M&A(譲渡)

初めてのM&Aでデューデリジェンスを受ける際の6つの準備と心構え

デューデリジェンスの受け方

中小企業のM&Aで売り手オーナーや対象会社の大きな負担になるのが、「デューデリジェンス」と呼ばれる買い手からの調査です。(略して「DD」または「デューデリ」)

これは入札後に行われることが多いですが、会社の重要な部分(事業の内容や状況、従業員や組織、財務内容や資金繰り、法務トラブルや許認可など)について、数日間のインタビューや資料調査により実施されます。

デューデリジェンス期間中は経営者は質問攻めに会うことも多く、不慣れな中小企業オーナーの中にはへとへとになってしまう方もいます。特に、事前の予備情報なくデューデリジェンスに突入してしまうと、あまりのしんどさにM&Aが嫌になってしまうかもしれません。

そこで今回は、初めてデューデリジェンスを受けるときの予備知識や心構え、準備などをご紹介しましょう。

初心者のためのデューデリジェンスの基礎知識

まずは、前提としてデューデリジェンスとは何かについて知っておきましょう。

デューデリジェンスとは

一言でデューデリジェンスと言っても、目的に応じてその内容は大きく変わります。目的がM&A(株式や事業の売買)である場合のデューデリジェンスを定義すると、以下のようなイメージになるでしょう。

M&Aにおけるデューデリジェンスとは、買い手が買収前に、M&A対象会社の経営に関する重要なすべての情報を理解・確認・分析するための調査である。

デューデリジェンスは「買収監査」と訳されることがありますが、実態は上記定義のとおり「調査」ですので、あまり的確な翻訳ではないと考えています。

デューデリジェンスの役割

デューデリジェンスは、買い手が売り手の経営上の重要事項を理解し、投資判断(買うか買わないか、いくらで買うか、どんな条件なら買うかといった判断)を的確に行うための情報収集です。

買い手の立場で考えてみてください。中小企業のM&AではM&Aプロセスが始まるまで買い手は対象会社の名前も知らなかったということも多いですし、投資判断に必要な情報はインフォメーションメモランダムだけで入手しています。

M&Aは単なる資産の売買ではなく、事業に関するの商流や従業員、過去の債務といったすべてを買い取る取引です。インフォメーションメモランダムの情報が正しいかの確認は当然必要ですし、インフォメーションメモランダムの情報だけでは完全な投資判断材料としては不十分です。

そこで、M&A前に投資判断に必要な事項の調査を行います。これがデューデリジェンスです。なお、Due Diligenceを直訳すると「当然の注意義務の履行」という意味です。

デューデリジェンスの調査内容

デューデリジェンスは、買い手がM&Aを決断する上で必要と考えるすべての情報を調査します。たとえば、以下のような内容が調査・分析されます。

  • 会社の沿革
  • 直近のビジネスの状況
  • 商流や物流、取引先
  • 商品・サービスの構成比と競争力
  • 組織図と実質的な経営メンバー、各人の権限
  • 役員・従業員の人数、年齢、給与
  • 事業のキーパーソンとその役割、経歴、性格
  • 労働時間と残業手当の支給状況
  • 決算書の数値の妥当性、適用している会計方針
  • 資金繰り状況の分析
  • M&A後に削減可能なコスト
  • 法務トラブルの有無、今後の発生可能性
  • 特殊な契約関係の有無
  • 使用しているITシステム

これらはあくまで一端で、買い手の要望やM&A戦略に応じてさらに詳細・広範な調査がなされます。

デューデリジェンスのチーム

デューデリジェンスのうち、財務や法務に関することは専門的すぎて買い手会社だけでは難しいため、それぞれ公認会計士や弁護士を中心としたデューデリジェンス専門のコンサルタントが請け負います。
それ以外のビジネス面は買い手会社の人が調査するのが一般的です(ファンドが買う場合は別途コンサルタントが請け負います)。よって、デューデリジェンスは以下の3チームで行うことが多いです。

  • ビジネスデューデリジェンス
  • 財務デューデリジェンス
  • 法務デューデリジェンス

その他、案件によっては、人事労務デューデリジェンスチームやITデューデリジェンスチームが別途作られ、専門家が呼ばれます。(通常はこれらはビジネスデューデリジェンスの一部として、買い手会社の人が実施します)

デューデリジェンスの場所と期間

デューデリジェンスの期間は本当にまちまちですが、中小企業の場合、3~5日程度の現地調査・インタビューが組まれることが多いです。

なお、デューデリジェンスを行い、各チームの報告を検討した結果、もう少しインタビューさせてほしいという依頼を受けることもあります。

ただし、情報統制や地理的な事情により、現地にはほとんど行かず、資料を遠隔で開示したり別の場所でインタビューを行うこともあります。この場合は、デューデリジェンス期間は長くなります。

初めて受けるデューデリジェンスの準備と心構え

では、そんなデューデリジェンスを受けるときは、どのような準備をし、どのような心構えで対応すればいいでしょうか。以下では大事なポイントについてご紹介します。

準備と心構え① 誠実な気持ちで対応する

デューデリジェンスでは、何か取り調べを受けているような気がし、都合の悪いことは隠そうとしてしまう人がいます。しかし、それは相手の心証を悪くするだけです。

デューデリジェンスの専門家は、相手の嘘や後ろめたさを見抜く経験値に長けています。余計な抵抗はせず、都合の悪いことも真摯に伝えましょう。

準備と心構え② 資料は整えておく

これはできればM&Aプロセスを開始する前からやっておいたほうがいいのですが、会社の経営に関する資料は事前に整理しておきましょう。デューデリジェンスでは大量の依頼資料リストが届きます。いちいち探していたらそれだけでくたびれてしまいます。

整理しておきたい資料は、以下のようなものです。

  • 定款
  • 株主名簿(株主の変遷がわかるもの)
  • 経営管理に使っている資料(月次の部門別損益など)
  • 取締役会や経営会議の議事録
  • 契約書類(契約書台帳まであるとベスト)
  • 決算書・税務申告書一式
  • 過去に作った事業計画書
  • 税金の納付証明
  • 就業規則
  • 出勤簿

資料が未作成・紛失の場合

資料が作成されていなかったり、紛失してしまっている場合、バックデートで無理に作るべきではありません。ないものは「ない」と回答すべきです。

その場合、実際のところどうだったのか、周辺資料や口頭インタビューにより回答することになります。

準備と心構え③ 期間中は極力スケジュールを空ける

デューデリジェンス期間中はすべての時間スタンバイする必要はありません。他の仕事や私用で席を外すことは可能です。

ただし、社長へのインタビューなくしてデューデリジェンスは進みません。資料閲覧→インタビュー→資料閲覧→インタビューというふうに複数回のインタビューを受けますので、柔軟に時間調整できるよう極力空けておきましょう。

準備と心構え④ M&Aを知る社員、知らない社員の区分は明確に

デューデリジェンス開始前に、M&Aの件を知っている社員全員をデューデリジェンスチームに伝えましょう。これはデューデリジェンスチームがM&Aの件を知らない社員に不用意なインタビューをしてしまい、情報が洩れることを防ぐためです。

また直接話しかけられなくても、転職前にデューデリジェンスを受けたことがある社員の場合、二度目に受ければピンときます。本来知らない社員に会社がデューデリジェンスを受けていると悟られないようにしましょう。

次に記載する「口裏合わせ」も重要ですが、M&Aのことを知らない社員はデューデリジェンスチームと極力接触させないのが賢明です。

準備と心構え⑤ デューデリジェンスチームの「口裏合わせ」

デューデリジェンスチームは、会議室を数日間独占して会社の秘密情報を調べていますので、M&Aの件を知らない社員からすると異様な人々に映ります。「あの人たち誰ですか?」と訊かれるかもしれませんし、本人たちに直接探りを入れる社員もいるかもしれません。

そのようなとき、回答者によって回答に齟齬があるといけないので、デューデリジェンスチームの名目は口裏を合わせておきましょう。

たとえば、「税務調査」や「経営コンサルタントの事前調査」などと名乗ってもらう方法があります。M&A関係の仕事が長い人は結構嘘をつくのが得意だったりします。

準備と心構え⑥ デューデリジェンスチームにイライラしない

最後に、デューデリジェンスは会社の不備もさらしていきますので、だんだんとイライラしてくる方もいらっしゃいます。

デューデリジェンスを受託する会計士や弁護士も、監査法人しか経験していない人や買い手の顧問税理士というだけで参加している人もいますので、質問が的外れだったり木を見て森を見ずだったり、時には大変失礼な物言いをすることもあり、なおさらイライラするものです。

ただし、それを態度に出したり、資料開示を無意味に拒んだりすると、買い手に「信用できない社長」というレッテルを貼られたり、「我々は相性が悪い」と思われたりするリスクがあります。「器の大きい社長」と思われるようぐっとこらえたほうが、その後に控えるM&A交渉やM&A後の協力がスムーズになります。

おわりに

今回は、初めてデューデリジェンスを受ける方向けに、デューデリジェンス成功のための準備と心構えをご説明しました。

デューデリジェンスの発見事項によって入札額の減額が要求されることもありますが、それは本来の適正額になるということなので、仕方のないことと割り切りましょう。

なお、デューデリジェンス後の価格交渉で少しでも有利な条件を価値取る交渉術については、「【売主向け】DD後の最終条件交渉で勝つM&A価格交渉術」に記載していますので、ぜひご覧ください。

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