M&A(譲渡)

M&A・会社売却の【相場変動】と【売り時】の考え方

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M&Aの相場変動と売り時

M&Aの売り手オーナーさんからよく訊かれる質問として、「うちの会社って今が売り時なんでしょうか?」「来年まで売却を伸ばしたら損しますか?」などの質問です。

確かに、業種ごとのM&A価格に長期の相場変動が存在することは事実です。去年まで買い手がつかなかったのに、急に同規模の会社が高値で売買されたり、逆に売り時を逃すことでずいぶん安値でしか売れなくなってしまうこともあります。

ただし、結論から言うと、このようなM&A市場の相場変動を予測することは不可能です

仲介会社などのM&Aアドバイザーは、物知り顔に「この業界は今こそ売り時ですよ!」「あと数年で相場が値崩れしますよ!」と言いますが、そうかもしれないし、そうでないかもしれません。真に受けないようにしましょう。

これは、M&A価格がどのように決まるかを考えるとよくわかります。売り時を軽々しく口にするM&Aアドバイザーが本心からそれを言っているとすれば、M&Aの本質をあまり理解していないのかもしれません。

今回は、M&A市場が予測不可能な理由と、それでは売り時とはいつなのかについて意見を書かせていただきます。

M&Aの相場変動が絶対に予想できないワケ

将来のM&A相場を予想することはできません。

あるベテランのファイナンシャルアドバイザーは、「10年前に、売り手には『この業界は今、異常な高値相場になっているから、今が売り時ですよ!』、買い手には『今買うのは高すぎます。相場が下がるまで待ったほうがいいですよ』と言っていたが、結局10年間で相場は下がるどころか上がり続け、忠告を無視して買った会社が勝ち組になっている」と言っていました。

この方は大手銀行に勤めるプロ中のプロでしたが、それでも相場変動を読むのは不可能に近いということです。ちなみに、この10年間の間にはリーマンショックと東日本大震災がありました。

なぜM&Aの相場変動は予想できないのか、その理由を考えてみましょう。

予想不能の理由1.未来のことは誰にもわからない

来年の日経平均株価はどうなっているでしょうか。それは誰にもわかりません。

米中の貿易戦争や北朝鮮問題、中東をめぐる問題など、景気に影響を与える要因が非常に多く、予想するのは不可能です。株式投資の雑誌を読んでもプロのアナリストの意見はバラバラですし、実際に当たったり当たらなかったりです。

なお、「2020年になったら東京オリンピックバブルが弾けて日経平均は確実に下がる」と言う方がいますが、本当にそうでしょうか。中国も北京オリンピックまでと言われていましたが、その後も成長を続けているように思えます。

そもそも、将来確実に相場急落が来るとわかっているなら、市場は今からそれに備えて下落するはずです。今そうなっていないとしたら、多少なりとも期待が残っているということでしょう。

予想不能の理由2.M&A価格は主観で決まる

「理論上適正な株価」というものは、景気が良くなれば上がり、悪くなれば下がります。つまり、日経平均やTOPIXなどの景気指標と連動します。しかし、実際のM&A価格がこれらと連動するとは限りません。

なぜなら、(特に中小企業M&Aにおいては)M&A価格は理屈ではなく、買い手の主観で決まるからです。

DCF法やマルチプル法などの「理論上適正な株価」は、現実のM&Aにおいては参考情報でしかありません。M&A価格は、買い手の価値感、M&A後の損益予想、交渉上の駆け引きなど、その時々の心の中の主観よって決まります。景気は買い手の心を動かす1要因ではありますが、それ以上のものではありません。

現実的に、買い手はどのようにM&A価格を決めているかについては「DCFなんて嘘?M&Aの入札で買主が本当に使う3つの株式値決め法」を、M&A価格を構成する要素については「のれんとは何か? M&Aでしか得られないプレミアムのお話」を、それぞれご覧ください。

予想不能の理由3.景気が悪いときにM&A価格が上がる要因

なお、景気の悪化した際には、「買い手が弱気になる」「損益計算書の見栄えが悪くなる」「買い手が買収資金を確保しづらくなる」といった、M&A価格を下げる要因が現れます。

一方で、「他に有力な投資物件が見つからなくなり、通常の投資よりM&Aに頼るようになる」「本業の業績悪化リスクに備えるため、異業種に参入する企業が増える」「不景気にもかかわらず業績が悪化しない会社なら希少価値が上がる」といった、逆にM&A価格を引き上げる要因も存在するのです。

このように、プラスとマイナスの効果が混じりますので、やはり予想するのは不可能です。

予想不能の理由4.「希少性」が最重要要素

なお、M&A価格に影響を与える要因は非常に多いのですが、もっとも重大な影響を与える要因は「希少性」ではないかと考えています。

つまり、同業で同じ規模感の会社がたくさん売りに出ていれば価値は下がります。一方で、これまで出ていなかった会社で、なおかつ買い手が本気で「欲しい」と思える要素を備えていれば、M&A価格は信じられないほど高騰することがあります。

これは、会社というものが究極の「一点物」であり、逃すと同じ会社は絶対に手に入らないためです。それを手に入れるために、買い手は時に採算度外視の判断を下すことがあります。

このような「希少性」は、ある意味相場変動を超越したものですので、やはり予測することは不可能です。

それでは売り時はいつかを考える

上記のように、M&A価格の相場変動を予想することは不可能です。しかしその一方で、「優秀な中小企業経営者は売り時を知っている」という言葉もあります。

では、中小企業オーナーさんにとって、M&Aの売り時についてはどのように考えたらいいのでしょうか。

売り時は会社内部を見て考えよう

結局のところ、会社の外ばかり見ていても相場変動は読めません。会社の価値を決める最大の要素は「買い手から会社がどう見られるか」ですので、良い見栄えのときに売るのがもっとも確実な売り時です。

買い手から見て良い見栄えのときとは、以下のようなときです。

  • 売上高や損益が安定している、または伸びている
  • 今後も業績の伸びや安定が期待できる
  • 会社の問題点が明確で、それを解決すれば業績アップが期待できる
  • 会社を支えるキーパーソンが明確で、これからも長く働いてくれそうだ

一方、見栄えが悪くなるのは上記が崩れるときです。

  • 競合の進出で業績悪化の可能性が高い
  • 会社に問題点が多く、手を付けらない状態になってきた
  • キーパーソンが辞めそう

良い見栄えから悪い見栄えに転換しそうな時期であれば、まさにそのときこそ「売り時」であると思います。

社長の健康・年齢も大事な要素

なお、(売買が成立する場合限定で)M&Aの売却理由を見ると、おそらく第1位はオーナー経営者の健康不安や年齢ではないでしょうか。

これらは売り時とは関係のないタイミングでの売却と思われるかもしれませんが、実際には社長が健康不安を抱えたまま業績を維持・発展させていくことはできません。

その意味では、業績が悪化する前に売るという、確かな売り時になっているように思われます。

おわりに

今回は、M&A価格の相場変動を予測することは不可能であること、その理由と、では売り時をどう考えるべきかという点について、私見を述べさせていただきました。

結論としては、会社外部のM&Aアドバイザーに売り時を判断することはできません。それが判断できるのは社長だけです。

予測できないものに一喜一憂していても仕方ありません。それは諦め、予測できることだけ見て「売り時」を考えていきましょう。

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