M&A

M&Aで重要な【シナジー】の意味・種類と売買価格への反映方法

シナジー効果の意味と価格反映

M&Aに興味を持たれている方であれば、「シナジー効果」という言葉は常識のようにご存知だと思います。

ただ、実際のM&Aでシナジー効果を実現することは簡単なことではありません。もう少し補足すると、シナジー効果には比較的実現しやすいもの、努力すれば実現できるもの、努力と運が重ならなければ実現できないものがあります。

そのため、単純に「シナジー効果が期待できるからこのM&Aは順風満帆だ」というものでもなければ、「シナジー効果でM&A価格を高くできる」というものでもありません。

そこで今回は、シナジー効果というものがどういったものかをもう少し詳しく理解していただくとともに、M&A価格にどのように織り込まれていくかについてご説明します。

本記事を読んでいただければ、M&Aを行う上で知らなければいけないシナジー効果の知識が身につき、価格交渉への利用方法も理解できるでしょう。

シナジー効果の意味

シナジー(Synergy)を直訳すると、「相乗効果」という意味があります。M&Aは2つの会社を融合することですので、「買い手企業とM&A対象会社の相乗効果」を意味します。

相乗効果が生まれる仕組み

M&Aの相乗効果は、以下のような仕組みで生まれます。

  1. 買い手企業の経営資源を対象会社に適用することで、対象会社にメリットが生まれる
  2. 対象会社の経営資源を買い手企業に適用することで、買い手企業にメリットが生まれる
  3. 双方の経営資源を融合することで、まったく新しい経営資源が生まれる

中小企業M&Aで意識されやすいのは1のシナジーですが、2,3のシナジーを求めてM&Aが行われることも、決して少なくはありません。

一方的なシナジー効果

なお、中小企業のM&Aは「大きな会社が小さな会社を買う」という構図になりやすく、対象会社にばかりメリットが集中して、大きな会社側でほとんどメリットがない場合があります。

一方的なものを相乗効果と呼ぶべきかは難しいところですが、中小企業M&Aの現場ではこれもシナジー効果に含めることが一般的です。よって、当サイトでは特別な断りがない限り、一方的なシナジー効果も含めて解説します。

シナジー効果の種類

シナジー効果には様々な種類がありますので、ここで主要なものを整理しておきましょう。分類を整理しておくことで、後述のシナジーの実現可能性や価格織り込みの仕組みが理解できるようになります。

収益シナジー

買い手と対象会社の事業が連携することによるシナジー効果を「収益シナジー(レベニューシナジー)」と呼びます。

2016年にプロ野球のDeNAベイスターズが、本拠地球場である横浜スタジアムを買収しました。このM&Aの裏側には、DeNA主導のテコ入れで球場の利便性やエンターテイメント性を向上し、球場の収益性を強化するとともに、ベイスターズの人気も引き上げようという、営業上の戦略があります。

収益シナジーはM&Aの華ともいえる派手さがありますので、大変注目されやすいものです。ただし後述のとおり、実現は簡単ではなく、絵に描いた餅に終わることも少なくありません。

コストシナジー

買い手企業と対象会社が連携することで、トータルコストを下げていくというシナジー効果です。

共通化コストシナジー

中小企業M&Aで非常に多いシナジー効果が、M&A対象会社の本部機能を大幅に縮小し、必要な分は買い手企業が請け負うというものです。対象会社の本部費を大幅削減でき、これだけで利益を上げることが可能になります。

事業コストシナジー

事業を連携させることによって売上対比のコストを削減していく効果です。

M&Aをすると売上規模が足し算になりますので、規模の経済を利かせやすくなります。また、買い手と対象会社で仕入・購買の単価マスターを突き合わせ、低いほうの単価に下げるよう価格交渉する方法もあります。

税金シナジー(タックスシナジー)

のれんの節税効果や繰越欠損金の活用など、M&Aにより発生する節税効果に注目したシナジーです。

のれんの節税効果については、「M&A価格を跳ね上げる最強の【のれんの節税効果】徹底解説」をご覧ください。

財務シナジー

財務基盤が不安定な対象会社が、資金余力が潤沢な買い手企業の傘下に入ることで、増資などにより資金余力が改善し、無用な借入金利息などを発生させないことができるという効果です。

一方的シナジー効果の代表例ですが、中小企業M&Aでは結構意識されることの多いシナジー効果です。

信用力シナジー

こちらも一方的シナジーの代表例ですが、M&A対象会社が著名な大企業の傘下に入ることで、高いブランド力を手に入れ、営業のみならずリクルートや仕入先開拓などでメリットを生むシナジーです。

M&Aを公表するだけで、ある程度効果が出るのですが、その効果の規模を事前に予想しておくのが難しいシナジー効果でもあります。

負のシナジー(ディスシナジー、アナジー)

負のシナジー(ディスシナジー、アナジー)とは、2つの会社が合わさることでマイナスの効果を生んでしまうことです。

大手A社の傘下に入ってしまうことで、そのライバル会社であるB社との取引がなくなってしまったり、大手参加というだけで家賃の値上げ交渉を受けたりすることがあります。

シナジーを考えるときは、その反作用としての負のシナジーも考えておくべきでしょう。

シナジー効果の実現可能性

シナジー効果の実現性には濃淡があります。シナジーを考えるうえでは、その実現可能性についてもよく考えておくべきでしょう。

比較的実現しやすいシナジー効果

自社内の判断・努力だけで実現できるシナジー効果は、比較的実現しやすい部類に入ります。

共通化コストシナジーと財務シナジーは比較的実現しやすいシナジー効果に該当します。これらは会社内部のことであり、経営者の決断と現場の努力でほとんど効果を生むことができてしまうからです。

タックスシナジーも基本的には、ルールを充足していれば実現できるシナジー効果ですが、「節税策」の内容によっては税務否認を受けてしまうリスクがあります。

M&Aで汎用的に使える比較的安全な節税策は、「【図解】株式売却M&Aで個人売主が使える3つの税金対策」で紹介している3つだけです(これらも使い方を誤ると危険です)。それ以外の節税策を提案された際は、セカンドオピニオンを取るなど自衛措置をおすすめします。

やや実現しやすいシナジー効果

事業コストシナジーは、仕入先など外部との交渉が入るため確実ではありませんが、やや実現しやすいシナジー効果になります。

相当な努力が必要なシナジー効果

かなり難しいのが、収益シナジーを実現させることです。

収益シナジーを確実に取りにいきたいなら、M&A公表直後に「事業統合本部」を発足し、経営トップがM&Aで実現すべき収益シナジーとその目的を語り、全社一丸となって組織的にシナジー実現に邁進する必要があります。

それでも、商売とは思い通りにいかないもので、想定外のことが連発します。柔軟に軌道修正しながら、何年かけてでも実現させていくという覚悟が必要です。

コントロール困難なシナジー効果

信用力シナジーは、不特定多数の人がぼんやり持っている観念に訴えるものですので、この効果や実現時期をコントロールすることは困難です。

しかし、中小企業M&Aでは特に大きな効果が出ることのあるシナジー効果ですので、決して軽視できない悩ましさもあります。

ディスシナジーに注意しながら、少しでもプラスに働く組織体制を作っていくことが重要です。

シナジー効果とM&A価格

このようなシナジー効果は、買い手にとってM&Aの価値を引き上げる効果を持っています。では、この価値上昇効果はどのようにM&A価格(対象会社の株価)に織り込まれていくのでしょうか。これは売り手オーナーにとって他人事ではない問題ですので、その仕組みを確認しておきましょう。

シナジー効果はM&A価格に反映されない???

シナジー効果は、M&A後に買い手企業と対象会社の努力で実現するものです。売り手オーナーはせいぜい部分的に手伝うぐらいですので、本来シナジー効果を受け取る必然性はありません。

そのため、公認会計士など第三者機関に「理論上適正な企業価値評価」を依頼すると、シナジー効果抜きの評価値が出てきます。

しかし、だからといって買い手がシナジー抜きの株式価値(理論上適正な評価額)を入札してしまうと、他の買い手候補に案件を奪われることは目に見えています。

したがって、本来誰がシナジー効果を享受すべきか?なんて机上の空論であって、実際にはその一部がM&A価格に上乗せされ、売り手に還元されることになります

この点も、「理論上適正な企業価値評価」が値決めに役に立たない理由です。

M&A価格は買い手の主観で決まる

もちろん、だからといってシナジー効果のすべてがM&A価格に反映されるわけではありません。それでは買い手が一方的に損をするだけです。売り手に還元されるのはそのうちの一部だけです。

では、その一部とはどの程度でしょうか。どの程度が売り手に還元され、どの程度が買い手が確保するシナジー効果でしょうか。

結局、そんな基準は存在しません。M&A価格は買い手の主観で決まるため、どの程度シナジー効果を分け与えるかも、同じく主観で決まります

ただ、競争入札である以上、買い手も「最低限このぐらいは出さなければ勝てない」という意識はあります。その線引きは、シナジー効果の実現可能性で判断されることが多いです。

シナジーの受け取り手の線引き=シナジーの実現可能性

これはどういうことかというと、確実性の高いシナジー効果はM&A価格に反映させ、難易度の高いシナジー効果は全面的に売り手が享受するという線引きの方法です。

比較的実現が簡単なシナジー(共通化コストシナジー、財務シナジー、税金シナジー)は、特に大きな努力なくある程度の成果が見込めますので、これは売り手に還元します。これにより、入札でライバルに負けない金額水準を確保します。

一方、実現が大変、不確実な収益シナジーや信用力シナジーはM&Aのボーナスのようなものと考えます。実現ができればしっかり利益を確保できますし、残念ながら失敗しても大きな損失にはならないようにしておきます。

その中間である事業コストシナジーは、確実性が高いものなら織り込み、低いものなら織り込まないという対応がなされます。

シナジー効果と入札戦略

以上のように、シナジー効果は実現可能性の高いものからM&A価格に織り込まれていきますが、どの程度の実現可能性まで盛り込むかといった確率の見積りや、個々のシナジーがどの程度の経済効果を与えるかといった金額の見積りは、結局のところ買い手が主観的に判断します。

シナジー効果は入札額を決める重要な要素であることは間違いありませんが、シナジーをどう評価するかは、買い手経営者の胆力で決まるということです。

シナジー効果を入札額に織り込ませるための売り手の戦略

以上のことから、売り手がシナジー効果を入札額に織り込ませ、M&A価格を引き上げるための戦略が見えてきます。

すなわち、多くの買い手候補にシナジー効果の実現可能性が高いと理解させ、またその金額を確度高く見積らせることができれば、買い手はシナジー効果を入札価格に織り込んでくれます。そのようなシナジー効果は織り込んでおかないと、入札でライバルに差を付けられてしまうからです。

そこで、インフォメーションメモランダムには、買い手候補がシナジー効果を自信を持って見積れる情報を載せておきましょう。詳細で確度の高い情報を出せば出すほど、買い手は高値を出しやすくなります。

インフォメーションメモランダムについては、「誠実な入札を引き出すインフォメーションメモランダムの項目と内容」をご覧ください。

ただし、インフォメーションメモランダムの記載を無理によく見せようとしても無駄です。入札後にデューデリジェンスが待っていますので、そこで買い手主導で価格が修正されてしまいます。正しい情報を出さなければ、競争入札に意味はありません。

売り手がM&A価格を引き上げる戦略的テクニック全般について、「会社のM&A価格を最大化する売り手の10のテクニック」にまとめていますので、併せてご覧ください。

おわりに

今回は、シナジー効果についての詳細な解説と、これがM&A価格にどのように反映されるのか、うまく反映させるための売り手のテクニックについてご紹介しました。

シナジー効果はM&Aの華ですが、口で言うほど簡単なものではありません。買い手は過度に期待して高値づかみすることは避けなければならない一方、過小評価して入札を逃さないようにしましょう。

一方の売り手は、上記で紹介したように、インフォメーションメモランダムを利用して買い手候補に正しく情報を伝え、彼らがうまく入札価格に反映してくれるよう立ち回りましょう。

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