合併は厳重な法務手続によって法的に成立しますので、少なからぬ期間が必要になります。

「この事業年度の末までに合併しなきゃいけなかったけど、うっかり着手が遅れて間に合わない!」ということのないように、しっかり所要期間を確認しておきましょう。

合併で時間のかかる手続

合併の法務手続は大きく分けて次の4つの手続が必要です。

  • 会社間の合意手続
  • 株主の承認手続
  • 債権者保護手続
  • 合併登記手続

株主も役員も少ない中小企業であれば、このうち「会社間の合意」と「株主の承認」は、書類を作成して関係者の押印をもらえば完了です。慣れた司法書士に依頼すれば本当にすぐにできてしまうでしょう。

一方、どんな零細企業であっても時間がかかるのが「債権者保護手続」です。これは何をしなければならないかが法律で明確に決められていますので、簡略化することができません。

「合併登記手続」は合併成立後の手続ですので、この記事では割愛します。

債権者保護手続は最低1.5カ月!

債権者保護手続では、主に官報に「合併します!」という内容の通知(公告)を掲載してもらいます。債権者は、公告されてから1カ月以内に合併に反対することができます。

つまり、官報公告は合併成立の日の1カ月前には掲載されていなければなりません

なお、官報は申し込んでから掲載されるまで2週間程度かかります(掲載枠の空き具合にもよります)。そのため、どんなに遅くても1.5カ月程度前には手続を開始しなければ、間に合わなくなります

許認可関係も忘れずに!

また、法務手続という点では、同じくネックになるのが、事業の許認可関係です。

合併によって古い許認可が使えなくなり、改めて取り直す必要がある場合には、合併前に許認可の申請を出さなければ間に合いません。

許認可に関しては再取得の必要性も含めてケースバイケースですので、合併前にデューディリジェンスを実施し、再取得が必要かどうか、いつまでに申請しなければならないかを漏れなく確認しておきましょう

デューデリジェンスについては「合併成功に不可欠なデューディリジェンスのポイント」をご覧ください。

合併の「成功」は法務以外で決まる!

さて、上記は合併の法務的な手続に関しての話ですが、実際の会社は法務だけで回っているわけではありません。営業、購買、財務、人事労務、システムなど、法務以外の問題のほうがずっと大きく、そして大切です。

これらを合併後に大きなトラブルなく統合していかなければならないですし、当初の「合併の目的」を達成する形に作り直していかなければなりません。合併を成功させるチャンスはたったの1度だけなのです

そのため、合併前に「デューディリジェンス」と「合併スケジュールの作成」は必ず実施しましょう(これらについては「要注意!3つの合併失敗事例と成功の絶対条件」をご参照ください)。これらは合併の難易度によって必要な期間が変わりますが、デューディリジェンスの結果合併が中止になることもありますので、債権者保護手続の開始前1カ月程度は確保したいところです。

3カ月程度は確保すべき!

このように、合併は法務・実務においてやることが山積みですので、グループ内の合併であっても3カ月程度はかかるものだと考えましょう。慣れていない会社ほど、しっかりとした準備の上で実施したいところです。