M&A(譲渡)

会社売却M&Aで従業員を不幸にしないためのポイント10選

M&Aと従業員

中小企業M&Aで、売り手オーナーさんが特に気にされることが多いのが、残される従業員さんたちのことです。

特に事業承継のM&Aでは、従業員さんの継続雇用がそもそものM&Aの目的であることも多く、M&A後に従業員さんたちが不幸になってしまったのでは本末転倒です。

残念ながら、M&A仲介会社が宣伝する「みんなが幸せになるM&A」というのは、一部の成功例をピックアップしたものです。従業員さんが不幸になるM&Aは多数とまでは言いませんが、それなりの割合発生しているのが現実です。

しかし、売り手オーナーの心がけ次第で、不幸なM&Aになる可能性を大幅に下げることは可能です。

今回は、どうすれば従業員が不幸になるM&Aを回避できるか、そのポイントについて説明しましょう。

従業員が不幸になるM&Aとは

従業員さんをM&Aで不幸にしないためには、どういったときに不幸になる事態が起こるのかを知っておきましょう。

従業員さんが不幸になるM&Aの典型的な例は、次の3つになります。

  1. M&A後の望まない変化が大きい
  2. M&A後の会社と反りが合わない、尊重してもらえない
  3. 買い手企業がM&A慣れしておらず、不要な不安やストレスを抱かせる

いずれの場合も、従業員本人からすれば深刻な事態です。従業員さんを不幸にしないためには、これらを最小限に抑える必要があります。

不幸例1.M&A後の望まない変化が大きい

M&A後に首切りをする買い手企業は少数派ですが、存在します。我が国は整理解雇が難しいこともあり、遠隔地への転勤や窓際に追いやることで自己都合退職に誘導する会社もあります。

意図的にそこまでする会社は多くはありませんが、買い手として、事業の都合により配置転換や賞与減額などをせざるを得ないこともあります。

このような本人が望まない変化があまりに大きい場合、従業員さんにとって不幸以外の何物でもないでしょう。

不幸例2.M&A後の会社と反りが合わない、尊重してもらえない

M&A対象会社の組織文化と買い手の組織文化が異なることはよくあることですが、買い手がM&A後に利益を上げるために、対象会社の組織文化の一新が必要になることがあります。

この場合、元々の対象会社の組織文化が好きだった人にとって、大きなストレスになります。

さらに悪いパターンとして、「買収された会社のプロパー従業員は絶対に出世できない」という空気の会社があるのも事実です。

鶏口牛後という言葉がある通り、グループ会社の規模が大きくなることは、必ずしもすべての従業員にとって嬉しいことではありません。

不幸3.買い手企業がM&A慣れしておらず、不要な不安やストレスを抱かせる

M&Aを成功させるためには、買い手企業側でもある程度の「慣れ」が必要です。

方針としてはプロパー従業員さんたちに迷惑を掛けないように、辞めてしまわないようにと心がけていても、初めての買収だとM&A後のトラブルが抑えきれず、対象会社のプロパー従業員にシワ寄せが行ってしまうことがあります。
たとえば、買い手が重要な取引先への挨拶を見落とし、全然責任のない現場の従業員が怒られることもあります。

実は買い手にとっても、M&Aで一番頭が痛いのが「ヒトの問題」です。ヒトのトラブルは買い手の実力不足によるケースが一番多く、みんなが不幸になるM&Aになってしまうこともあるのです。

従業員を不幸にさせない10のポイント

では、上記のような不幸を抑え込み、従業員に迷惑を掛けずM&Aを成功させるためにはどうすればよいでしょうか?

業種業界や売り手と買い手の規模にもよりますが、売り手オーナーさんとして、以下のポイントは押さえておきましょう。

  1. 従業員を任せられる誠実で優秀な買い手を選ぶ
  2. 買い手の組織文化を理解し、相性を考える
  3. M&A後の人事計画を詳しく聞き取る
  4. しっかりとデューデリジェンスしてもらい、情報共有する
  5. 契約書に不利益変更の禁止条項を加える
  6. 情報開示の段取りに要注意!
  7. 買い手にM&Aを語ってもらう
  8. 「未定」はなるべく言わせない
  9. 買い手の事業引継をサポートし、関係者に迷惑を掛けない
  10. 買い手と対象会社の架け橋を積極的に請け負う

以下では各ポイントを解説します。

ポイント1.従業員を任せられる誠実で優秀な買い手を選ぶ

一番重要なポイントです。

従業員の幸せをM&Aの重要条件の1つにするなら、トップ面談などで従業員を任せられる相手かどうかを見極めましょう。

トップ面談については「最良の後継者を選ぶM&Aでのトップ面談の7つの意義と6つの準備」をご覧ください。

買い手選びはオーナー社長としての最後の大仕事です。買い手が不誠実な相手ではないかを見抜き、徹底的に品定めしてから選び出しましょう。

ポイント2.買い手の組織文化を理解し、相性を考える

自社が割とのんびりした会社であれば、ノルマに縛られたゴリゴリ営業をする会社に売るのは考えものです。

「わが社に必要なのはもっと緊張感がある企業文化だから、ゴリゴリの会社に売るべきだ!」というように、敢えて組織文化の違う会社に売ることがプラスに働くこともありますが、軽慮浅望に違う組織文化を押し付けると大量退職を招きます。

従業員さんを不幸にしないという観点を重視するなら、基本的には近い組織文化でより成功している会社のほうが、安全性は高いでしょう。

ポイント3.M&A後の人事計画を詳しく聞き取る

買い手候補を一本化する際に確認したいのが、M&A後の人事計画です。

従業員の給与テーブルが改定になるのか否か、退職金制度はどうするつもりなのか、業績評価方法は変更になるのかなど、買い手候補それぞれが考えている人事計画を選定の参考にしましょう。

オーナー社長であるご自身が退任した後、後任に送り込まれてくる予定の人の経歴なども聞いておきたいところです。

ポイント4.しっかりとデューデリジェンスしてもらい、情報を共有する

買い手のデューデリジェンスが甘いことは、売り手にとって必ずしも良いことではありません。M&A後の従業員さんのことを考えるなら、むしろデューデリジェンスをしっかり実施してもらったほうが良いでしょう。

なぜなら、デューデリジェンスは買い手が「M&Aの成立直後にまず何をしなければならないか」を確認する手段でもあります。迅速に事業引継ぎに着手してもらえれば、現場が混乱するリスクが下がります。

詳しくは「M&Aのデューデリジェンスが甘い買い手に売り手が注意すべき理由」をご覧ください。

ポイント5.契約書に不利益変更の禁止事項を加える

M&Aでは、「〇年間は従業員の解雇・不利益変更は行わない」という条項を加えるのが一般的です。あまり長い期間を要求することはできませんが、入れておく分にはよい条項でしょう。

ただし、悪質な買い手だと従業員を自己都合退職に誘導していきますので、過信は禁物です。

ポイント6.情報開示の段取りに要注意!

従業員さんたちにM&Aを実施したことを公表する段取りには細心の注意を払いましょう。

最悪なのは、従業員さんたちが公式発表ではなく、噂によってM&Aの事実を知ってしまうことです。想像すればわかるとおりショックですし、自分たちが駒のように扱われたと感じるでしょう。

また、上場会社の場合はM&Aについて投資家に発表することがあります(適時開示)。同じか直前のタイミングで一斉に社内公表しましょう(適時開示前はインサイダー情報なので要注意)。

ただし、幹部役員や管理職、キーパーソンには、事前に内々に伝えておきましょう。これは、末端社員と同列に扱っていないという姿勢を示すとともに、一斉公表後の部下からの質問に対応する余裕を作っておく意味でも重要です。

ポイント7.買い手にM&Aを語ってもらおう

社内への一斉公表と同時か、またはそれ以降なるべく早いタイミングで、買い手企業の然るべき役職の人に来てもらい、全社員の前で挨拶してもらいましょう。

このとき、なるべく「なぜあなたたちをグループ会社に迎え入れたのか」「これからどんな事業展開を目指していくのか」「あなたたちの雇用条件はどうなるのか」などを語ってもらいましょう。

買収される側は、「救済買収なのではないか」「自分たちはリストラされるのではないか」など、多くの不安を感じます。新しいボスが、直接未来を語ってくれれば、不安は大幅に緩和されます。

なお、挨拶の内容は事前に打ち合わせておき、従業員さんが不快に思うような「NGワード」がないか確認しておきましょう。

ポイント8.「未定」はなるべく言わせない

上述のとおり、M&Aで買われた会社の従業員さんたちは、「自分たちはこれからどうなるんだろう」と強い不安を感じます。そのため、上司や買い手企業の人、そして売り手の元社長に「これからどうなるんですか?」と具体的なことを色々質問してきます。

このときの一番最低な回答は、「それはまだ未定」というものです。これほど不安を増幅させる言葉はありません。

M&A直後は、実際に未定事項はたくさんあります。しかし少しでも未定という回答をしないよう、想定される質問や大きな方針については、M&A公表前から事前に打ち合わせておきましょう。

ポイント9.買い手の事業引継ぎをサポートし、関係者に迷惑を掛けない

M&Aをすると、案件公表の直後から迅速に事業の引継ぎを行う必要があります。
特にこれまで社長がしていた仕事は、新しい社長に迅速にバトンタッチしなければいけません。

ここでつまづくと全社的に混乱が広がり、現場の社員に思わぬ迷惑が掛かります。

一度社員が「このM&Aは我々にとって良くなかった」と強く感じてしまうと、これを覆すのに非常に苦労することになります。

ポイント10.買い手と対象会社の架け橋を積極的に請け負う

最後に、買い手企業と対象会社の従業員さんたちの架け橋役として、M&A後も積極的に仲介役を担いましょう。

たとえば懇親会には可能な限り参加する、悩んでいる従業員の相談役として話を聞くなど、できることは少なくありません。

ただし、基本的には買い手の意向を踏まえて行動しましょう。買い手は従業員の本音を引き出すため、元社長抜きで懇親会を開くこともありますので、呼ばれなかったときでも不快に思わないようにしてください。

努力次第で、不幸は最小限に抑えられる!

従業員さんが不幸になるM&Aもあれば、新しいチャンスを得て活き活きと働くM&Aもあります。

大事なことは、売り手オーナーとしてどのような後継者を選び、どれだけサポート・フォローできるかという点に尽きます。

不幸になる人やその確率を最小限に抑えるために、できることはたくさんあることを知っておきましょう。

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