M&A(譲渡)

天国も地獄も。M&A後に社員・従業員に待っていた処遇と未来8事例

Treatment and future of M & A employees

事業承継型のM&Aでは、「M&A後の対象会社の社員・従業員の処遇」を心配する売り手オーナーさんが大半です。これまで自分についてきてくれた従業員さんたちを裏切るような気持ちがして、せめて迷惑はかけたくない、不幸になってほしくないと思う方が多いのは致し方のないところです。

結論から言うと、M&A対象会社で働く社員・従業員の処遇は、当たり前ですがM&Aの買い手が決めます。そのため、買い手次第で幸福にもなれば、不幸にもなります

今回は、M&Aで社員・従業員にどのような処遇が待っていて、どのような未来が訪れたか、実際の事例を数点ご紹介しましょう。

社員・従業員が幸せになった4つの事例

まず、社員・従業員さんが幸せになった事例を見ていきましょう。

M&Aは働く環境の激変ですから、うまく波に乗れれば本人にとって大きなチャンスなのです。

幸福事例1.新リソースで活き活きと活躍

営業マンのAさんは、長年働く会社がM&Aすると聞いたとき、非常に不安を覚えたそうです。なぜなら、今まで培ってきたノウハウがリセットされると感じ、新しい親会社のルールで仕事をしなければならなくなることに強い抵抗を受けたためです。

ただ、決まってしまったことは仕方ありません。とりあえず転職したようなものと自分に言い聞かせ、数年やってダメなら本当に転職しようと思い、新しい環境を受け入れることにしました。

真剣に仕事をしてみれば、最初は役に立たなくなると思っていた過去のノウハウが、応用次第でいくらでも活かせることに気付き始めました。新しい環境での仕事がだんだん楽しくなり、営業成績も親会社のプロパー社員より良くなっていきます。

次第に実力が認められ、今ではM&A前では考えられない規模のビジネスを動かすようになっています。

元々実力はあったものの、M&A前は会社の商品力や信用力が理由でできなかったことが、大手のグループ会社になったことでできるようになったとのことです。今振り返ると、M&Aは自分の人生のターニングポイントであり、大きな幸運だったという感想をおっしゃっていました。

幸福事例2.労働条件が大幅改善!

B社では、長年サービス残業が慣行化しており、新しい従業員さんも残業申請できない風土となっていました。また、有給休暇も冠婚葬祭以外は取れないという空気で、昨今の風潮からしていつ労務トラブルが起きてもおかしくない状態にありました。

このような背景もあり、M&Aが行われたのですが、早速買収した上場会社の大ナタで、大幅な制度改革・意識改革が行われました。

有給取得はもちろんのこと、サービス残業は一切禁止。これは単なる掛け声ではなく、定期的に親会社から抜き打ち検査が来る念の入りようで、半年後には完全に根絶されました。

さらに、育児休暇や家賃補助など、親会社の水準に合わせた福利厚生も導入されました。

もちろん、年収が下がることはなく、むしろ上がりましたので、M&A対象会社の従業員さんとしては労働条件が大幅にアップしたM&Aとなりました。

幸福事例3.欲しかった「安定」が手に入る

Cさんは小さな会社で自由に活躍したくて転職してきたものの、結婚や子どもの誕生を経て、会社に安定感を求め始めていました。そんな折、自社がM&Aによって大手の傘下に入ります。

「安定」が手に入ったのは嬉しかったものの、「自由な活躍」ができなくなるのでは?と複雑な気分でしたが、実際には新しい親会社はM&A対象会社の良さを高く評価してくれており、大きな改革はしないという方針でした。そのため、組織文化もほとんど変わらず、Cさんには引き続き「自由な活躍」が求められたのです。

結果として、Cさんは「安定」と「自由な活躍」の両方を高い水準で手に入れることができたのでした。

幸福事例4.まさかの社長に!

事業承継としてのM&Aでは、M&A対象会社には買い手企業から新しい社長が派遣されることが一般的です。しかし、買い手企業に適切な人員がいない場合、外部からスカウトするか、対象会社のプロパー社員から昇格させることになります。

DさんはM&A対象会社の幹部社員でしたが、頭の回転の良さと人望を高く評価され、M&A後の会社を社長として任されることになりました。自分は生涯No.2が限界だと思っていただけに、まさに青天の霹靂だったそうです。

結局は雇われ社長だから気苦労が絶えないと笑っていましたが、親会社の豊富な経営資源を活用しながら、立派に社長の責務を果たしていらっしゃいます。

社員・従業員が不幸になった4つの事例

M&Aは社員・従業員さんたちに幸せだけをもたらすわけではありません。

みんなが幸福になるM&Aがある陰で、不幸が生まれるM&Aも山ほどあります。

不幸事例1.事実上のリストラでサヨウナラ

都内で事業を営むE社は、「M&A後のクビ切りはしない」という約束で、大手小売業に譲渡されました。

ところが、M&Aからわずか半年後、本部社員に対して「再来月から全員〇〇県の親会社に出向するように」との命令が下ります。

皆家も家族もある中での突然の転勤命令。定年までの単身赴任を覚悟した一部社員を除き、大半の社員が退職することになりました。

残った数少ない社員の話によると、転勤先の〇〇県ではほとんど仕事がなく、もしも全員が転勤していたら本当に暇を持て余す環境だったようです。

不幸事例2.新しい組織に馴染めずに・・・

M&Aは、ある意味2つの組織の融合ですので、組織文化の違いを乗り越えることも必要になります。

大手同業他社に買収されたF社は、M&A前は「お客様の喜びがすべて」「お客様の期待に応えつづければ、利益は後から付いてくる」という合言葉の元、お客様第一主義で頑張ってきました。

しかし、M&Aの買い手からすると、巨額の投資をしている以上「利益は後から付いてくる」という姿勢は悠長すぎます。特に今回の買い手は「戦略的にビジネスを組み立てなければ儲かるはずがない」という組織文化だったため、少なからぬ予算達成目標を対象会社に押し付けてきました。

このような方針転換でも、中で働いている人にとっては激震です。結局、新しい組織文化に馴染めず、多くの社員が退職していきました。

不幸事例3.お上の不手際の煽りを受けて・・・

G社は業界準大手の会社に買収されました。買い手企業にとっては初めてのM&Aであり、そのせいかデューデリジェンスもどこか表面的なものでした。

さて、そうはいってもM&Aが成立したので、取引先に対し、M&Aの事実を一斉に挨拶メールで通知しました。

すると、その直後から現場の担当者に問合せの電話が殺到します。取引先にとっては今後の取引が継続するのかしないのかに関わる重大な問題なので当たり前です。

しかし、買い手も売り手もM&Aの経験がなかったため、ここまで大量の問合せは予測していませんでした。当然、現場担当者は本人ですら最近M&Aを知らされた身ですので、的確な回答なんてできるわけがありません。

慌てて親会社の総務部に質問の問合せ窓口を作りますが、対象会社のこれまでの取引経緯をまったく知らない親会社の総務部では気の利いた回答ができず、やっぱり現場担当者に苦情が届くほど。

現場にとっては、自分が介入していないM&Aによってとんでもない迷惑が降ってきた話で、大きなストレスを抱えることになりました。

不幸事例4.とにかく不安が募った挙句・・・

M&Aを知らされた途端、「この先どうなるのだろうか」と思うのは取引先だけではありません。社員・従業員本人がそれ以上に不安を覚えます。

H社は遠方の同業大手に買収されましたが、M&A公表の日に新しい親会社の役員が挨拶に来たぐらいで、ほとんど何のアクションもありませんでした。一見何も変わらないように思えましたが、社員・従業員さんの心の中ではじわじわと不安が高まっていきます。

このとき、従業員さんの「今後我々の処遇はどうなるのか?」という疑問に明確に答えることができればよかったのですが、実際には親会社側でもはっきりした方針は決まっていませんでした。実はこのM&A自体が親会社の社長の独断で決定してしまったような状態で、ほとんど何の方針も決まっていないままM&Aが成立してしまったのです。

従業員さんからすれば、誰に何を質問しても「先のことはまだ未定」という回答しか返ってこないため、非常に不安を覚えます。結局、業務内容はほとんど何も変わっていないにも関わらず、幹部社員であった人々の半数近くが退職してしまいました。

M&Aの難関はヒトの問題

上記のとおり、M&Aでは社員・従業員さんたちが幸せになることもあれば、不幸になることもあります。売り手オーナーさんとしては可能な限り幸せになってほしい、不幸になってほしくないという気持ちがあるでしょう。

実際、これはある程度は本人の考え方や偶然の要素もありますが、売り手オーナーさんとしてできることは決して少なくありません。

最重要なことは、後継者となる買い手をしっかり見極めること、そして、買い手と対象会社の架け橋としてM&A後もサポート役に努めることです。

M&Aで社員・従業員さんを不幸にしない具体的な方法について、「会社売却M&Aで従業員を不幸にしないためのポイント10選」で解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

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