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M&Aをするなら知らなきゃいけない【EBITDA】の意味と計算式

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EBITDAとは

M&Aに関わっているとよく登場するのが「EBITDA」という指標指標です。(読み方は「イービットディーエー」または「イービッダー」、「イービットダー」など)

EBITDAの計算方法は数パターンあるのですが、営業利益に減価償却費を足し戻して計算することが多いです。

この利益指標は計算しやすいこともあり、M&Aの世界では常識になっています。しかし、EBITDAが何を現す利益指標なのか、なぜ重宝されているのかについては、意外と知らない業界人も多いようです。

今回は、個人の中小企業売主からM&Aアドバイザーまで、中小企業M&Aに携わる人ならぜひ知っておきたいEBITDAについてご説明しましょう。本記事をしっかり読み込めば、本当の意味でEBITDAを使いこなせるようになるはずです。

EBITDAの定義と計算式

まずは、EBITDAの定義とその計算式について確認しましょう。

EBITDAの定義

EBITDAは、以下の頭文字をとった言葉です。

Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization

これを直訳すると、

利払い前、税引き前、償却前利益

ということになります。

かいつまんで言うと、「利益から、支払利息と税金と減価償却の影響を排除した数値」です。

EBITDAの計算式(厳密版)

EBITDAの定義通り計算してみましょう。

EBITDAの計算方法

上図左の損益計算書から、減価償却、支払利息、法人税等の影響を外すと、EBITDAは310となります。

つまり、EBITDAの厳密な計算式は以下のとおりとなります。

EBITDA=当期純利益+法人税等+支払利息+減価償却

EBITDAの厳密な計算式

EBITDAの計算式(簡便式)

EBITDAは株式投資の世界で発達した考え方です。株式のトレーダーは大量の企業情報からEBITDAを計算するため、上記のような計算式を扱うのは煩雑です。

そのため、一般的には以下の簡便な計算式を使用することが慣例になっています。

EBITDA=営業利益+減価償却

EBITDAの計算式

比較するとわかりますが、この簡便な方法では、支払利息以外の営業外収益/費用や特別利益/損失分がEBITDAに反映されなくなります。

ただ、これらの損益は少額であったり、多額の場合はイレギュラーな損益なので無視したほうがよかったりしますので、簡便な計算式のほうがむしろ使いやすいという支持を集めています。

中小企業M&AにおけるEBITDAの活用

EBITDAは(簡略な方法であれば)計算しやすく、使いやすい指標です。

中小企業M&Aの場面では、以下のような活用をされています。

EBITDAの活用1.EV/EBITDA法による値決め

値決め基準にEBITDAを活用している買い手企業はかなり多いように思われます。もっとも代表的なのがEV/EBITDA法と呼ばれる値決め基準です。

EV/EBITDA法とは、「M&A対象会社の事業の価値は、EBITDAの〇倍までとする」という値決めの方法です(下図)。

EV/EBITDA法の考え方

EV/EBITDA法の詳しい説明は「DCFなんて嘘?M&Aの入札で買主が本当に使う3つの株式値決め法」をご覧ください。

つまり、多くの買い手企業にとって、EBITDAは入札の上限額を直接左右する重要指標ということになります。

EBITDAの活用2.理論的株価の簡易算定

前掲の「DCFなんて嘘?M&Aの入札で買主が本当に使う3つの株式値決め法」で詳しく説明していますが、中小企業のM&Aでは、ファイナンス理論を駆使した適正な株価というものはあまり意味がありません。

ただし、以下の3つの理由により、簡易的に理論的株価が計算されることがあります。

  • 売り手が、どの程度の価格が付くかといった相場感を知る手段として
  • 買い手が入札前に、予定入札額が異常な値でないかの妥当性確認として
  • 買い手がM&Aを取締役会にかける際の資料として

このようなニーズがある場合、フルスペックの企業価値評価を専門に依頼すると、中小企業でも100万円ぐらいの費用が発生します。そこまでコスト掛ける必要がないときに、簡便な方法として「EBITDAマルチプル」という算定方法が使われます。

EBITDAマルチプルを簡単に言うと、同業の上場会社のEV/EBITDA倍率を調べ、その倍率を使ってEV/EBITDA法を適用するという方法です。

これは理論上適正とされる株価評価の中ではもっとも簡単で、公開情報から計算できるのでコストも割安です。その割には、なかなか精度も高いという理想的な方法なので、気軽にできるというメリットがあります。

EBITDAは何を表す指標なのか

このように、中小企業M&AでもEBITDAは重宝されていますが、そもそもこれはどのような利益指標なのでしょうか。これがわかると、EBITDAが多用されている理由が見えてきます。

EBITDAの特徴1.複数の会社を比較しやすい

損益計算書上の利益は会社の個別事情も含めたすべての損益を反映します。

利息については借入利率や借入額は会社ごとに違います。減価償却も投資した直後は高く、時間が経つにつれ低くなりますし、そもそも会社ごとに減価償却の方法を選択できます。また税率も、地域や企業規模、減税措置の適用有無などによっても変わります。

これら、会社の個別事情から生まれる損益を排除しておくと、多数の会社の利益を並べることができます。

EBITDAの特徴2.投資に対するリターンの性格が強い

減価償却は投資そのものを費用化したものなので、投資の成果(リターン)を考える際には利益から除外したほうがよいものです。

また投資のリターンを測定するという観点では、利息も除外したほうがいいものです。なぜなら、本来は投資をするための資金の出どころは投資の成果には関係ないはずなのに、自己資金で投資した場合と借り入れで投資した場合で利益水準が変わってしまうからです。

そして、税金は減価償却や利息の影響を受けていますので、やはり投資のリターンを考えるうえでは一旦考慮外としたほうがいいでしょう。

このように、投資に対する純然たるリターンを考えるためには、EBITDAこそ最適な利益指標です。

EBITDAの特徴3.営業キャッシュフロー獲得能力を示す

EBITDAは、「営業キャッシュフローの獲得能力を示す指標」とされます。

営業キャッシュフロー自体は専門用語なので細かい解説は割愛しますが、端的に言うと「会社の事業の成果」です。この営業キャッシュフローを、運転資本の増減など一時的な影響を排して評価できる指標がEBITDAとされます。

EBITDAを計算する際の注意点

EBITDAは簡便的には「営業利益+減価償却」で計算されますが、計算する際には以下の点に注意しましょう。

減価償却は製造原価にもある

製造業の場合、「製造原価報告書」を作り、これをもとに損益計算書上の売上原価を計算していきます。

製造原価報告書が作られている場合、その中にも減価償却費がありますので、見落とさないようにしましょう。

一括償却資産は減価償却か

20万円未満の有形固定資産投資は、税金計算上「一括償却資産」としてまとめて3年で償却することができます。このような一括償却資産は、帳簿上では資産計上して3年償却する方法と、取得時に全額費用計上する方法があります。

これをEBITDA計算上減価償却に含めるべきか否かは結構難しい問題です。重要なことは統一された基準で複数の会社を比較することですので、どちらかに合わせてしまうのがいいでしょう。

敷金保証金や長期前払費用の償却は減価償却か

EBITDA計算における減価償却とは、「長期投資を期間按分することで発生する、資金流出のない費用」とされます。

よって、敷金保証金の償却や長期前払費用の償却も、上記定義を満たすなら減価償却として足し戻すべきでしょう。

資金流入のない収益は含めるべきか

一括で長期の前受金を現金で受け取り、何年かにわたって収益として取り崩していくビジネスがあります。この場合、売上高が上がっても、キャッシュフローがあるわけではありません。

このような場合は、減価償却と同様に資金の収支がないのだから、EBITDAから除くべきだという方がいますが、筆者は別意見です。EBITDAはキャッシュフローそのものを表現するものではなく、営業キャッシュフローを生み出す力を表現する指標なので、EBITDA上も売上として計算に含めるべきだと思います。

EBITDAにぜひ含めるべき営業外損益とは?

よくあるのが、借り上げ社宅の支出を販管費に、本人負担額を営業外収益にしているケースです。この場合、支出と収入が表裏一体ですので、両方EBITDAの計算に含めるか、もしくは両方含めないかの調整が必要だと考えます。

おわりに

今回は、M&Aで非常に話題になるEBITDAについてご説明しました。中小企業経営者の場合、あまりなじみがないかもしれませんが、最低限理解しておかなければいけない概念です。買い手側やM&Aアドバイザーはなおさらです。

単に計算式だけ知っているのではなく、それがどういったものなのかもきちんと理解し、様々なケースで使いこなせるようにしておきましょう。

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