会社合併成功ノウハウ

事業承継対策?合併で変わる相続税と落し穴

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組織再編の仕事をしていると、「銀行から相続税対策として組織再編を勧められたけど、本当に得なの?」というご相談をよく受けます。多くの金融機関で、融資と手数料をセットにした相続税対策の組織再編スキームを奨励していたりするのですが、銀行マンや(銀行と提携している)税理士の説明に胡散臭さを感じる人も少なくないようです。

確かに、合併により相続税が大きく減少するケースは少なからずあります。しかし、弊社では多くの事例を見聞した結果、「相続税対策だけを目的とした組織再編は高確率で失敗する」と考えています。

以下では、合併によって相続税が変化する仕組みと注意すべき落し穴についてご説明しましょう。

合併によって相続税が変化する理由

相続税は、故人が親族などに相続・遺贈する財産の価値に応じて金額が変わります。つまり、相続される財産の価値が大きいほど、多額の相続税が課されます。

相続される財産には、現金や土地建物、そして株式などがあります。その際の株式の評価は「財産評価基本通達」というルールに乗っ取って評価されます。

相続税の株式評価ルール

この株式評価ルールは、以下の2ステップにより計算します。

  1. 会社規模(5段階+例外2パターン)に応じて分類する
  2. 上記分類ごとに計算式が決められており、それに基づいて株価を計算する

株式の相続税評価額の計算方法

実際は、上記に加えて相続人の株主としての地位(同族株主かなど)も影響しますが、グループ再編で問題になることは少ないため省略します。

このような計算ルールがあるため、合併などがあると以下の理由で計算結果が変化します。

合併で相続税が変化する理由①:会社規模分類の変更

相続税の株式評価ルールでは、まず会社規模に応じて会社を分類し、それぞれの分類で定められた計算式に沿って株式を評価していきます。

会社分類は売上高や従業者数によって分けられており、合併によって複数の会社が合算された場合、今までとは異なる会社分類になることがあります。

これにより、適用される計算式が変更され、計算結果が大きく変わることがあります

合併で会社分類変更により相続税が変化する例

合併で相続税が変化する理由②:財務内容や損益の相殺

会社規模に応じて計算式が決まったら、定められた計算式に基づいて株価を計算します。その際、会社の「時価純資産」「課税所得」「配当額」が計算要素となります。

株価はゼロ円未満にはならない

例として、以下のように純資産100百万円のA社と、▲20百万円のB社があったとしましょう。説明を簡潔にするために純資産=株価総額とすると、A社の株式の総額は100百万円です。一方、B社は▲20百万円・・・ではなく、ゼロ円になります。株式評価額はゼロ円未満にはならないからです。

したがって、相続財産としての株式の価値は100百万円になります。

合併により相殺で相続税が下がる例2

合併することで相殺できる

一方、合併し、貸借対照表が単純に合算されたとすると、新しい会社の純資産は80百万円になります。先ほど同様そのまま株価だとすると、相続財産としての株式の価値は80百万円であり、20百万円も相続財産が減少しました

合併により相殺計算で相続税が下がる例3

上記のように、利益や純資産が合算・相殺されることによって、相続税が減少することがあります

相続税対策としての合併の落し穴

上記のように、確かに合併によって相続税が減少する可能性は十分あります。これを合併検討のとっかかりにすることは反対しません。ただし、相続税だけを気にしていると、思わぬ落し穴が待っているかもしれません

落し穴①:事業はオーナーの私物ではない!

会社の持ち主は株主です。これは間違いありません。しかし、それは会社の持っている財産の話であって、会社を回している事業はオーナーのものでしょうか。

事業は役員・従業員が情熱を注いで支えています(オーナー社長ほどではないかもしれませんが)。彼らのモチベーションなしには事業を維持することは容易ではないはずです。

合併に限らず、組織再編が現場に与える影響は少なくありません。急に面倒な仕事が降ってきたり、思わぬ業務が追加されたり、大きな借金を管理することになったら、あまりいい気分ではありません。
会社の事業を発展させるためであれば「文句言わずにやれ!」といってもいいと思いますが、オーナーの個人的な財産維持としか思えない場合はどうでしょうか。少なからずモチベーションに悪影響を与えるリスクがあります。

節税ができても、事業がおかしくなってしまっては本末転倒です。目先の税額だけでなく、本当の利益とは何かを考え、悪影響が及ばないかを慎重に判断していただきたいと思います。

落し穴②:トータルコストにも注意

合併はタダではできません。行政コスト、専門家コストもかかりますし、従業員給与の見直しも必要かもしれません。銀行の融資を受ける場合は、その返済と利息がコストになります。

この「返済」は決算書上で「費用」ではないため、コストとして意識しないかもしれません。しかし、組織再編の概要全体を見たらコストとしか言いようがない場合や、背負わされる会社にとってはコストでしかない場合もあります。キャッシュフローの本質は何かを冷静に見定めましょう。

合併のコストについては、「必見!会社合併の成功率を下げずに費用を安くする節約法」も併せてご覧ください。

落し穴③:税務否認リスクもあり

さらに非常に重要なことですが、税金対策が主目的と思われる組織再編は、税務署長の判断でなかったことにでき、本来あるべき税額に修正させることができますつまり形だけ整えて合併しても、それが節税を意識しすぎている場合、節税どころか多額の加算税を課される羽目になりかねません

「ちゃんとした銀行が薦めてるんだから大丈夫でしょ」と思うかもしれませんが、実際に銀行が持ってきた節税手法で税務否認を受けるケースは近年増えています。結局は自己責任であって、強引な節税ほど危険性は高まります。

とはいえ相続税は無視できない!

以上のように、相続税対策のみを目的として合併をすることは非常に問題があると考えます。しかしながら、相続税は会社の将来の株主構成にも影響を与える重大な税金であり、まったく無視することはできません。合併を検討する際の重要な検討事項のひとつであることは間違いありません。

特に、合併によって相続税が減少することもあれば、大きく増加することもあります。相続税を考慮せずに合併した結果、とんでもない税金を払う羽目になったり、大株主から訴えられたというケースも耳にします。

合併を検討する際には、しっかりと事前の調査検討を行い、事業の発展性、税を含めたトータルコスト、従業員のモチベーションなどとともに、株主に及ぼす影響もしっかりと検討しましょう。

弊社では、提携の専門税理士とともに合併のメリット・デメリットを総合的に事前調査するデューディリジェンスを承っております。特に金融機関から提案された組織再編計画のセカンドオピニオンのご依頼が増えております。合併など組織再編をご検討の際は、ぜひご相談ください。

デューデリジェンスについては「合併成功に不可欠なデューディリジェンスのポイント」をご参照ください。

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