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M&A(買収)

買収M&A前のデューデリジェンスは経営企画が主役になること!

デューデリジェンスと経営企画

M&Aの経験が浅い買い手企業は、良かれと思って多くの間違いを犯し、M&Aを失敗させていきます。

実際、企業買収は経験値が重要な部分もあり、失敗して初めて見えてくることはたくさんあるでしょう。しかし、億単位の投資をする以上、失敗は可能な限り防ぐべきですし、それが事業を託してくれる売り手に対する責務だとも思います。

さて、M&Aを成功させるための非常に重要なプロセスが、デューデリジェンスです。私はこのプロセスこそ、M&A成功のカナメであると考えています。

このデューデリジェンスにおいて、M&A経験の浅い買い手企業に散見されるのが、「業者に丸投げする」という失敗です。買収するのは自分たちなのに、よくも他人に調査を任せられるなぁと思いますが、デューデリジェンスというものを誤解していると、そのような判断になるのも仕方ないのかもしれません。

M&Aのデューデリジェンスは、必ず買い手企業の経営企画が主体となって実施すべきであり、外部専門家はそのサポート役に過ぎません。

今回は、買い手企業として、デューデリジェンスをどのように考え、実行していくべきか、その重要なポイントを解説します。

そもそもデューデリジェンスとは何か?

まず、そもそもデューデリジェンスとは何をするものなのかを確認しておきましょう。

簡易会計監査でも契約書チェックでもない

M&A経験の浅い買い手企業に非常に多い誤解として、デューデリジェンスを「簡易会計監査」や「契約書チェック」だと思い込んでいる方が多くいらっしゃいます。

さらに困ったことに、「デューデリジェンスお受けしますよ!」と宣伝している公認会計士や弁護士ですら、デューデリジェンスについてその程度のイメージしか持っていないことも少なくありません。

M&Aに少しでも慣れた買い手企業が、監査や契約書チェック程度のレポートを提出されたら、二度とその業者には依頼しないでしょう。しかし、それが無意味であることに気付かないまま、ありがたく受け取る買い手企業も多いので、彼らの商売はそれなりに成り立っているのかもしれません。

詳しくは「混同厳禁!『財務デューデリジェンス』と『会計監査』の根本的違い」も併せてご覧ください。

内見せずに家を買いますか?

たとえば、あなたが中古の家を買うとしましょう。売り手や仲介業者から、「この家はとても快適で、広くて、立地もとても便利なお買い得物件ですよ!」と言われて、ああそうですかとすぐに買うでしょうか?

世の中にはそういう人もいるようですが、普通の感覚であれば、現地へ赴いて、内見して、実際に近所を散歩してみなければ、最終的に買うという判断をしないでしょう。少し傷んでると思えば修繕費用を見積もりますし、軟弱地盤ではないかと思えば業者に調査を依頼するのではないでしょうか。

実は、これこそがデューデリジェンスです。Due Diligenceを直訳すると「当然の注意義務の履行」という意味ですが、まさに大きな買い物をするときに、「当たり前に行う調査」をすることこそが、デューデリジェンスというものなのです。

専門知識が必要な調査と、それよりも主観が必要な調査

さて、話を家の購入の例えに戻すと、買い手自らが実施すべきことと、専門業者に依頼して実施すべきことの2つがあります。

修繕費用の見積りや地盤の調査などは、普通は家の購入者はできませんので、外部専門家に依頼すべきことです。一世一代の買い物をするわけですから、しっかりお金を使って行いたいという方は多いでしょう。

しかし、修繕費用が許容範囲内に収まりそうで、地盤も問題なしとお墨付きをもらったとして、じゃあ家を買うかというと、そんなはずはありません。普通はそんなことよりも、家の内部/外見や町の雰囲気、職場や学校との距離などのほうが、遥かに重要な検討要素であるはずです。

つまり、「この家を購入した後、自分と家族にどんな生活が待っているか?」ということを主観的に想像することが、家を買う際のデューデリジェンスの最重要検討要素です。

この検討を外部専門家に丸投げする人はまずいないでしょう。住むのは自分たちであり、自分たちの主観で成功/失敗が判断されるからです。

家の購入をM&Aで考えると

上記の家の購入の例えを、M&Aに戻して考えてみましょう。

修繕費用の調査は財務デューデリジェンス、地盤の調査は法務デューデリジェンスに近いと思います。

そして、肝心カナメの「主観的な調査」は、買い手自身が、対象会社を買収した後でどのように事業運営していきたいか、どんな業績を上げられそうか、その青写真を確認する作業です。

財務デューデリジェンスも法務デューデリジェンスも、M&Aで大失敗しないためにはぜひやっておくべきことですし、そのために業者の力を借りるべきなのは当然です。しかし、外部業者に丸投げしてM&Aが成功すると思うなら、それは現地も見に行かずに転居先を決めるような愚行です

司令塔としての経営企画の役割

上記のように、デューデリジェンスは自社の主体的調査を中心とし、外部専門家の力が必要な補助的な部分を業者に外注するのが、本来あるべきスタンスです。

この中心となるのは、買い手企業内部の経営企画室が最適であると考えます。
なぜなら、デューデリジェンスの司令塔には、限られたリソースを効率的に活用し、その結果を適切に評価するリーダーシップが求められるからです。

具体的には、デューデリジェンスの司令塔を務める経営企画には、以下のような役割が求められます。

経営企画の役割1.専門部署に代わって総合的に調査する

企業が大きくなるほど、その内部は専門特化されていきます。営業部の人に人事や組織を調査させてもうまくいきません。そこで、買い手企業のそれぞれの専門部隊が、売り手企業を分担して調査するのがもっとも理想的な形です。

しかし実際のM&Aは秘密裏に進みますので、各専門部隊がゾロゾロと現場に行くわけにはいきません(基本合意時点で情報開示し、ゾロゾロと見に行くタイプのM&Aもあるにはありますが)。

そのため、基本的には少数名が各部署から調査ポイントを聴取し、代表して現場に行くことになります。

経営企画は経営全般を総合的に管理するのが仕事ですから、このような作業には最適なポジションと言えます。

経営企画の役割2.外部業者に適切な指示を出す

同様に、専門的過ぎて自社のリソースでは十分な調査ができない分野であれば、外部の専門業者に調査を依頼することになります。

しかし、公認会計士や弁護士に「財務や法務をチェックしといてください」とだけ言っても、有効なデューデリジェンスにはまずなりません。「財務」「法務」といった分野も非常に広いので、簡易監査や契約書チェックのような、総花的で中身のない報告書が出てくるのがオチです。

限られた時間で本当に役に立つデューデリジェンスを期待するなら、業者に対して「自分たちはこのM&Aで何をしたいのか?」「対象会社に対して不安に思っていることは何か?」「しっかりと調査してほしい論点は何か?」を伝え、調査に正しく濃淡をつけてもらうことが重要です。

この指示を適切に行うには、M&Aの初期検討から関与し、その狙いや懸念点を熟知した経営企画室がもっとも適任なのです。

経営企画の役割3.調査結果を事業計画に反映させる

基本合意の段階で、買い手企業ではある程度の「買収後の事業計画」を描いているはずです。これに結び付けてM&A価格を設定していることも多いでしょう。

しかし、デューデリジェンスの前段階では、対象会社のことはあまりよくわかっていません。インフォメーションメモランダムなどの売り手からの提供資料や、現地で外観を観察する程度の情報しかなく、あとは想像で補いながら事業計画を作っています。

そのため、デューデリジェンスによって、事前の情報に事実と違う部分や、想像と違う実態が発見されたなら、その都度事業計画を見直していかなければなりません。場合によっては、それによってM&A価格の減額を迫る必要もあります。

このような事業計画のコントロールは、主に経営企画の仕事になりますので、やはりこの点でも経営企画がデューデリジェンスの中心になるべきなのです。

おわりに

今回は、デューデリジェンスにおいて、経営企画がその中心的役割を担うべきということをご説明しました。

上述した経営企画の3つの役割、すなわち、

  • 専門部署に代わって総合的に調査する
  • 外部業者に適切な指示を出す
  • 調査結果を事業計画に反映させる

という仕事は、デューデリジェンス段階になって急に呼ばれた業者には、簡単にできることではありません。外部のサポートを受けることは可能ですが、主役になるべきは間違いなく社内です。

家を買う際の最重要要素は自分たちの主観です。同じように、主観的判断のないM&Aは絶対に行わないように気を付けましょう。

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