

事業承継M&Aが失敗に終わるシンプルな理由とは?

事業承継を目的とした中小企業のM&Aは、多くが「失敗」と言わざるを得ない結果に終わります。


現実に、仲介会社のペースでM&Aを成立させてしまい、取り返しのつかない後悔を人知れず抱いている元経営者は少なくありません。


実は、事業承継M&Aが失敗しやすいということは、少し考えればすぐにわかるシンプルな理由からです。


あなたがM&Aを成功させたい、後悔したくないと強く考えているなら、事業承継M&Aの構造をきちんと理解しておきましょう。


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