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M&A(買収)

デューデリジェンス業者は絶対に仲介会社の紹介で選んじゃダメな理由

仲介会社とデューデリジェンス

会社の買収を成功させるうえで、もっとも重要なことは何でしょうか?

私は、買収M&Aを成功させる最大のポイントは「デューデリジェンス」であると確信しています。デューデリジェンスを適切に実施することが、後のM&Aプロセスすべてのクオリティを引き上げるため、デューデリジェンスこそM&A成功のカナメであると考えているからです。

しかし、多くの買い手企業がデューデリジェンスの意味を誤解し、十分な効果を引き出せていないようです。その一例として、「仲介会社や売り手アドバイザーがデューデリジェンス業者を紹介・推薦している」という事象が散見されます。ひどい例になると「仲介会社が自らデューデリジェンスをやっている」というとんでもない話まであります。

M&A自体が初体験の場合などはデューデリジェンスをどこに頼めばいいかわからないため、このような発想になるのかもしれませんが、これはそもそも「デューデリジェンスとは何か」を誤解しているために起きていると考えます。デューデリジェンスの役割と価値を知っていれば、仲介会社や売り手アドバイザーに業者選定を依頼するなんて発想には絶対になりません。

今回は、買い手がM&Aを実施する際に、デューデリジェンス業者を仲介会社に紹介してもらってはいけない理由をご説明しましょう。

M&Aにおけるデューデリジェンスの役割

まずは、そもそもM&Aにおいてデューデリジェンスがどのような役割を担っているかを確認しておきましょう。それを理解しておけば、なぜ紹介がダメなのかがわかりやすくなるはずです。

デューデリジェンスが目指すのは「M&Aの成功」である

まず、何のためにデューデリジェンスは何のために実施するためかというと、「M&Aを成功させるため」です。これ以上の目的は何もありません。

ここでいうM&Aの「成功」とは、M&Aの「成立」とはまったく別物です。買い手企業にとってのM&Aの成功とは、事業を大きな混乱なく引継ぎ、当初期待していた成果が実現され、投資を上回る利益を生み出すことです。

このM&Aの成功に寄与するために行われるのがデューデリジェンスです。この目標を見失うと、デューデリジェンスは実のあるものになりません。

デューデリジェンスとは、「監査」ではなく「調査」である

デューデリジェンスとは、M&Aの成功のために必要となる情報を調査・収集・分析する活動です

デューデリジェンスには「買収監査」という和訳がありますが、100%誤訳です。デューデリジェンスは「ちゃんとルール通り行われているか」を調べる「監査」ではありません。中小企業でルール通り行われていないことなんて山ほどあり、それを調べてもM&Aの成功にはほとんど寄与してくれません。

それよりも、会社がどのようにビジネスを運営しているか、どのように資金を回しているか、どのような法務リスクをどのようにマネジメントしているかといった、会社の実態を理解することのほうが遥かに重要です。

デューデリジェンスを実施している段階では、買い手はM&A対象会社のことはあまりよく理解できていません。決算数値などの表面的な情報だけで巨額投資をするなんて普通はあり得ない話であり、事前にしっかりと調査するのは当たり前の行為です(ちなみにDue Diligenceは「当然の義務の履行」という意味です)。

このように、M&Aという巨額投資を実施する前に、当たり前に実施すべき調査がデューデリジェンスなのです。

デューデリジェンスで実施すべき調査の内容については「買収M&A成功のカナメ!デューデリジェンスのタスク5選とコツ7選」にて詳しくまとめています。

「通り一遍のデューデリジェンス」は存在しない

デューデリジェンスは上記のように「M&A成功のための情報収集」ですので、実施すべきことは案件ごとにまったく異なります。

たとえば、M&A後に仕入共通化によるコストシナジーを追求するのであれば、実際に何がいくらで仕入れられているのかが重点調査項目になります。「仕入計上基準が会計ルール通りか?」なんてどうでもいいことです。つまり「描いているM&A後の青写真を実現するために、確認しておかなければならないこと」を確かめるのがデューデリジェンスですので、対象会社の特徴と青写真の形次第で、デューデリジェンスの形も大きく変わるのです。

よく「通り一遍のデューデリジェンスをやってほしい」と言われますが、そんなものは存在しません。対象会社と買い手企業の組み合わせの数だけデューデリジェンスがあるのです。

この点を理解しておかないと、「財務デューデリジェンスは会計監査の簡易版」というようなとんでもない誤解が生まれます。実は「デューデリジェンスができます」と宣伝している公認会計士にも、このような誤解をしている人が少なくありません。詳しくは「混同厳禁!『財務デューデリジェンス』と『会計監査』の根本的違い」をご覧ください。

時に案件の破談を進言するのもデューデリジェンスの役割

買い手にとって、M&Aは常に成功の可能性があるものではありません。売り手の価格目線がそもそも高すぎたり、買ったところでロクなシナジーが期待できない場合など、「手を出してはいけない案件」は山ほどあります。

このような場合、破談は止むを得ない選択肢であり、当然選択されるべき経営判断です。つまり、デューデリジェンスの結果、「これは手を出すべきではない」という経営判断ができれば、それは間違いなくデューデリジェンスの成功と言えます

各M&Aアドバイザーにとってのデューデリジェンス

以上のような、買い手にとって需要な役割を担うデューデリジェンスですが、各M&Aアドバイザーにとってはどのようなものなのでしょうか? それぞれの立場ごとに考えていきましょう。

買い手のFAにとっては「長期的に重要なもの」

まず、買い手企業の代理人である買い手側FAの多くは、短期的にはともかく長期的には重要なものと考えています。

上述のとおり、デューデリジェンスは時に案件の破談を決断させるものであり、破談になると成功報酬をもらえないFAとしては、あまり気持ちのいいものではありません。しかし、買い手FAの商売にとって何よりも重要なのは、買い手企業の信用を勝ち取ってリピーターになってもらうことです。そのためには、目先の利益に目をつぶって敢然と破談を進言することは、信用を引き上げるという意味で長期的メリットの大きいことです。

そのため、買い手側FAには、買い手企業に最良のデューデリジェンスを設定するモチベーションが十分あるのです。

売り手FAにとっては「邪魔なもの」

一方、売り手側の代理人である売り手FAとしては、できればデューデリジェンスなんてないほうがありがたいというのが本音です。

デューデリジェンスは価格の引き下げや破談要因を引き出すこともありますので、間違いなくありがたくありません。売り手は買い手側と違ってリピーターになるわけではないですし、なにより相手から破談にされてFAに感謝することはないので、特にデューデリジェンスを受ける直接的なメリットはないからです。

そのため、さすがに妨害まではしませんが、刑事裁判における弁護士のような立ち回りをすることもあります。

仲介会社にとっては「ほどほどにしてほしいもの」

最後に仲介会社にとってですが、こちらもデューデリジェンスはなるべく優しくしてほしいというのが本音です。仲介会社はFAよりも成功報酬の比率が大きく、完全成功報酬制のところも多いので、その気持ちはより強いでしょう。

実際、某大手仲介会社のアドバイザーの著書に「トップ面談で意気投合できれば、デューデリジェンスは重要ではない」と書かれていて、失笑したことがあります。とはいえ、そう思ってくれた方がありがたいというのは、多くの仲介アドバイザーが心のどこかで感じているのは間違いありません。

仲介会社にDD業者の紹介を依頼してはいけない理由

上述のデューデリジェンスの役割・業務内容と、そのデューデリジェンスを各アドバイザーがどのような目で見ているかを考えれば、デューデリジェンス業者を仲介会社や売り手アドバイザーの紹介に頼ってはいけない理由はすぐにわかるでしょう。以下おさらいとして確認していきましょう。

デューデリジェンスの「広さ」と「深さ」に決まりはない

M&A案件の数だけ最適なデューデリジェンスがあります。それはつまり、デューデリジェンスをどこまで行うかは、個々のデューデリジェンス担当者の判断に任されるということです。

上述した「通り一遍のデューデリジェンス」を依頼する買い手企業は、つまるところ必要最低限のことをやってほしいということなのですが、そんな基準はありません。手を抜こうと思えばいくらでも手を抜いて良いのがデューデリジェンスというものです

「広く」「深く」やるほど、紹介者の利益にならない

そして、やはり仲介会社や売り手FAとしては、デューデリジェンスはなるべく形式的・表面的なもので終わってほしいと思うものです。

如何せん成功報酬はかなりの金額になりますので、完全に私欲を捨てろというのは無理な話です。とにかく最低限のことだけやって、とりあえず納得してほしいというのが偽らざる本音です。

したがって、仲介会社がデューデリジェンスを実施するなんて論外ですし(そもそも“中立”にはなり得ない)、仲介会社の息がかかった人間には任せないほうが賢明と言うものなのです。

紹介者の顔色は必ず見る

では、仲介会社とは直接関係のない第三者機関ならよいかというと、そう単純ではありません。

デューデリジェンス業者も商売ですから、当然リピートを期待します。では、仲介会社からの紹介でデューデリジェンスを実施する場合、リピーターになるのは誰でしょうか?

買い手企業がデューデリジェンスに満足し、リピーターになる可能性は確かにありますが、あまり高くはありません。なぜなら、仲介会社にデューデリジェンス業者を頼む買い手企業は、そもそもデューデリジェンスの意味を理解していないので、きちんとやってもあまり評価してくれないからです。

それであれば、紹介者である買い手企業に媚びを売ったほうが、商売としてはずっと賢い選択です。

もちろん買い手企業の利益を全く無視した行動を露骨にすることはないですが、判断に迷ったときは、必ず紹介者の顔色を考えて行動します。

そもそも仲介会社はなぜその業者を紹介するのか?

本当の意味でできているかどうかはさておき、「デューデリジェンスもできます」と宣伝している公認会計士や弁護士は星の数ほどいます。特に公認会計士に関しては、「独立したらとりあえずデューデリジェンスはできると言っておけ」という空気さえある業界です。

このような掃いて捨てるほどいる「自称デューデリジェンスもできる専門家」のうち、仲介会社は何を基準にして紹介する業者を選ぶと思いますか?

そんなもの、「自分にとって都合がいいから」以外に何があるでしょうか?

本気で買い手企業のことを心配し、ディールブレイクを進言するデューデリジェンス業者は、二度とその仲介会社からの紹介は得られません。逆に言えば、そうでない業者だけが生き残っているということです。

別にこれは酷い話でも何でもありません。これがM&Aの世界であり、このぐらいのことは当たり前に行われている現実です。

おわりに

今回は、仲介会社からの紹介でデューデリジェンス業者を選ぶことが如何に愚かな行為かについてご説明させていただきました。

繰り返しになりますが、デューデリジェンスは買い手にとってのM&A成功のカナメであり、決して手を抜いてはいけない最重要プロセスです。

「M&Aは究極の自己責任取引」という言葉もあるとおり、自分たち以外誰にも責任転嫁できない厳しい世界です。決してバカバカしい判断で大金をドブに捨てることがないようしましょう。

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